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【特集】ビットコインだけじゃない、脚光「ブロックチェーン」活用術 <株探トップ特集>

シノケンG <日足> 「株探」多機能チャートより

―潜在市場規模“67兆円”、非金融分野での利活用カギ―

 仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として脚光を浴びている「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」を、あらゆる分野で利活用しようとする試みが広がってきた。昨今のFinTech(ITを活用した金融サービス)ブームを背景に、現在は金融分野での応用が先行しているが、革新的技術とされるブロックチェーンのもたらすインパクトに多くの企業が注目。今後は、規制の多い金融分野に比べて自由度が高い非金融分野での取り組みが活発化するとの見方がある。

●経産省、潜在市場を67兆円と試算

 ブロックチェーンとは、取引などの記録をコンピューターのネットワーク上で管理する技術のひとつで、インターネット上の複数のコンピューターで多数の参加者が取引記録を共有し、互いに監視しながら正しい情報を鎖(チェーン)のようにつないで蓄積する仕組み。暗号技術を組み合わせることで、改ざんが極めて難しい分散処理・管理を実現でき、従来の集中処理型のインフラと比較して、管理コストが削減でき、安全性も担保されるといったメリットがある。

 ブロックチェーンは、多数の参加者における取引記録のリコンサイル(突合・残高照会)や所有権管理といったプロセスに適しており、金融以外でもさまざまな分野での応用が期待されている。例えば、よりスマートでより効率的なサプライ・チェーン・システムの実現や、IoT(モノのインターネット)ネットワーク、ゲーム、マルチメディア著作権管理、レンタカー、政府が作成する身分証明書や免許、保険記録の管理での活用などが想定される。経済産業省が16年4月に公表したブロックチェーンの調査報告書では、潜在的な市場規模を67兆円と試算。今後は非金融分野での利活用が進むとみられ、ブロックチェーン市場の拡大ペースが加速しそうだ。

●シノケンGは不動産関連サービスを開発へ

 足もとでは、非金融分野で実証実験に乗り出す企業が相次いでおり、不動産分野ではシノケングループ <8909> [JQ]が7月5日に、ブロックチェーンを使ったシステム開発を行うChaintope(福岡県飯塚市)と資本・業務提携し、共同で不動産関連サービスを開発すると発表。第1弾として民泊事業にブロックチェーンを活用する予定だ。また、積水ハウス <1928> は4月下旬から、ビットコイン取引所大手のbitFlyer(東京都港区)と共同で、ブロックチェーンを利用した不動産情報管理システムの構築に取り組んでいる。

●エナリスは電力分野での活用探る

 電力分野では、東京電力ホールディングス <9501> が7月10日、ドイツの大手電力会社イノジーと共同でブロックチェーンを活用した電力直接取引プラットフォーム事業を立ち上げ、ドイツで事業を開始したと発表。エナリス <6079> [東証M]は5月下旬、ソラミツ(東京都港区)が主導して開発を進めているブロックチェーンソフトウエア「Hyperledger Iroha(いろは)」の電力領域におけるユースケース・パートナーとなり、さまざまな電力サービスを検討している。

●セゾン情報は宅配ボックスで実証実験

 物流分野では、パルコ <8251> が5月下旬から6月上旬にかけて、セゾン情報システムズ <9640> [JQ]と共同でブロックチェーンを活用した宅配ボックス と、パルコが運営するWeb通販サービスとを連携させる実証実験を実施しており、9月頃には次の段階の実験を予定。また、GMOインターネット <9449> は昨年12月、セゾン情報システムズなどとブロックチェーンおよびIoTを活用した「本人のみが受け取れる宅配ボックス」の実証実験を行った。

●インフォテリア、トヨタ、DACHDにも注目

 このほか、医療分野ではGMOインターネットが7月20日に、ブロックチェーンを利用したプログラムをオープンソースとして公開するプロジェクトを立ち上げ、「医療機関カルテ共有システム」のオープンソースの提供を開始。

 娯楽分野では、富士通 <6702> は小田急電鉄 <9007> が主催するイベントで、ブロックチェーンを活用したスタンプラリーを7月26~29日にかけて実施する予定。富士通は3月にもスマートバリュー <9417> [JQ]などと共同で、千葉銀座通りを中心に実施された地域スタンプラリーにブロックチェーンプラットフォームを提供した実績もある。

 これ以外では、インフォテリア <3853> [東証M]が6月24日に開催した定時株主総会で議決権行使におけるブロックチェーンの実証実験に成功済み。トヨタ自動車 <7203> の研究機関であるトヨタ・リサーチ・インスティテュートは5月下旬、米MITメディア・ラボなどと共同で自動運転車の開発に向けてブロックチェーンを利用するプロジェクトを推進すると発表したほか、D.A.コンソーシアムホールディングス <6534> [東証2]グループのデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムは4月下旬から、ブロックチェーンを用いたデジタル広告効果透明化の実証実験を始めている。

 金融分野では、MS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> 傘下の三井住友海上火災保険が電縁(東京都品川区)およびOrb(東京都港区)と共同で6月から、ブロックチェーンなどを活用した損害鑑定業務の実証実験をスタート。野村ホールディングス <8604> と大和証券グループ本社 <8601> 、みずほフィナンシャルグループ <8411> 、三井住友銀行、米R3の5社は共同で、ISDAマスター契約(店頭デリバティブ取引に関する基本契約書)締結業務でブロックチェーンを活用する実証実験を5月に行っている。

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