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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆日米協調新時代を好感◆

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

〇イタリア情勢、真珠湾訪問契機に切り返す〇

昨夕、16時頃からCME日経平均先物は、円安とともに上昇転換した。東京市場で重荷となったレンツィ伊首相の辞意表明による不透明感が欧州市場で「影響は限定的」との見方に変わったこと、(速報時間は不明だが)安倍首相の真珠湾慰霊訪問の報に反応したことが切り返しの背景と考えられる。

レンツィ首相が推進した憲法改正の国民投票は59.1%対40.9%の大差で否決され、首相は辞意を表明した。市場は一旦ユーロ売りなどに振れたが、事前に予想されていたこと、改正案(事実上の一院体制、独裁を招き易い)自体が急進過ぎるとの見方が一部にあったこと、格付け会社S&Pが「国民投票は格付けに直接的な影響はない」との見解を表明したことなどで切り返す動きとなった。ユーロは対ドルで1年8か月ぶり安値の1.0506ドルか
らNY終値は1.0796ドル。10年物伊国債利回りは一時2.07%に上昇したが終値は1.98%(11月末に付けた2.17%を抜けず)。銀行株はモンテ・パスキ4.2%安、ポポラーレ・ミラノ7.9%安と売られたが、全体は0.21%安に止まった。

ユーロ圏諸国の予算案を協議したユーロ圏財務相会合は、終了後共同声明を出し、ドイツ、オランダ、ルクセンブルグは中期目標を上回る財政状況にあるとし、財政拡大を促した。ドイツが応えるか不明だが、ユーロ圏政策の綱引き材料になろう。

市場は「トランプ政策推進には、日本の資本、技術力が必要不可欠」と見ていると考えられる。安倍首相の真珠湾慰霊訪問は、欧米メディアも概ね歓迎している様だが、オバマ大統領の広島訪問と合わせ、「日米協調新時代」を強く印象付ける。大袈裟に言えば、「従属」時代から「対等」時代に向かう象徴になると考えられる。事前にトランプ氏と異例の直接会談を行ったことも効いてくる(米国内には一部反対派の動きもあり得るが)。

本日はカーター国防長官が海上自衛隊ヘリ搭載型護衛艦「いずも」を視察する。昨日は「日本の支援で日米同盟関係はかつてないほど強くなった」、「(日本の駐留経費負担に)満足している」と表明した。5日から北海道で、ハリアー攻撃機(岩国駐留)が参加して日米共同訓練が始まった。米軍基地を抱える自治体負担軽減が表面上の理由だが、青森三沢止まりだった米軍展開が北海道に広がることで、ロシアがピリピリしている状況が窺える。

ロシアが北方領土交渉で態度を硬化させた要因には、日本のパトリオット購入予算拡大、THAAD(戦域高高度防衛ミサイル)配備の検討(それに対抗する形で択捉、国後にミサイル配備計画)があると、ロシアは主張している。中国の反応は出ていないが、驚きと警戒で見ていると思われる。

CME日経平均先物の高値は18570円(終値は円建て18405円)。一時下値調べに向かうムードも出ていたが、17500~19000円ゾーンの上半分(18250~19000円)での揉み合い展開が基調と考えられる。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/12/06号)

《WA》

 提供:フィスコ

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