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9702 アイ・エス・ビー

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アイエスビー Research Memo(2):費用計上のずれ込みなどにより、期初予想に対して利益上振れで着地


■業績の動向

1. 2017年12月期第2四半期決算の概要
アイ・エス・ビー<9702>の2017年12月期第2四半期決算は、売上高8,237百万円(前年同期比24.2%増)、営業利益385百万円(同123.5%増)、経常利益384百万円(同99.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益189百万円(同68.7%増)と大幅な増収増益で着地した。

期初予想との比較では、売上高は計画に対して1.9%未達だったものの、ほぼ予想の線での着地となった。一方利益は、営業利益が計画比48.1%増となるなど、各利益項目とも期初予想を上回った。この要因は大きく2つで、研究開発や製品開発の投資が第3四半期以降にずれ込んだことと、プロジェクトマネジメント強化によってソフト開発案件の収益性が改善したことが理由だ。

売上高が前年同期比24.2%増と大幅増収となったのは、2017年1月に子会社化したアートが新規連結されたことによる。アートの事業からなるセキュリティシステム事業の売上高は1,681百万円となった。情報サービス事業の売上高は前期比0.8%減とわずかながら減収となった。詳細は後述するが、需要分野別の「公共」や「携帯端末」が減収となったことが響いた。

一方、営業利益は全社ベースで前年同期比123.5%増の385百万円に達した。セキュリティシステム事業からの利益が154百万円加わったほか、情報サービス事業の営業利益も同33.9%の増益となった。この増益は前述のようにプロジェクトマネジメントの強化に伴う収益性の改善によるものとみられる。

前述のように利益が上振れた要因の1つに、研究開発や製品開発の費用の先送りがあったが、これは主にセキュリティシステム事業で発生したと弊社では見ている。2017年12月期第2四半期のセキュリティシステム事業の営業利益率は9.2%となった。しかしながら、アートの2015年10月期の単体の営業利益率は4.2%だった。同社の傘下に入って多少の利益率改善があったとしても一気に9.2%の営業利益率となることは考えにくい。その差が費用先送りの影響ではないかと弊社では推測している。

弊社では、2017年12月期第2四半期決算について、費用先送りにより利益が実体よりも過大に出ている事情はあるにしても、全体的には良好な決算であったと考えている。売上高において既存事業の情報サービス事業が減収となった点は事前に想定されていたことでもあり懸念する必要はないと考えている。一方アートの売上高は順調に伸びており、シナジーが出始めていることをうかがわせる。また同社が取り組む新事業も、おおむね期待どおりに進捗しているもようだ。利益面では同社の大きな課題であったプロジェクト管理が着実に向上してきていることがうかがえる。全体的に今後への期待が高まる決算だったというのが弊社の評価だ。

2. 分野別動向
(1) 携帯端末
携帯端末の今第2四半期の売上高は前年同期比3.7%減の1,158百万円となった。主要顧客のスマートフォン開発は縮減基調が続いており、前年同期比では減収となった。一方、検査系業務やデバイス管理業務を受注したことで、前期下期との比較では増収に転じた。2017年12月期通期については期初予想の2,529百万円(前期比10.7%増)から下方修正し2,311百万円(同1.2%増)を予想している。スマートフォン関連は低迷が続くとみられることに加え、第2四半期に売上を伸ばした検査業務が下期には縮小することが見込まれることが下方修正の原因だ。デバイス管理業務はストック型モデルでもあり、下期も引き続き売上を伸ばす見通しだ。

(2) 組込み
今第2四半期の組込みの売上高は前年同期比3.2%増の1,766百万円となった。AV・家電系や車載系は好調だったが、医療系業務が縮小したため、前年同期比の伸び率が縮小したほか前期下期比較では減収となった。この分野における成長商品のQt(キュート)関連業務は、受注が順調に伸びている。2017年12月期通期は期初予想の3,758百万円(前期比4.3%増)から上方修正し、3,874百万円(同7.6%増)と予想している。Qt関連業務をきっかけとして新規顧客を獲得する事例が積み上がっており、主力分野の医療・車載系業務を初め、各需要先への売上拡大に向けて営業を強化する方針だ。

(3) モバイルインフラ
モバイルインフラの今第2四半期の売上高は前年同期比16.6%増の605百万円となった。新規基地局装置案件は好調だったが、研究開発案件は低迷が続いており、前期下期からは減収となった。2017年12月期通期は期初予想の1,200百万円(前期比5.0%増)から上方修正し、1,308百万円(同14.4%増)を予想している。5G活用の基地局開発案件が引き続き順調に拡大が見込まれることが上方修正の背景となっている。

(4) 公共
今第2四半期の公共の売上高は、前年同期比16.5%減の728百万円にとどまった。前期下期もピークアウトの兆候が出ていたが、今第2四半期はそこからさらに低下した。マイナンバー関連需要が一段落したことが主たる要因で、その点は織り込んではいたものの、大規模な法改正がなかったために情報化投資がさらに縮小し、落ち込み幅が想定よりも拡大した。
2017年12月期通期については期初予想の1,538百万円(前期比9.9%減)から見通しを引き下げ、1,453百万円(同14.9%減)を予想している。大規模な法改正が今通期を通してないため公共分野の情報化投資の低迷が続くとみているためだ。来期は法改正に伴う情報化投資の回復を期待している。

(5) 情報サービス
情報サービスの今第2四半期の売上高は、新規顧客獲得と長期開発案件の作業量増加により、低水準だった前期下期からは回復を示した。ただ、前年同期比では12.0%減の615百万円にとどまった。2017年12月期通期では、期初予想の1,297百万円(前期比7.2%増)から上方修正して1,445百万円(同19.4%増)を予想している。下期に新規顧客からの請負業務が期待されるのが直接の上方修正の理由だが、背景にはベトナムのIVCによるオフショア開発が競争優位性を発揮し、顧客からの評価を高めつつあることがある。

(6) 金融
今第2四半期の金融は前年同期比2.4%増の607百万円となった。証券業界において第2四半期から案件が動きだしたが人手不足で十分に需要を取り込めず伸び率が低くなった。前期下期からは減収となった。2017年12月通期では期初予想の1,287百万円(前期比5.5%減)から若干引き上げ1,327百万円(同2.6%減)を予想している。第2四半期同様、需要は動意付いているものの人手不足による需要取り込みが進まず、下期同士の比較では前年同期比減収となると予想している。第2四半期との比較では季節要因から増収となる見込みだ。

(7) フィールドサービス
今第2四半期のフィールドサービスの売上高は前年同期比0.7%増の849百万円となった。大型案件の減少で前期下期からは減収となった。2017年12月期通期については、期初予想の1,812百万円(前期比3.3%増)から下方修正し1,711百万円(同2.5%減)を予想している。フィールドサービスは全般には安定した事業ではあるが、今般、子会社の(株)エス・エム・シーとの間で業務の役割分担を見直すなかで、保守的な予想に変えた。

(8) 新事業
新事業の今第2四半期の売上高は1,909百万円と、前年同期の189百万円から約10倍に増加した。この大幅増収はアートの子会社化によるものだ。アートが手掛けるセキュリティシステム事業は、分野別分類では新事業に含まれるためだ。セキュリティシステム事業を除いた従来ベースの新事業の売上高は前年同期比約21%増の228百万円と推測され、着実に成長していることがうかがえる。2017年12月期通期については3,570百万円を予想している。期初予想の3,574百万円から微調整した形だ。2016年12月期通期は330百万円だった。下期の売上高は1,661百万円と上期比減収となるが、これはセキュリティシステム事業の季節性を考慮したためだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《TN》

 提供:フィスコ

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