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2017年08月30日19時30分

【特集】EV新世紀が「リチウム電池関連」沸騰を呼ぶ、“本命と穴株”最強の布陣 <株探トップ特集>

FDK <日足> 「株探」多機能チャートより

―株価変貌を堪能せよ、最注目テーマ「リチウムイオン電池関連株」実態変化を先取る―

 株式投資とは元来、夢を買うもの。そのためには企業のビジネスモデルの確かさを看破し、成長ステージをイメージすることが肝要。近未来の実態面の変化を先取りする形で株価変貌の過程を堪能できればそれに勝るものはない。その際、個別銘柄の一本釣りではなく、今相場を熱くしているテーマは何かを考えるのが勝利の近道となるケースが多い。強力な物色テーマからは有力な銘柄が次から次へと湧き出てくる。

●関連銘柄は軒並み集中人気に

 そして、今注目すべきはリチウムイオン電池関連とその周辺株だ。現在の株式市場で最も熱いテーマといっても過言ではない。いうまでもなく、その底流には世界的な環境規制の高まりを背景に加速する電気自動車(EV)シフトの動きがある。

 リチウムイオン電池は正極材、負極材、セパレーター、電解液の4部材で構成され、正極と負極をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う仕組みとなっている。軽量で高電圧・大容量という特性からスマートフォンやノートパソコンなどの情報関連機器に加え、ハイブリッド車やEVにも搭載、特に車載用に限れば向こう3~4年間で年率30%前後の高い伸びが見込まれている。

 株式市場では2次電池メーカーのジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> や古河電池 <6937> などをはじめ、セパレーターを手掛けるダブル・スコープ <6619> 、住友化学 <4005> 、旭化成 <3407> 、正極材を生産する田中化学研究所 <4080> [JQ]、戸田工業 <4100> 、新日本電工 <5563> 、住友金属鉱山 <5713> 、日本化学産業 <4094> [東証2]、三菱ケミカルホールディングス <4188> 、負極材では昭和電工 <4004> や日本カーボン <5302> 、さらに電解液でステラケミファ <4109> や関東電化工業 <4047> などが注目され、折に触れて株価を大きく動意させている。このうち性能を左右するのはリチウムイオン電池の心臓部を担う正極材であり、関連銘柄も多く、例えば田中化研や戸田工などが業績面で今一つでも物色人気が集中する背景ともなっている。

●時計の針は待ってはくれない「リチウム新時代」

 2018年を境に米国のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制が強化される方向にあるが、これを前に世界中でEVシフトへの動きが加速していることが、今のリチウム電池関連株人気の原動力だ。今秋から米国では実質的にハイブリッド車 はZEV認定から外れる。さらに来年の秋にはプラグ・イン・ハイブリッド車 も除外される見通しだ。時計の針は待ってはくれない。

 今年1月にテスラとパナソニック <6752> が共同で米ネバダ州に世界最大のリチウム電池工場「ギガファクトリー」を稼働させた。ここで生産するリチウム電池は年産ベースで、昨年全世界で作られた総量に匹敵するともいわれている。テスラ社が量産を開始する小型EVセダン「モデル3」に搭載される見通しだが、そのなかパナソニックはリチウム電池のセルを生産し、ギガファクトリーで電池パックに仕上げる計画にあり、テスラとの協業による業容拡大効果におのずとマーケットの注目が集まることになる。

●中国、そして欧州で加速するEVシフト

 世界最大の自動車市場である中国では、自動車の販売拡大と環境問題の深刻化が表裏一体となっており、環境問題をクリアするために国家戦略としてEVの普及を推進している。中国政府は新エネ車(NEV=電気自動車、燃料電池車、プラグ・イン・ハイブリッド車の総称)を20年までに累積500万台生産することを目標に掲げる中期計画を公表しており、まさに本腰を入れてEVを後押しする構えだ。現在、現地ではリチウム電池生産設備の建設ラッシュが続いているが、これは来年からの環境規制強化に伴う需要急増への対応に他ならない。

 また、欧州でも風雲急を告げる状況にある。違法ソフトを使って排ガス不正を行っていた可能性のある自動車メーカーが、フォルクスワーゲンにとどまらず複数にのぼったことが、一段と脱ガソリン車の流れを強める背景ともなっている。

 スウェーデンのボルボは19年以降に発売する全車をEVもしくはハイブリッド車にする方針を発表しているほか、パリ協定の旗振り役を担うフランス政府もガソリンやディーゼル燃料で走る自動車の販売を40年までに全廃する計画を打ち出している。最近ではこれに追随する形で英国政府もフランス同様40年までにガソリン車の全廃を図っていく方針を発表した。

 このように世界が一斉にEV社会に向け舵を切り始めており、この動きが、動力源であるリチウム電池の需給に圧倒的なタイト感をもたらすことなる。2025年には世界ベースで大型リチウム電池市場は昨年比4.7倍の3兆円強に膨らむとの試算がある。

●100年ぶり成長市場の入り口に立つ

 SBI証券投資調査部のシニア・マーケットアドバイザー雨宮京子氏は「EVへの技術改革は市場が膨大であるだけに100年ぶりとなる大成長市場への入り口と考えている。そのなか、リチウム電池は動力源として最重要。電池素材で高いシェアを占める日本メーカーの活躍余地は大きく、当面は韓国、中国、台湾などの追随を許さないとみている。世界的にリチウム電池関連株が人気化傾向をたどるなか、本家本元の東京市場では長いタームで物色対象となるだろう」という見方を示す。

 関連株は波状的な資金流入が続いている。現在の中小型材料株相場は、ボラティリティは高いものの資金の回転も速い。したがって日々の売買では取引時間中に高値をつけて大引けにかけてしぼむ、いわゆる上ヒゲ銘柄のオンパレードだ。しかし、それで流れが止まらないのが大きな特長だ。下値切り上げトレンドをしっかりと継続してやがて上ヒゲを終値ベースで抜いていく。寄せては返す波のように買いが入り、そのうちに潮が満ちて水位が上がってくる“恐るべき日替わり相場”が繰り広げられている。

 そのなか、リチウム電池関連株の騰勢は続く。ガソリン車が、いずれはすべてEVに取って替わるという分かりやすい市場拡大シナリオが世界規模で進んでいる現実。これが関連株を広範囲に押し上げる原動力となっている。

●トヨタの動きがカギを握ることに

 松井証券のシニアマーケットアナリスト窪田朋一郎氏は、今のリチウム電池関連株の人気について「機関投資家がこのテーマで本気で買いに行く銘柄となればパナソニックということになる。その他関連銘柄の裾野は広いが、一連の中小型株は個人投資家の土俵となっている感が強い」と指摘しながらも、こう続ける。「中小型株ファンドの買いがベースになっているからこそ、それに追随する個人の買いが誘発されている面もあろう。もし、トヨタ自動車 <7203> が環境対応車として、今のようなハイブリッド車や燃料電池車を含めた全方位型からEVへのシフトを強めてくれば、関連銘柄も次の上昇ステージに向かう契機となり得る」(窪田氏)。トヨタにとってはガソリン車への未練があるわけだが、EV重視となれば世界は変わる。窪田氏の見解は正鵠を射ている可能性が高い。

●高度紙、富士通コンポが株価大変身途上に

 では、個別銘柄に改めてスポットを当ててみよう。前述したGSユアサなどをはじめとする常連組の銘柄群のほかには、8月に入り上昇を一気に加速させたニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]がある。株高は好業績が土台となっているが、もちろんそれだけではない。同社はコンデンサー用のセパレーターを生産するほか、EV向け2次電池用セパレーターを手掛けていることが、投機資金流入の拠り所となっている。11年7月に2800円、14年12月に2627円、そして今年17年に2400円台まで買われており、3年周期の大相場が一段の株高思惑を醸成している。

 また、富士通コンポーネント <6719> [東証2]の上昇波動も強烈だ。富士通 <6702> の傘下で、IoT分野に経営資源を集めるグループ戦略における中核企業の一角として人気が加速した。しかし、同社は隠れEV関連としての側面で買われている部分がある。リレーやタッチパネルを手掛けるが、EVと住宅の間で電気をやり取りし家庭用電気として融通する「ビークル・トゥー・ホーム(V2H)」では電気回路を制御する装置であるリレーが必要不可欠。今後、EVの普及が本格化すれば必ず同社の存在が注目されることになる。

 安永 <7271> はハイブリッド車向けに強みを有するエンジン部品メーカーだが、リチウム電池の寿命を大幅に向上させる技術開発が伝わったことで一躍脚光を浴びた。また、オハラ <5218> はリチウム電池の電解質やセパレーターなどに活用が見込まれるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを手掛けていることが、材料視されている。そのほかIMV <7760> [JQ]はリチウム電池の製造プロセスにおいて、電池の温度・振動複合環境で充放電の機能性を確認する受託試験を手掛けており、8月下旬に大きく株価水準を切り上げてきた。

●陽線連打のセ硝子、ノリタケ、西華産業も注目

 ここ静かに底値から離脱の動きを強めている銘柄にセントラル硝子 <4044> がある。7月末に低調な第1四半期の決算発表を受けて株価は大きく下放れる格好となったが、二段下げをみせ8月14日に年初来安値をつけたところがダメ押しとなった。15日以降の陽線の多さは継続的な資金が入っていることを暗示する。同社はリチウム電池向け電解液を手掛けており、欧州で販売会社を設立し需要取り込みを図る。

 このほかノリタケカンパニーリミテド <5331> も今年5月以降株価の居どころを大きく変えている。同社の第1四半期はエンジニアリング部門でリチウム電池向け乾燥炉や焼成炉が好調で収益に貢献、経常利益は前年同期比57%増の伸びをみせた。三菱系の機械商社である西華産業 <8061> は産業機械部門でリチウム電池用関連設備を手掛け、前期は同設備の輸出が好調で業績に寄与したが、今期以降も成長の一翼を担うことになりそうだ。

●ここから注目のよりすぐり3銘柄は…

 さらに、株価面で上値の伸びしろが相対的に大きいと思われるのが以下の3銘柄である。

 まず、富士通グループの“電池担当”であるFDK <6955> [東証2]に要注目。親会社の富士通が発行済み株数の7割以上を握っており、この点は先駆して値を飛ばしている富士通コンポと共通している。産業用ニッケル水素電池が主力ながら、リチウムイオン電池の開発に積極的。富士通研究所と共同で高電圧・大容量の全固体リチウム電池の開発に経営資源を注いでおり、150円台の株価は値ごろ感が漂う。

 SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ <9478> [JQ]も株価200円台で低位株ならではの魅力を内包している。同社は情報技術書の出版や人材派遣、ネットカフェなど多岐にわたる事業展開が特長だが、リチウム電池関連としての認識はマーケットに浸透していない。同社は米国の電池関連技術ベンチャーでリチウム電池大容量化技術を持つゼプター社に出資している。ゼプター上場接近の思惑もあり、SE H&Iの人気化素地が開花する可能性がある。

 さらにホソカワミクロン <6277> は粉体製造装置を手掛け、高技術力と商品競争力に定評がある。ナノレベルの高度な粉砕技術が同社の真骨頂であり、リチウム電池などで使うネオジム、鉄、ボロンなどの磁性材料をジェットミルなどにより粉砕し製品化する。株価は4700円台半ばから出直り局面にあるが、7月24日に付けた年初来高値5460円は次の上昇ステージで単なる通過点となる可能性が高い。

●マグネシウム電池関連も青天井相場

 最後に、ここまで「リチウムイオン電池」に絞って銘柄を紹介してきたが、車載用2次電池として有力候補は他にも存在する点は押さえておかなければならない。リチウムよりも調達しやすく安いコストで生産でき、小型化でも優位性がある「マグネシウム電池 」がリチウム電池関連相場の裏テーマとして注目されている。昨年、ホンダ <7267> がマグネシウム2次電池の実用化にメドをつけたとの観測が、物色人気を巻き起こしたが、関連銘柄はこの時の株価水準を軒並み上回る水準に買われている。

 関連銘柄として勢いをみせるのが藤倉ゴム工業 <5121> 。時価は14年12月以来2年9ヵ月ぶりの高値水準にあるが、株価指標面から割高感はない。このほか、日本金属 <5491> 、神島化学工業 <4026> [東証2]、日本バルカー工業 <7995> 、オリコン <4800> [JQ]などマグネシウム2次電池関連に位置づけられる銘柄が相次いで上値を伸ばしており、さらなる水準訂正高が期待される。

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