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【特集】受注額「十数ヵ月ぶり」プラス転換、“重厚長大産業”株への追い風 <株探トップ特集>

東京五輪の関連需要などを追い風にセメントの国内販売が回復している

―インフラ投資機運が好影響、マーケットで高まる関心―

  鉄鋼 セメント 建設機械といった重厚長大産業に復活の兆し――。昨年末あたりから各業界団体が発表している受注額などで「十数ヵ月ぶり」にプラスに転じる事例が目立っており、株式市場では大きな変化の象徴として関心が高まっている。

 背景には、国内で東京五輪や都市再開発に関連した需要などが出始めるとともに、2016年の世界経済が年央から後半にかけて持ち直してきたことが挙げられる。17年も国内では政府が昨年8月に決めた事業規模28兆円の経済対策が下支えになるとみられるほか、海外では米国のトランプ新大統領が10年間で1兆ドルのインフラ投資を打ち出していることや、中国が官民一体のインフラ投資プロジェクトなど内需刺激方針を表明していることが追い風となりそうで、世界的な財政出動の高まりが重厚長大産業に好影響を与えそうだ。

セメント国内販売17ヵ月ぶりプラス

 セメント協会が昨年12月22日に発表した16年11月の国内販売量は、前年同月比5.1%増の385万6000トンと、17ヵ月ぶりのプラスとなった。地区別ではダム工事による需要が牽引した北海道と九州がともに10%超と伸び、関東や近畿といった大都市圏も前年並みまで回復した。太平洋セメント <5233> では「11月頃から回復基調が強まり、12月も前年実績を上回って推移した。今年は東京五輪リニア中央新幹線による需要が見込め、販売量はさらに上向きそうだ」(広報部)と期待を寄せており、住友大阪セメント <5232> や宇部興産 <4208> 、トクヤマ <4043> 、三菱マテリアル <5711> などとあわせ目が離せない。

●建機出荷額16ヵ月ぶりに前年実績を上回る

 日本建設機械工業会は昨年12月28日、16年11月の 建設機械出荷額が前年同月比1.2%増の1807億8600万円となり、16ヵ月ぶりに前年実績を上回ったと発表した。内需が8ヵ月連続で減少した半面、外需は16ヵ月ぶりに増加。同工業会は「国内は排ガス規制に伴う駆け込み需要の反動が続いているが、輸出は鉱山向けなど大型機械の更新需要が牽引し、北米やオセアニア、ロシア向けが好調だった」といい、コマツ <6301> や日立建機 <6305> 、ヤマシンフィルタ <6240> 、酒井重工業 <6358> 、タダノ <6395> 、竹内製作所 <6432> などが注目される。

工作機械受注17ヵ月ぶり浮上

 日本工作機械工業会が16日に発表した16年12月の 工作機械受注(速報値)は、総額が前年同月比4.4%増の1119億500万円と17ヵ月ぶりに浮上した。うち内需は11ヵ月ぶり、外需は19ヵ月ぶりに拡大。同工業会では「内需は昨年11月に開催されたJIMTOF(日本国際工作機械見本市)の効果や、生産性向上設備投資促進税制の期限を今年3月に控えて需要が高まったようだ。外需は足もとで円安が進み価格競争力が上がったことが追い風となった面がある」とみており、ツガミ <6101> やオークマ <6103> 、牧野フライス製作所 <6135> 、DMG森精機 <6141> などは要マークだ。

●16年度の粗鋼生産3年ぶりプラスの見通し

 日本鉄鋼連盟は昨年12月16日、16年度の粗鋼生産は1億550万トン程度と3年ぶりに前年度実績を上回るとの見通しを示した。また、17年度については東京五輪関連をはじめ都市再開発・交通インフラ整備の加速による建設投資の拡大などを背景に16年度を上回ると予想しており、新日鐵住金 <5401> や神戸製鋼所 <5406> 、ジェイ エフ イー ホールディングス <5411> 、中山製鋼所 <5408> などの動きに注意を払いたい。

●17年の段ボール国内生産10年ぶり最高更新を見込む

 全国段ボール工業組合連合会は昨年12月8日、17年の需要予測を公表。生産量は前年比1.0%増の141億平方メートルを見込み、07年に記録した過去最高139億6600万平方メートルを10年ぶりに更新する見通しを示した。業界大手のレンゴー <3941> は「加工食品向けが堅調なことに加え、ネット通販向けが伸びている」(広報部)といい、特種東海製紙 <3708> やトーモク <3946> 、ダイナパック <3947> [東証2]、ザ・パック <3950> などのほか、 段ボールに印字する機械を製造する石川製作所 <6208> にも着目したい。

●化学プラントメーカーでは値上げが相次ぐ

 また、足もとで製品値上げが相次いでいる化学株も注目される。カネカ <4118> は塩化ビニール樹脂を約3年ぶり、宇部興産はナイロン6樹脂製品を約4年ぶり、住友化学 <4005> はポリエチレンおよびポリプロピレンを約1年6ヵ月ぶりに値上げする方針。東ソー <4042> はポリエチレン樹脂を約1年6ヵ月ぶり、カセイソーダを約4年ぶりに引き上げる。信越化学工業 <4063> は世界的な半導体需要を受け「シリコンウエハーの価格交渉を進めている」(広報部)としており、実現すれば11年ぶりの値上げとなる。

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