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【特集】海外“200兆円”市場も視野 老朽化「インフラ」対策、物色テーマ浮上へ <株探トップ特集>

ALSOK <日足> 「株探」多機能チャートより

―建設後50年超のインフラ割合急増でモニタリング企業の商機拡大―

 高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化問題が深刻な状況となっている。2012年12月に中央自動車道・笹子トンネルで天井板崩落事故が発生して以降、老朽化問題が喫緊の課題として大きくクローズアップされているが、先月には福岡市で道路の大規模な陥没事故が起こった。これらをきっかけにインフラモニタリングの重要性が認識されつつあり、株式市場でも関心が高まっている。

●建設後50年超となるインフラの割合が急増

 インフラの老朽化問題は早くから指摘されてきたが、自治体の厳しい財政状況や技術職員不足などがネックとなり思うように進んでいないのが実情だ。国土交通省によれば、建設後50年以上経過したインフラの割合は、例えば全国に約70万ある道路橋では13年時点の約18%から23年には約43%に急増する見通し。その他のインフラ設備でも23年には、約1万本あるトンネルで約34%(13年時点は約20%)、約1万施設ある河川管理施設で約43%(同約25%)、約5000施設ある港湾岸壁で約32%(同約8%)に高まるという。あらゆるインフラを含めた維持管理・更新費は23年に約4兆3000億~5兆1000億円(13年は約3兆6000億円)に膨れ上がると試算され、一層の効率化が求められている。

●世界市場200兆円に向け関連企業を後押し

 そこで幅広い業種からの新規参入を促し、生産性向上を図ることを目的として11月28日に発足したのが、国交省が事務局を務める産官学連携の「インフラメンテナンス国民会議」だ。同会議はオープンイノベーション(企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること)の導入・推進を図るだけでなく、インフラメンテナンス産業を育成することで200兆円とされる海外市場をターゲットに新たなビジネス機会の創出につなげる狙いもある。

●ALSOKは「道路モニタリングサービス」の販売開始

 メンテナンスの費用を抑えるためには劣化状態をいち早く把握することが重要となるが、こうしたなかALSOK <2331> は今月1日から、道路の路面状態をモニタリングし、この情報から効率的な舗装修繕計画を策定する「道路モニタリングサービス」の販売を開始した。車両に測定機器となるスマートフォンを設置し、走行から得られる加速度情報を分析することでさまざまな検出を行い、路面の劣化箇所を安価で効率的にスクリーニングする技術を開発。「予防保全を行うことにより、長期における工事費の削減効果が期待できる。ある自治体で舗装修繕計画をシミュレートした結果、今後50年の工事費において約63%の削減につながる試算結果を得た」(広報部)という。また、NTTコムウェア(東京都港区)は11月30日にAI(人工知能)技術を活用した道路不具合検出システムを開発したと発表。今後、ALSOKと連携して一部自治体向けに実証実験を実施するとしている。

●富士通子会社と川崎地質は診断事業で提携

 富士通 <6702> 子会社の富士通交通・道路データサービス(FTRD)は11月28日、「インフラメンテナンス国民会議」のピッチイベントをきっかけとした技術連携などを相次いで公表。川崎地質 <4673> [JQ]と道路評価を効率化するサービスを共同で展開することで合意したほか、パイオニア <6773> グループのインクリメントPとはタイで舗装劣化状況把握技術の実証実験を開始することを決めた。FTRDでは「老朽化問題に民間の技術を結集して取り組むという国民会議の趣旨を考えれば、今後も企業間の連携が進んでいくのでは」との見方を示している。

●西松建と大日本コンは実証実験に乗り出す

 また直近では、西松建設 <1820> と大日本コンサルタント <9797> [東証2]が11月1日に、橋梁遠隔モニタリングシステムのプロトタイプを開発し実証実験に乗り出したと発表。島津製作所 <7701> は10月5日、超音波と光を用いて鋼構造物やコンクリートにおける隠れた欠陥を非破壊で検出・画像化する新技術を開発したことを明らかにしている。

●クラボウ、デンソー、トプコンなどにも注目

 このほかでは、コンクリート構造物のひび割れ検知ツールを運用するクラボウ <3106> 、マルチコプターを利用した橋梁点検システムの技術を持つ川田テクノロジーズ <3443> 、物体のひずみを測定する機器を手掛ける共和電業 <6853> 、インフラ点検用ドローンを開発済みのデンソー <6902> 、構造物診断用サーモグラフィーカメラの日本アビオニクス <6946> [東証2]、インフラ・建物モニタリング向けワイヤレスセンサーネットワークを支える太陽誘電 <6976> 、コンクリート劣化診断システムを実用化しているトプコン <7732> 、特殊車両で路面劣化調査を行うパスコ <9232> などにも注目したい。

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