【特集】笹木和弘氏【日米中銀の会合控え思惑錯綜、年末年始の相場展望】(2) <相場観特集>
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
―金融政策を巡りFRBと日銀の一挙一動に市場の視線集中―
16日の東京株式市場は売り買い交錯のなか、日経平均株価は朝方高く始まった後は売りに押され気味となり、狭いレンジの中での上下動を繰り返した。今週は米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)、国内では日銀金融政策決定会合を控え、投資家サイドも積極的に売り買いのポジションを高めにくい時間帯にある。年末年始の東京市場と米国株市場の動向はどうなるのだろうか。第一生命経済研究所の桂畑氏とフィリップ証券の笹木氏にそれぞれの見解を聞いた。
●「米市場は調整局面入りも、FOMCが契機となる可能性」
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
トランプトレードを経て上昇基調を強めてきた米株式市場だが、17~18日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を契機に調整局面入りとなることも考えられる。
今月の消費者物価指数(CPI)や米卸売物価指数(PPI)を経て新年の利下げに対する期待は後退している。12月のFOMCでは0.25%の利下げが行われそうだが、新年は期待したほどの追加利下げは見込めないという警戒感が浮上することも予想される。13日に10年国債利回りが3ヵ月国債利回りを2022年10月以来はじめて上回ったことも潮目の変化を示唆するものだろう。
足もとでNYダウはナスダック指数に比べ軟調な状態にあるが、トランプ政権誕生後の貿易戦争による多国籍企業への影響が警戒されている面がありそうだ。また、新年には米政府債務の上限問題や米国債の格下げ懸念が再び浮上することも予想され、財政拡大は期待しにくい。米国市場は、株式の時価総額を名目GDPで割って算出する「バフェット指数」で割高な水準であり、S&P500種指数で上位7銘柄が占める比率も非常に高く、いびつな状態にある。ナスダック指数も新年以降は調整が予想される。
ただ、トランプ政権下で規制緩和が期待される人工知能(AI)や自動運転、フィンテックなどは貿易戦争による影響は少ない。これらに関係する比較的中小型の銘柄には投資妙味がありそうだ。
当面のNYダウのレンジは4万500~4万4500ドル、ナスダック指数は1万7500~2万1000前後を予想する。ともに調整局面を見込んでいる。米国の個別銘柄では、ビッグデータ解析テクノロジーで実績を持つパランティア・テクノロジーズ<PLTR>や、後払い決済サービス「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」関連のアファーム・ホールディングス<AFRM>など米決済大手ペイパル・ホールディングス<PYPL>に関係する「ペイパル・マフィア」銘柄に投資妙味があるとみている。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。
株探ニュース