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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「夏高メガトレンド “超買い場”の10銘柄」

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

 流れに従うのが相場の鉄則。しかし実際のところ、相場に潮流が生じるのは1年のうちでせいぜい数ヵ月です。上げ潮となった時には、個別株投資においても強く踏み込むことは戦略として必要ですが、年間を通じて考えればそのタームは思った以上に短いといえます。また、全体相場が引き潮に転じている時にマーケットに資金を寝かしておくのは得策とは言えず、本来であれば上値が期待できるような銘柄であっても沖に流されてしまう(キャピタルロスを被る)ようなケースも出てきます。

●潮の流れと波の上下動の違いを見極める

 相場ではこのどちらにも当てはまらないボックス圏の往来が多くの時間帯を占めています。株価が変動をみせてもそれは潮の流れではなく「波」。上下どちらにも流れが形成されていない水面(みずも)を揺らしているような状況が、むしろ相場の日常といえます。その場合、波が引いたときに仕込み、膨らんだところで売るというコンセプトが本筋となります。

 この波間で漂う時間帯においては“利食い千人力”が基本。これはと見込んだ長期投資対象の銘柄は別として、機動的スタンスで短期投資を主軸とした売買が求められることは、繰り返し申し上げてきた通りです。

 例えば四半期・通期を問わず決算発表前にキャッシュポジションを高めておくことは、実践的な知恵といえます。決算が良さそうだからといって保有株を持続、もしくは新規で先回り買いしても結果的に裏切られるケースは意外に少なくありません。そうした銘柄は同じような考えで保有する投資家が必ずいるものです。蓋を開けてみて予想外の悪決算であれば狼狽売りプラス売り仕掛けで急落となり、良くてもコンセンサスに届かなければやはり売りの洗礼を浴びる、というのでは割に合いません。決算先取りの買いというのは、直前であればあるほど期待値の低い投資手法といえます。それよりは決算通過後の動きをよく見極めてから買い出動するほうが、遥かに成功確率は高いのです。

●相場の確変モードに乗るタイミングを意識

 投資対象に置く銘柄は上場廃止というような特別なケースを除いて常にマーケットに存在しています。どんな銘柄も一期一会ということはあり得ないわけで、強い銘柄については追い続け、何回もインとアウトを繰り返せば、リスクを限定しながら中長期の上値追いトレンドを満喫することも可能となります。

 ただし常に利益確定を急げばいいというものではなく、潮流が発生している時は相場の“確変モード”に乗るという切り替えも投資家には必要な感覚です。下値を模索していた相場が底を確認して反騰局面に入った時、あるいはこれまで長きにわたってボックス圏を往来していた相場が居どころを変える瞬間など、攻めの姿勢を貫いてよい時があります。

 その意味で今回、日経平均株価のボックス上限だった2万3000円ラインを明確にブレークしてくれば、これは見た目以上に大きな意味を持ちます。2万2000円台後半から2万3000円のゾーンは昨年11月から年末にかけてのもみ合い圏でもあり、滞留出来高も多く、言い換えればその水準で“ヤレヤレ売り”を出したいというニーズが浸み込んだ価格帯です。このゾーンからの離脱が強気相場への分水嶺を越える、ということであると考えています。

●小型株に有利な時間帯へと変わっていく

 現時点では北朝鮮に絡む不透明感などを口実に、アルゴリズム売買による先物への揺さぶりが利いて完全な強気転換に待ったが入った格好となっています。フレンドリーなドル買い・円売りが続いた後だけに、円高と逆連動しやすくなっていることも今の株式市場にとっては弱みです。ただし、急な調整であればむしろ一時的な調整に終わるケースも考えられます。ちなみに前週まで日経平均は、週末比較で前の週の終値を上回る状況が8週続いており、買い疲れ感は否めず、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)も前日時点で124%台、日経225ベースでは138%台と過熱領域にあることを示唆していました。

 したがって目先的には調整があって不思議はありません。問題はその後の動きであり、インターバルを置かず切り返してくるようであれば、これは波の上下動ではなく、上げ潮が発生している証左となります。6月は2万3000円ラインより上の水準で株価が安定し、相場は次のステージへの移行を意識する段階に入るとみています。2万3000円から2万3000円台後半にかけては需給的に売り圧力は弱いゾーンです。1月23日につけた2万4124円(終値ベース)の高値奪回は意外に早い時期に訪れるかもしれません。

 また、見逃してならないのは中小型株の動向です。主力大型株が買われる一方で、新興市場は上値が重い状況が続き、騰落レシオで比較してもマザーズ市場はやっと100%台に乗せてきたところで、ジャスダック市場もスタンダードが108%、グロースは94%と出遅れている状況です。リターンリバーサルの原理でいけば今は中小型株優位の構図にあるといってよく、これを肌で感じている投資家も少なくないでしょう。新興市場では、銘柄にもよりますが、ここから売り方の買い戻しが加速するケースも考えられます。

 ここは、夏高に向け強力な上昇波を形成する材料株に照準を合わせたいところです。

●ブロックチェーン関連“百花繚乱”相場に乗る

 1ヵ月前の当コーナー4月25日配信「AI・ブロックチェーン関連株 次の狙い筋」で取り上げましたが、ブロックチェーン関連に位置づけられる銘柄がその後次から次へと動意づく形となっています。クロスキャット <2307> [JQ]とアイエックス・ナレッジ <9753> [JQ]はいずれも当コーナーと相性の良い銘柄ですが、今回も先陣を切るように鮮烈な上げ足を披露、クロスキャットについては5月15日にアップした株探トップ特集「材料株夏の陣! 燃え上がる株高トレンド『究極の10選』」でも紹介し、そこから5割近い上昇をみせる好パフォーマンスを演じました。直近ではモバイルファクトリー <3912> などもブロックチェーン事業への参入を発表し人気化しており、テーマ性の高さを印象づけています。

【ホットリンクはブロックチェーン関連で上昇本番】

 そのなか、ブロックチェーン関連 として新たに注目しておきたいのがホットリンク <3680> [東証M]です。マシーンラーニングやディープラーニングなどの技術を活用したビッグデータ解析ツールを提供、人工知能(AI)関連の草分け的な銘柄であるとともに、ブロックチェーン推進協会の発起メンバーとして参画しています。なお、同協会を主宰するインフォテリア <3853> などの話を聞くと、ブロックチェーン分野の普及に一段と注力姿勢を強めていることがしっかりと伝わってきます。既に現実買いの段階といえ、これが今の株式市場で強烈な物色人気を呼んでいる底流にあると感じられるのです。

【IoT社会の安全を担うテリロジーを再評価へ】

 IoT時代の本格的な到来が小口の資金決済需要を飛躍的に拡大させるとの見方が強まり、それがブロックチェーン分野への取り組みを加速させることにもつながっています。また、IoTで必須となるのがサイバーセキュリティー 分野です。関連株として上値追いが有力視されるのが比較的低位の株価に位置するテリロジー <3356> [JQ]。セキュリティー関連製品やIPサーバーなど米新興メーカーの最新技術の取り扱いで優位性を持つ輸入販売商社です。標的型攻撃の対策ソリューションなどを手掛け、今後の活躍が期待されます。

【PCNETはアップガード関連としてマーク】

 同じくセキュリティー関連でマークしたいのがパシフィックネット <3021> [東証2]です。同社は中古パソコンの販売を行っていますが、PCIホールディングス <3918> と提携し、米国の政府機関で使用されている革新的なサイバーセキュリティー製品である「アップガード」の提供を2月から開始しています。チャート的にも5日・25日移動平均線のゴールデンクロス示現から浮上のタイミングにあります。

●AI・IoT時代の出世株候補を追いかける

【メンバーズはAI関連の雄、業績成長路線まい進】

 また、メンバーズ <2130> は企業サイトのデザイン制作やクリエーター派遣などネット支援ビジネスを手掛ける会社で、今年に入って取り上げたことがある銘柄ですが、改めて注目したい局面です。BOT機能を活用したマーケティング支援サービスなどを強化して事業領域を拡張しており、米シリコンバレーでAI、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)分野などのスタートアップ企業を支援するゴールデン・ホエールズ社と連携していることで、AI関連の一角として評価を高めています。業績も14年3月期以降、増収増益路線をひた走る高成長企業の典型、19年3月期は売上高、利益ともに前期比20%の伸びを見込んでいます。

【電子政府推進の一翼を担うITbook】

 さらに、IoT時代の流れを象徴するのが、安倍政権が積極的に取り組んでいる「電子政府 」です。その際に、官公庁向けで強みを持つITコンサルティング企業のITbook <3742> [東証M]は外せない銘柄。IT関連人材の派遣や企業のシステム開発ニーズを捉えており、19年3月期は売上高が前期比45%増の74億2900万円、営業利益が68%増の4億900万円と急拡大を見込んでいます。日足一目均衡表の雲上抜けで目先の押し目は買い場提供といえそうです。

●半導体関連に新たな息吹、上値の伸びしろ大きい

 調整モードからなかなか抜けきれない半導体関連株ですが、米国企業の業績動向を見る限りここから見直しが進む可能性があります。東京エレクトロン <8035> やSUMCO <3436> などのシンボルストックに先んじて、小回りの利く中小型株は既に再騰モードのスイッチが入っている銘柄が散見されます。

 前日(22日)の米国市場ではNYダウが180ドル近い下げをみせましたが、マイクロンテクノロジーの業績見通しの引き上げなどを背景にアプライドマテリアルズやインテルなどの半導体大手は上昇、フィラデルフィア半導体株指数も上昇し13週移動平均を上回ってきています。この流れは円安と相まって東京市場にも早晩反映されそうです。

【電子材料は好業績で10年ぶりの4ケタ大台乗せ】

 先駆する半導体関連の筆頭が日本電子材料 <6855> で、株価はリーマン・ショック前の2008年1月以来、10年4ヵ月ぶりの1000円台乗せ。半導体検査器具(プローブカード)の専業大手であり、データセンター需要の拡大を背景としたNAND型フラッシュメモリー向けで数量を伸ばしています。19年3月期は営業利益が前期比8割増の9億3000万円、最終利益段階で同2.8倍の8億7000万円と高変化が続く見通しです。

【和井田はウエハー研削盤などで需要取り込み続く】

 また、和井田製作所 <6158> [JQ]も切り返し途上にあり、1300円近辺のもみ合いは日足一目均衡表の雲を抜けたところでもあるだけに、買い場といえるでしょう。ナノ・ミクロン単位の技術に特化しており、メイドイン・ジャパンの象徴として昨年10月配信の当コーナーを皮切りに何度か取り上げてきた銘柄です。半導体関連素材を研削するウエハー平面研削盤が収益を牽引、中国スマートフォン向けなどを中心に今後も旺盛な需要取り込みが期待されます。

【セメダインも工業向けで業績拡大歩調を強める】

 半導体需要の拡大はビッグデータの普及やIoT関連など構造的な追い風要因もありますが、IT企業の好業績を背景とした世界的な工業製品需要も影響しています。そのなかセメダイン <4999> [東証2]は、スマートフォン向けなどを軸とする電機関連の接着剤が好調。自動車用も中国政府が7月1日から輸入乗用車に対する関税を25%から15%に引き下げることを発表しており、販売拡大効果が収益にフォローの風をもたらすことが予想されます。

●中国ダイナミズムとインバウンドで飛躍する穴株

 最後に中国のダイナミズムとそれに付随する訪日客需要をテーマに、意外性のある穴株を2銘柄ご紹介します。4月の訪日外国人客数は前年同月比12.5%増の290万700人と2ケタ伸長、単月での過去最高を記録すると同時に、4月25日時点で年ベースでは過去最速となる累計1000万人突破を果たしています。このうち国・地域別では中国が前年同月比29%増と最も高い伸び率で68万人を占め最多となっています。推定人口14億人超ともいわれる中国の懐はさすがに深く、越境ECも含めると、国内消費関連株の中にはこれまでのモノサシでは計れない恩恵を享受する銘柄が増えています。

【インバウンド関連でリリカラはここから大相場も】

 そこで注目したいのがリリカラ <9827> [JQ]。同社は自社開発中心のインテリア商品卸大手で、カーテンや壁紙、床材のほかオフィス家具なども手掛けています。近年は訪日客の急増でホテル開発需要が伸びており、6月施行の民泊新法も間接的な追い風に同社商品の需要拡大が期待できます。カーテンや壁紙は、多種多様な空間の演出に重要なアイテムであり、200円台前半という値ごろ感と合わせ、インバウンド関連の意外な変身株候補としてマークしておきたい銘柄といえます。PBRが会社解散価値の半値以下である0.4倍台にとどまっていることは、見直し買いの強力な根拠となりそうです。

【中国市場で業容拡大に動く川本産業も面白い存在】

 一方、ガーゼ、脱脂綿などの医療機関向け衛生材トップメーカーである川本産業 <3604> [東証2]も面白い存在です。オーラルケア商品は一般消費者向けが好調で業績に貢献しており、このほかベビー用品や医療用品をドラッグストアや通販などを活用し販路拡大に取り組んでいます。また、積極的なM&A戦略で中国企業を子会社化し、中国市場での販売拡大に注力。業態は地味ですが、業績回復色が顕著で18年3月期に2円復配を果たしています。19年3月期営業利益は連結ベースで前期比3.1倍の3億2000万円を予想、配当も前期実績に2円上乗せの4円を計画している点はポイントです。

(5月23日記、隔週水曜日掲載)

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