【特集】【新年3大テーマ(2)】 外国人投資家の日本株“大規模買い”は続くか <株探トップ特集>
トヨタ <日足> 「株探」多機能チャートより
―日本市場はリフレ政策の恩恵享受、15兆円巨額買い越しの2013年再現も―
4日の大発会は大幅高でスタートした。この急上昇を演出したとみられるのが外国人投資家だ。外国人は16年前半には大量売り越しで注目を集めたが、秋口から様相は一変。11月の米大統領選をキッカケにドテン買いに転じた。市場からは「外国人は年前半に見放した日本株を急きょ、買い直している」との声も上っており、状況次第では年間で日本株を約15兆円買い越した13年の大攻勢の再現も予想される。
●「トランプラリー」で日本株に持たざるリスク浮上
17年相場は日経平均株価が、昨年末に比べ479円79銭高の1万9594円16銭の大幅高で始まった。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> など銀行株やトヨタ自動車 <7203> など自動車株が軒並み高となったが、市場には「外国人買いが相場を先導した」との観測が出ている。日経平均はトランプ氏の勝利が判明した昨年11月9日の安値から直近で2割強上昇。欧州株やアジア株など他の主要市場を凌駕する良好なパフォーマンスを上げている。日本アジア証券の清水三津雄ストラテジストは「海外有力ファンドなどが日本株に強気姿勢を示しているようだ」という。特に、グローバルでの運用を行うファンドには日本株に「持たざるリスク」が発生している様子だ。
●11月以降、姿勢一変で2兆円超の買い越し
外国人投資家の日本株への売買動向は昨年前半と秋以降では、まさに様変わりした。東証が発表する主体別売買動向では、外国人は日本株を16年1月から9月まで約6兆1870億円の大量の売り越しを記録した。外国人投資家は、アベノミクス相場の真っ只中の13年に約15兆1200億円を買い越したが、その買い越し分の多くを昨年前半に吐き出した格好だ。日銀がマイナス金利政策に踏み切るなか、デフレ懸念は払拭されずアベノミクスへの期待が後退し、日本株売りを強めたと見られる。
ただ、この外国人の売り姿勢は米大統領選を契機に一変する。外国人は11月第2週から12月第2週まで6週連続買い越しで約2兆2530億円を買った。16年年間ベースの外国人売買は、直近まででは3兆7000億円前後の売り越しだが、昨年11月以降だけをみると大量買いモードにある。
象徴的なのが、世界最大の資産運用会社、ブラックロックだ。同社は昨年3月に日本株の投資判断を「ニュートラル」に引き下げたが、この12月には「オーバーウエート」に引き上げたと伝えられている。同社は1年足らずの間に日本株を「中立」に引き下げた後、再度「強気」に戻した格好だ。
●ブラックロックなど有力投資家は「強気」転換
外国人投資家が日本株に強気に転じた理由のひとつには「主要国のなかで日本の政治が安定していること」が挙げられる。さらに、見逃せないことが「今後の日米金利差拡大に伴う円安進行が見込めること」だ。
米国はトランプ新政権のもと規制緩和と大型のインフラ投資を実施し、緩やかなインフレを意識するリフレ政策が打たれる方向にある。そんななか、日銀はイールドカーブ・コントロール政策を実施し長期金利をゼロ%前後に固定する方向にあり、日米の金利差は今後、一段と広がる見通しだ。また、日銀のETF(上場投信)買いと、日本企業の自社株買いで、日本株の下値余地は限定的とみられている。
昨年前半に外国人投資家は日本株を大量に売り越した分、日本株は保有されておらず「ここ5年間で過去最低水準にある」(アナリスト)との見方もあり、日本株の買い入れ余地は大きい。アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミストは「日本株は米国などに比べエネルギー関連セクターの比率が小さく、原油価格の変動に備えるヘッジ対象としてウエートを高める動きもあるようだ」という。
●建設株や銀行株などに買い攻勢継続も
実際、ブラックロックは12月以降、大林組 <1802> や鹿島 <1812> といった建設株のほか、三菱ケミカルホールディングス <4188> やりそなホールディングス <8308> などの買い増しや、新たな大株主への浮上が判明しており、日本株投資の姿勢を強める姿がうかがえる。
また、JPモルガンは、先月中旬に日本株に対して「強気」との見方を示した。リフレ関連株に強気継続するものの、短期過熱感から「来期高増益」、「低PER」、「高配当利回り」銘柄へのスイッチを推奨した。ただ、銀行や生保など「高金利感応度銘柄」や不動産など「リフレ関連銘柄」は長期的な買いの中核銘柄となるとみられる。外国人投資家は日本株の売買比率の7割を占め全体相場の行方を決める存在だが、17年は再度買い主体となり上昇相場を先導しそうだ。
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