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4183 三井化学

東証P
4,441円
前日比
-29
-0.65%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
16.9 1.02 3.15 4.12
時価総額 8,919億円
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決算発表予定日

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三井化学 Research Memo(5):海外展開を加速させる計画


■各事業セグメントの詳細

(3)フード&パッケージング事業

a)事業の全体像
フード&パッケージング事業はその名称と製品群別サブセグメントに違和感を持つ向きがあるかもしれない。それを解くカギはイソシアネート・チェーンだ。これは化学品の誘導品チェーンの1つだが、三井化学<4183>はここに世界レベルの強みを有している。イソシアネート・チェーンは、イソシアネートからポリウレタンという流れが基本だが、付加する物質を変えることで様々な性質を持った化学品を製品化している。具体的な製品としては、コーティング材、接着剤、シーラント材、エラストマーなどがある。同社はこれらを外販しており、販売先においては半導体や電子部品、建設用資材など様々な分野で、原料や生産材として幅広く利用されている。一方で、同社は高機能のポリオレフィン系合成樹脂を生産しており、それをフィルムやシートに加工する技術も高い。各種合成樹脂シートを同社の接着剤で貼り合わせて、強度やガスバリア性など様々な特性を有するフィルムを製造し、食品包装用などに向けて販売している。この包装用フィルムがセグメントの名称を表しているが、産業用途向けの材料も大きな構成比を占めているという点がポイントだ。また、農業化学品は農薬がその内容となっており、“食”の領域にあるため、このセグメントに含まれている。

以上のような事業構造を反映し、製品別内訳はコーティング機能材以下4つのサブセグメントに分かれている。このうち包装用フィルムと農業化学品はイメージしやすく、また、レトルト食品の容器などの形で目にすることができる。一方、コーティング機能材や産業用フィルム・シートなどは、生産工程で消費されたり、部品として内部に入り込んだりして一般消費者の目につきにくいものが多い。

売上高の地域別内訳は日本が約7割を占めている点が特徴的だ。これは同社の農薬が他社の例とは異なって3分の2が国内市場向けである点が大きな要因だ。しかし今後は、農薬の海外展開を加速させる計画であるほか、包装用フィルムやその材料についてアジア展開を進めていることもあり、日本の構成比は徐々に低下していくものとみられる。

b)事業の収益構造
フード&パッケージング事業の各製品は、農薬も含めてファインケミカル製品に属するものが多いため、製品と原料の双方で価格変動の影響は少ないと考えられる。したがって収益を左右するのは販売数量ということになる。

また、日本からの輸出が多いため、海外売上比率がセグメント全体の約3分の1とはいえ、為替の影響が大きい点には注意が必要だ。1円の変動で年間1~2億円とされている。農薬は今後海外市場の開拓を進める方針のため、為替影響は中期的にさらに大きくなる可能性がある。

c)中核製品の動向
1)農薬
農薬メーカーには2種類あり、元となる成分である原体を自社で製造するいわゆる原体メーカーと、原体を外部から購入し、最終製品に仕上げる製剤メーカーだ。同社は原体から製剤までを一貫して手掛けている。農薬の事業規模は年商約500億円となっており、製品ラインアップは豊富で、国内シェアは11%というポジショニングとなっている(いずれも2016年3月期)。売上高の3分の2が国内向けとなっているが、国内の農薬市場の成長率はわずか0.3%で、アジアの3.9%、世界の2.7%(いずれも2015年度~2020年度の年平均成長率)という将来見通しに照らしても、海外市場での事業拡大が1つの課題となっている。

海外展開については、ブラジルIharabrasの増資引き受け(2015年8月)、タイSotusの株式追加取得(2016年1月)、ベトナムCuulongの株式取得(2016年8月、出資比率20%)、インドで合弁企業Solinnos Agro Sciencesの設立(2016年9月)など、着実に地歩を固めている。

同社の特長・強みの一つは新開発中の原体を5種類有している点だ。売上高で500億円規模の企業としては異例と言え、同社の開発力の高さを垣間見ることができる。このうち、殺菌剤トルプロカルブ(原体名)がトップバッターとして2016年3月に3つの製剤として上市された。今後の予定は2019年以降に、殺虫剤(国内外、水稲・穀物・果樹等向け)と除草剤(国内中心・アジア、水稲等向け)の2原体が上市される見通しとなっている。この充実した次世代パイプラインをてこに、2023年3月期において売上高1,000億円、海外比率50%というのが現在の長期事業目標となっている。

2)包装用フィルム
包装用フィルムはレトルト食品に使われるのが最も典型的でイメージしやすいが、食品に限らず詰め替え用洗剤容器がプラスチックボトルからソフト容器に代わるなど、需要が拡大している状況だ。包装用フィルムは特性の異なる複数のフィルムを貼り合わせて製造するが、同社は、高機能シーラント材において国内及びアジアでNo.1のシェアを有している。

包装用フィルムにおいても成長は海外にある。国内市場が横ばいの見通しであるのに対して、アジア諸国では10%~15%の成長が見込まれている。同社はそれに対応して、高機能シーラントフィルムや接着剤、改質剤等の構成素材の生産拠点をアジア各地に展開し、高成長の恩恵を着実に取り込む計画だ。

3)産業用資材
前述のように同社の強みの1つとしてイソシアネート・チェーンがある。イソシアネート誘導品の具体的な製品は数多いが、同社はコーティング材(Coating)、接着剤(Adhesive)、シーラント材(Sealant)、エラストマー(合成ゴムの一種)(Elastomer)の4つの製品群について、頭文字から“CASE分野”とし、この領域の強化・拡大を目指している。

2016年3月にはメガネレンズ材料の主原料でもあるXDI(メタキシリレンジイソシアネート)について、5,000トン/年の大型設備の営業運転を開始した。また、2,000トン/年の新規特殊イソシアネートの設備を2017年3月期中に稼働させる計画だ。この製品については世界で同社が唯一の製造メーカーとなる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《TN》

 提供:フィスコ

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