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【特集】金は強材料出尽くしで調整警戒、非鉄は対ロ制裁の影響を注視 <GW特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

●イラン・イスラエルの報復合戦は落ち着くも残る懸念

 は4月、地政学的リスクの高まりを受けて上値を試し、ドル建て現物価格は史上最高値2430ドルをつけた後、イスラエルとのイランの衝突が回避されると利食い売りなどが出て上げ一服となった。

 イランはシリアの大使館が4月1日に空爆され、軍司令官など7人が死亡したことはイスラエルの攻撃と主張し、報復する方針を示した。イランは13日夜、イスラエルに対し、ドローンとミサイル合わせて300発余りを発射。99%が迎撃され、死者は出なかった。イスラエルは反撃する姿勢を示し、大規模な攻撃を策定したが、米国の説得で限定的な攻撃にとどめた。19日にイランの核施設周辺の防空システムを精密攻撃したが、イラン側はイスラエルの攻撃と証明できないとして報復を見送っている。ただ、イスラエルはイスラム組織ハマスせん滅のため、ラファ侵攻を再開する見通しである。イスラエルは民間人避難のためのテントを調達しているが、イランの代理組織との戦闘が続くと、中東情勢に対する懸念が残るとみられる。

●各国金利は利下げ期待が後退

 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が年内の利下げ見通しを示すなか、スイス中銀も3月21日に利下げを決定したことを受けて欧米の利下げ期待が高まった。ただ、3月の米雇用統計や米消費者物価指数(CPI)が事前予想を上回ると、米FRB議長は利下げ先送りを示唆。CMEのフェドウォッチでは、年初に米FRBの利下げ時期は3月と見込まれたが、インフレ高止まりと労働市場の堅調が示されると6月に先送りされ、更に米FRB議長の発言を受けて9月以降に後退した。年内の利下げも1回との見方が強まった。

 米議会でウクライナ支援が可決され、バイデン米大統領は4月24日、ウクライナなどへの約1000億ドルの対外支援パッケージの法案に署名した。大量の資金が軍需産業に回ることも米経済を支える要因になるとみられる。

 一方、欧州中央銀行(ECB)の利下げは6月が見込まれており、ECBが米FRBに先駆けて利下げを決定すると、ユーロ安に振れ、金の圧迫要因になるとみられる。ただ、中長期の金の強気見通しに変わりはなく、米FRBが7月まで金利を据え置いたのち、利下げ期待が強まると、再び買われるとみられる。金の独自材料では中国の金投資拡大や中央銀行の買いが下支え要因である。

●プラチナや非鉄は金急騰に対する出遅れ感から買われる

  プラチナやLME非鉄は金急騰による出遅れ感から買われ、プラチナはドル建て現物価格が一時1000ドル台を回復、銅現物価格は4月25日に2022年4月以来となる1万ドル超えまで上昇、アルミ現物価格は4月22日に2022年6月以来となる2697ドル台をつけた。白金業界団体のワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)はプラチナが2年連続の供給不足となる見通しを示し、中期的には水素関連の需要が大幅に伸びることを見込んでいる。ただ、中国経済の先行き懸念から高値での買いは見送られ、中長期のレンジ相場を継続した。米FRBの利下げ先送りの見方も上値を抑える要因になった。

 一方、銅は電気自動車(EV)や再生エネルギーなど脱炭素に向けた動きを受けて需要増加が加速するとみられている。アルミも自動車向けや半導体製造装置向けの需要増加が見込まれており、ファンダメンタルズは堅調である。また、米英は4月13日以降に生産されたロシア産非鉄金属の引き渡しを禁じる制裁措置を発表した。アルミ、ニッケル、銅を対象としており、米英以外のバイヤーには制限が課されないが、非鉄金属市場に影響が広がるとみられている。

●原油は地政学的リスク一服が上値を抑える要因

 NY原油は地政学的リスクの高まりを受けて昨年10月以来の高値87.67ドルをつけた。ただ、イスラエルとイランの本格的な軍事衝突が回避され、地政学的リスクが一服したことが上値を抑える要因である。しかし、イスラエルとイランの代理組織との戦闘が依然として続いていることは原油の下支え要因である。

 また、石油輸出国機構(OPEC)プラスが自主減産を6月末まで延長したことや、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しで世界経済は今年も着実に成長するとの予測を示したことも下支え要因である。IMFは今年の米国の成長率見通しを1月の2.1%から2.7%に大幅に上方修正した。当面は各国中央銀行が利下げサイクルに転じ、景気の回復期待が高まるのが待たれる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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