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【特集】世紀のビッグウェーブ到来、歴史的「半導体バブル相場」始動へ <株探トップ特集>

東エレク <週足> 「株探」多機能チャートより

―広がる関連株物色の裾野、拡大するソフトバンクの存在感―

  半導体関連株に世紀のビッグウェーブが到来しそうだ。東芝 <6502> の今年2月を境とした大出直り相場が半導体関連の象徴となっているほか、それに歩調を合わせるように株価の居どころを変えた東京エレクトロン <8035> を筆頭とする、日立国際電気 <6756> 、アドバンテスト <6857> 、SCREENホールディングス <7735> 、東京精密 <7729> 、ディスコ <6146> など半導体製造装置関連株の上昇も市場の脚光を浴びた。その後は信越化学工業 <4063> やSUMCO <3436> などシリコンウエハーの大手ベンダーや、車載用マイコン首位のルネサスエレクトロニクス <6723> 、アナログ電源ICを展開するトレックス・セミコンダクター <6616> [東証2]、半導体素子を手掛けるサンケン電気 <6707> 、半導体向けマスク基板を手掛けるHOYA <7741> などが相次いで人気化、まさに半導体セクターの株価は繚乱の様相を呈している。

 このほかでは、半導体向け特殊ガスで関東電化工業 <4047> 、フッ素樹脂製品を手掛ける日本ピラー工業 <6490> 、マスク描画装置を製造するニューフレアテクノロジー <6256> [JQ]、半導体製造装置の有力子会社YACガーターを擁するワイエイシイ <6298> 、金型技術に強く樹脂封止成形装置で高シェアを持つアピックヤマダ <6300> [東証2]なども要注目の対象といえる。

●これまでとは違う半導体の構造的な需要拡大

 マーケット関係者の間でも構造的な半導体需要の拡大に着目する向きは少なくない。半導体製造装置関連の株価上昇が時間軸ではリードしたが、最近は物色の裾野が広がっている。これについて東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は、「(半導体関連株人気は)構造的な変化と捉えている。自動車もいまや電子部品の塊のようになっている。自動車を含め、あらゆるものがオンライン化されるIoTが当たり前のようになっていく過程では、そのあらゆる場面において半導体も組み込まれていくことになる。これまでの通常サイクルで半導体需要を考えると見誤ることになるだろう」と指摘している。株価も局地的な人気化にとどまることなく、関連銘柄も一段と広がりを見せていく可能性が高い。

 ビッグデータの普及を背景に、IT社会は既に概念の領域を超えて我々の日常風景と同化している。その象徴として「モノのインターネット化」いわゆるIoT時代が加速的に到来しつつあるといってよい。2020年に全世界ベースで500億台の機器がネットとつながり、世界を行き交うデータ総量は向こう数年間のうちに5~6倍水準に膨張するとも試算されている。これに対応するデータセンター増設などの設備投資や、日進月歩で高機能化が進展するスマートフォン向けに半導体は大容量化と高速化ニーズに応えていく必要に迫られている。

●3次元NANDの登場が既成概念を変えた

 ここで時代の要請に応えるかたちで革命的に登場したのが3次元NAND型メモリーであり、業界全体がにわかに色めき立っている。急速に膨張するデータ量に対応するために進められてきた半導体メモリーの微細化投資にもおのずと限界が意識されている。必要は発明の母といわれるが、そのなかで産み落とされたのが3次元NANDで、記憶素子が従来の平面ではなく立体方向に積層化された画期的なフラッシュメモリーを指す。

 3次元NANDは韓国のサムスンが先行したが、これに韓国のSKハイニックス、米インテル、東芝など3社が猛追する格好で現在は4極が競う状況にある。東芝は7月末に64層3次元NANDのサンプル出荷を世界に先駆してスタートさせ話題となったが、サムスンは来春にかけて2兆3000億円規模の巨額資金を投下して同分野を深耕する構えだ。近い将来に3次元NANDは100層レベルまで進化する余地があるといわれており、各陣営が開発でしのぎを削ることになる。

 また、金額ベースで世界の半導体市場の30%前後を占めるといわれる中国の動向も注目を集めており、国を挙げて投資を加速させる態勢にある。民間では現地大手メーカーである紫光集団がメモリーの巨大生産ライン建設を打ち出しているほか、中国政府も同分野に貪欲な姿勢をみせ、国内企業の育成にとどまらず、外資導入を誘導する方針にある。

●商機つかむ東京エレクの成長シナリオ

 半導体製造装置関連株の筆頭格で3次元NAND向けエッチング装置が好調に推移する東京エレクトロンでは、当編集部取材に対し次のように述べている。「(3次元NANDは)積層化に伴い電極を柱状に貫通させる必要性がある。この深掘り技術における優位性をシェア拡大につなげていく。積層化で大容量・高速化に対応する3次元NANDメモリーの出現は、これまでの微細化投資の流れを止めることにはならないが、今後さらに市場が拡大していく公算が大きい。当社では20年3月期に売上高9000億円、営業利益率25%(2250億円)を目指しているが、そのなかでエッチング装置全体の世界シェアを36%まで高める方針だ」(同社広報)。

 ちなみにエッチング装置の世界シェアは15年(暦年ベース)で19%程度だったというから、そこからほぼ倍増させる計画である。半導体製造装置関連の株価が足もとは総じて上昇一服局面にあるなかで、同社株の頑強ぶりが目立つのは、こうした成長シナリオが市場で認知されているゆえかもしれない。

 もちろん、同社だけでなく半導体製造装置関連は各社とも今の3次元NANDの流れを捉えるべく虎視眈々と商機を取り込むことを狙っているのはいうまでもない。日立国際電気は熱処理技術で高実績を誇り、サーマルプロセス装置(熱処理成膜装置)で一頭地を抜く商品シェアを掌握している。後工程で必須の半導体検査装置で高シェアを有するアドバンテストも引き合い旺盛な3次元NAND用テスターの需要囲い込みで今期以降業績を再び成長路線に乗せてくる可能性がある。ディスコは半導体切断装置の世界トップメーカーだが、3次元NANDに対応して切断装置もまた高付加価値製品への特需が発生している。

●半導体の未来を射抜くソフトバンク孫社長の“慧眼”

 もうひとつ、半導体関連のテーマ性を語るうえで外せない銘柄がある。それはソフトバンクグループ <9984> だ。直近では、同社の孫正義社長が現地時間6日午後にトランプ次期米大統領とトランプ・タワーで会談、米国のビジネスに500億ドル(日本円で約5兆7000億円)を投資し、5万人の新たな雇用を創出することで合意したことが巷間驚きをもって伝えられている。既に、同社に国内メガキャリア(大手通信会社)としての位置づけはそぐわない。M&A戦略を駆使した、世界的なコングロマリットとしての存在感を日増しに高めている。

 その同社が7月中旬に英国の半導体設計大手アーム・ホールディングスを買収することを発表し、市場の耳目を集めたのは記憶に新しい。日本円にして約3兆3000億円の超大型買収であり、日本企業による海外企業の買収としては過去最大規模。これも半導体業界の将来を見据えた孫社長の慧眼というべきか、買収決定後早々に世界半導体最大手のインテルが受託生産事業の拡大を目的にアームとの提携を発表するなど、早くもその片鱗をみせつけている。今後のソフトバンクの半導体分野での一挙手一投足はIoT人工知能(AI)への投資と並行して必然的にマーケットの熱視線が注がれることになろう。

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