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1885 東亜建設工業

東証P
1,059円
前日比
-19
-1.76%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
8.7 0.93 3.54 155
時価総額 932億円
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決算発表予定日

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極東貿易 Research Memo(8):新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待


■中期経営計画と成長戦略

(2) 新規ビジネスの開発と育成
新中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネス(M&A含む)である。5つの成長分野への取り組みをプロジェクト化し、経営資源投入を強化している。これは就任4年目となる岡田社長の強い思いでもあり、社長直轄プロジェクトとして、戦略的に取り組んでいる。5つの成長分野とは、1)再生可能エネルギー、2)水素・電池、3)環境衛生、4)バイオプロダクツ、5)産業向けDX・IoTである。5つの成長分野についてはこれまで極東貿易<8093>も何らかの形で関わってきており、市場や技術の知見や経験が生かせる分野でもある。同社はそのなかから、複数の事業化を目論んでいる。ここで注目しておきたいポイントは、同社がM&Aの成功のための知見やノウハウを有していることである。2023年3月期は、5つの成長分野のなかから、重点3新規事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。重点3新規事業の活動状況は逐次、経営企画部へ報告される。社長直轄マターとして、全社的視点で協業・M&Aやリソース配分などを判断し新規事業の舵取りをしている。

1) 再生可能エネルギー分野:洋上風力発電関連事業
同社はこれまで資源開発関連事業で培ってきた海底探査、掘削の経験と知見を生かし、「洋上風力発電」分野の周辺機器というニッチ市場で事業化を進めてきた。この度、オランダのTWD B.V.(以下、TWD)との戦略的アライアンスを結んだ。TWDは洋上風車等の建設のための特殊大型治具(Pile Gripper、建て起こし機、Lifting Tool、各種架台、JacketのTemplate 等)の設計・製作・メンテナンスを行っている。業界での知名度は高く、国内のマリコン※やゼネコンも積船の機材設計の機会があるとTWDに引き合いがくるようである。この分野ではTWD以外に設計できるところはほとんどなく、オンリーワンの存在となっていると言う。

※マリコンはマリンコントラクターの略で、五洋建設<1893>や東亜建設工業<1885>などが有名。


2022年1月には、オランダ TWD B.V.の日本代理店である(株)トリオマリンテックと同社にて合弁会社TWD Japan(同社出資比率70%)を設立した。はじめは設計・製作・サプライで商売していくが、将来的には保守・メンテナンスサービスへの事業展開を目論んでいる。同社は、設計・製作段階から運営・メンテナンスまで関われば、洋上風力風車に関する経験・ノウハウが蓄積できると考えている。

洋上風力発電関連事業については、2023年3月期の売上高は4~5億円、2026年3月期には20億円を見込んでいる。既に概要設計の複数受注が決まっており、この計画は堅めの数値で計画前倒しの可能性もある。また、同事業は収益性も高い。TWD Japanの商圏は当面、日本・東アジア(台湾)となるが、日本だけでもかなりの引き合いがあり、まずは足元の日本で事業基盤を強化する予定である。そして、洋上風力発電関連事業ではTWD以外にもさまざまな種まきを行っているもようで、第2弾、第3弾の事業シナリオも楽しみである。

2) 産業向けDX・IoT分野:自動運転システム関連事業
同社は、大手鉄鋼メーカーによる「製鉄所構内で運行する特殊車両を自動運転にできないか」という依頼を機に、製鉄所構内での構内用特殊車両の自動運転システムの商用化に乗り出した。同社はこれまで、工場向けIoT機器や構内自動運転機関車の開発に取り組んできた。その知見を生かし、自動車試験システムのトップサプライヤーである英国AB Dynamics Ltdグループと共同開発することとなった。工場構内を走行する現行特殊車両向け障害物検知機能組込み自動運転システムの開発において、パートナーシップ協定を締結した。現時点では、既存車両を改造した自動運転(無人化)を想定している。同製品の適用分野は国内鉄鋼メーカー、化学プラントなどが挙げられる。構内用特殊車両の自動運転システム事業は、新中期経営計画期間内に売上高10億円を見込んでいる。同社は今後、特殊車両のドライバーの高齢化で自動運転ニーズはますます高まると見ている。同社では産業系自動運転分野の知見やノウハウを深めると同時に、新技術の導入も進め、完全自動化に備える。

3) その他の取り組み事業:バイオプロダクツ
このテーマは中長期の新規事業テーマと位置付けており、「生分解促進添加剤販売」と「生分解プラスチックの自社ブランド品の開発販売」の2つのテーマがある。「生分解促進添加剤」は米国のベンチャー企業EcoLogic LLCと代理店契約を結び販売をスタートしたところである。「Eco-One」は、FDA(米国食品医薬品局)に準拠した添加剤で、オーガニック100%である。樹脂に「Eco-One」を約1%添加することで、樹脂製品に生分解・海洋分解性機能を付与できる。用途はランニングシューズ、オフィス家具、医療用資材、レジ・ゴミ袋など幅広く、環境価値を重視するユーザーに受け入れられると弊社は見ている。

まだスタートしたばかりで事業プランは色々あるようだが、事業化には時間がかかるもようだ。同社は新中期経営計画の期間中には事業化したいという考えである。


資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略
(3) 株主価値に資する資本政策の実行
株主価値・企業価値向上のためには、営業利益を1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行する一方で、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。事業を推進するうえでの資金の余力があるためである。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的な株主還元策を進める。

同社では、機関投資家向け決算説明会(2022年5月26日開催)に続き第102回定時株主総会(同年6月23日開催)にて、資本コストを開示した。既に会社方針や社長メッセージでも「資本コストを意識した経営」を打ち出し、コーポレートガバナンス報告書でも「資本コストの開示」を通知した。「株主提案」の前から、同社には情報開示の意思があったようである。「2023年3月期の株主資本コスト7.7%、加重平均資本コスト(WACC)5.7%」という情報開示に対して、株主や投資家の反応は、総じて肯定的評価が多いようである。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略に活用することが望まれる。なお、配当政策については「株主還元策」の項で述べる。

(4) パラダイムシフトのなかで「想像」し「創造」できる人材を育成
同社の企業成長を担う社員の育成を着実に進めるべく、中長期的な視野で人材投資を行い、社員が活躍できる環境整備を積極的に進めている。人材育成にあたっては、今後以下の2点を推進するとしている。

・コンセプチュアルスキルを強化するための研修プログラムを計画
…コンセプチュアルスキルとは、知識や情報を体系的に整理し、複雑な事象や曖昧な状況を概念化する力
・社員の「創造性」や「柔軟性」を受け止める社内ルール制定や体制改革を実行
…創造性や柔軟性の評価方法、積極的な受入体制や土壌や風土の地盤づくり

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

《SI》

 提供:フィスコ

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