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【特集】“ブロックチェーンゲーム”離陸前夜、「仮想通貨」が業界地図を変える <株探トップ特集>

「ブロックチェーンゲーム」の衝撃波が東京市場に及ぼうとしている。仮想通貨とゲーム、2つの世界はどう変わろうとしているのか――。

―相次ぐ参入宣言、イーサリアムで差益獲得可能に―

 株式市場で「ブロックチェーン」への注目度が高まっている。そのなかでも、いまホットな関心を集めているのが「ブロックチェーンゲーム」だ。海外では、すでにブロックチェーンを活用したゲームが登場し高い人気を呼ぶなど一大ムーブメントが起きようとしている。日本でも、複数の企業が「ブロックチェーンゲーム」への参入を表明しており、市場は本格離陸する前夜の状態にある。ゲーム業界を一変させる可能性も秘めるブロックチェーンゲームとは何か――。

●海外で「クリプトキティーズ」など大ヒットゲームが続々登場

 ビットコインなど 仮想通貨を支える根本技術として知られるブロックチェーンは、「データ改ざんが難しい」「低コストでのシステム構築が可能」などの特徴を持ち、市場の潜在的な成長性は図り知れない。そのブロックチェーンを活用する有力分野として「ゲーム」が一躍脚光を浴びている。

 昨年秋にカナダでリリースされた子猫育成ゲーム「クリプトキティーズ(CryptoKitties)は、ローンチ後1カ月程度で15万人の登録ユーザーを集め、1500万ドル(約16億6500万円)の取引が行われる大ヒットゲームとなった。同様に海外では、デジタルペット育成ゲーム「ビットペット」やモンスターを捕獲し戦わせる「イーサエモン」などブロックチェーンの人気ゲームが続々登場している。
 
 仮想通貨イーサリアムの規格のひとつ「ERC-721」が昨年誕生し、それとともにブロックチェーンゲームの世界が一気に開花したもようだ。では、ブロックチェーンゲームの魅力とは何か。従来のゲームは、ゲーム運営会社などによって管理されており、ユーザーがゲーム内のアイテムを購入しても、ゲームが無くなれば管理データも全て失う恐れがあった。しかし、ブロックチェーンを活用し非中央集権(Dapps)のシステムが構築されていれば、アイテムやキャラクターといったゲームアセットの所有権を失うことは無い。とりわけ仮想通貨「イーサリアム」でアイテムやキャラクターを購入しゲームに参加する。そのアイテムやキャラクターはユーザー同士の売買も可能となるため差益を稼ぐことも可能になるというわけだ。

●日本にも衝撃波到達間近、セレス「くりぷ豚(トン)」は近く登場!?

 このアイテムやキャラクターなどゲームアセットの所有権を確保し、売買益も狙えるというブロックチェーンゲームの衝撃波は、日本にも押し寄せようとしている。

 例えば、セレス <3696> はブロックチェーン関連企業の「グッドラックスリー」(福岡市)との共同で、国内初のスマートフォン向けブロックチェーンゲーム「くりぷ豚(トン)」を開発し今春にリリースすることを発表している。「くりぷ豚」は豚のキャラクターを売買、配合できるゲーム。イーサリアムを使い購入し、ユーザー間での売買が可能だ。

 ポイントサイトを運営し仮想通貨取引所の「ビットバンク」をグループ会社に持つ同社は「当社はトークンエコノミー市場の開拓を進めており、その一環としてブロックチェーンゲームにも取り組むことにした」(広報)という。

 また、ディー・エル・イー <3686> は、ブロックチェーンゲーム開発会社「double jump.tokyo」を子会社化しブロックチェーンゲームを今夏に公開することを予定している。同社はブロックチェーンゲームに参入することにより、「事業領域を拡大するとともに新しい世界を開拓する」(広報)ことを目的としている。ディー・エル・イーはブロックチェーン技術による分散型エンターテインメント・エコシステムを開発するシンガポールの「BlockPunk」社と資本業務提携。BlockPunkは年内に仮想通貨を活用した資金調達であるICO(イニシャル・コイン・オファリング)も計画している。

 同様に年初から、ブロックチェーンゲームの開発が報道されるなど注目を集めたモバイルファクトリー <3912> は、4月下旬にモバイル対応のブラウザ兼仮想通貨ウォレット「pochi ―ポチ―」を夏頃リリースする予定であることを発表。同時に、アプリケーションプフラットフォーム「uniqys ―ユニキス―」とユニキス上のゲームを開発することを明らかにした。

●ブロックチェーン活用の大きな一歩、E3などの発表にも注目

 ブロックチェーンゲームに関しては「これまで仮想通貨の売買など投機的な分野でしか利用されていなかったブロックチェーンが、一般市民の身近な場面で活用される状況が生まれたという点でその意義は大きい」(関係者)との見方がある。その一方で、イーサリアムを使い売買益が得られるという点に関して「ICOによる資金調達に規制がかけられたように、さまざまな状況を考慮したうえで法律上の課題をクリアしておくことは必要だろう」(関係者)との声もある。

 今後、大手ゲーム企業がブロックチェーンゲームにどんな姿勢をみせるかが関心を呼ぶが、「ブロックチェーンの技術者を確保することが難しい」(同)との声もあり、当面は様子見の可能性もある。そんななか、ゲーム関連情報を提供するAppBank <6177> [東証M]やGameWith <6552> [東証M]のような銘柄への追い風が期待される。また、SNS(ソーシャル・メディア・ネットワーキング)の運営とともにゲームを提供するミクシィ <2121> [東証M]やグリー <3632> 、LINE <3938> などのブロックチェーンゲームへの姿勢も注目される。

 この6月12日から14日にかけて米国で開催される世界最大級のゲームショー「E3」や、今年9月開催の東京ゲームショウでのブロックチェーンゲーム絡みの発表も関心を集めそうだ。いずれにせよ、ブロックチェーンゲームは、ゲーム業界の地図を一変させる潜在力を秘めており、その動向からは目が離せない。


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