ムサシ Research Memo(3):国政選挙による収益拡大の構図は今後も継続が期待される
■衆院選の実施可能性とその収益インパクト
(2)収益構造と選挙システム機材市場の現状
ムサシ<7521>は選挙関連の機材・資材・サービスを総合的に提供するトップ企業であり、事業部門の中心的製品である投票用紙の読取分類機の市場では、シェア約80%と他を圧倒的するポジションにある。そのため、選挙関連事業を担う「選挙システム機材」部門の売上高は、国政選挙の有無で大きく変動する傾向がある。
同社は選挙関連の機材ではグループ内に製造子会社を擁し、メーカーとして機能しているため、選挙システム機材部門の収益性は、他の事業部門に比較して高い。したがって、下のグラフに明らかなように、売上高の変動は利益にも明確に反映されている。同社の他の事業部門は比較的安定的な業績推移を示すことが多いため、「選挙システム機材」部門の収益変動は、そのまま同社全体の収益変動(特に利益変動)につながる傾向にある。
国政選挙の有無と同社の業績変動の連動性は、今後も続くと弊社では考えている。そう考える最大の理由は、同社の業績を最も大きく動かす読取分類機の市場が、まだ成長途上にあるためだ。
同社は2001年に第1世代の読取分類機を発売し、2010年からは第2世代機に移行した。これまでのところ、第1世代機と第2世代機を合わせ累計で約3,000台を販売してきた。日本の市町村の数は1,718(2016年10月10日現在)で、開票所数は2014年12月の衆院選では1,978ヶ所設置された。1ヶ所当たり複数台の需要があると考えられるため、3,000台という累積販売台数は潜在需要に対して全く届かないレベルだ。また読取分類機を導入済みの自治体数は約1,000自治体にとどまっている模様で、この点でも新規需要の余地は大きいと言える。
同社によれば、現状は、増設需要が新規需要を上回っているようだ。読取分類機を導入済みの自治体が、その効果の高さに増設を図るという状況だ。同社は未導入の自治体にも営業を強めており、増設需要と新規需要のダブルの需要に支えられ、国政選挙による収益拡大という構図は今後も継続すると期待される。
さらに今後は徐々に更新需要も加わってくるだろう。第1世代機は依然として現役で稼働しており、更新需要はまだほとんど出ていないもようだ。しかしいずれは退役するため、更新需要が3本目の需要の柱として加わり、同社の収益基盤は拡大することになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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提供:フィスコ