【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆強面か、猫なで声か◆
TOPIX <日足> 「株探」多機能チャートより
〇政治攻防の余韻続く、高値圏攻防想定〇
週末の耳目は欧州に集まっていた。オーストリア大統領選では親EU派のベレン氏の勝利が確実と伝えられ、極右党首ホーファー氏は敗北宣言。イタリアの憲法改正の国民投票では、出口調査で反対派が54-58%と優勢で、レンツィ首相の辞任に発展するか注目されている。これを受け、為替は波乱含みのスタートとなっている。また、中央アジアのウズベキスタン大統領選では9月に死去したカリモフ前大統領のバランス外交踏襲を表明しているミルジョエフ大統領代行が優勢。トランプ外交が注目点となっている上、トランプ潮流の世界への拡散も注目されている。欧州の選挙はトランプ潮流と反トランプ姿勢の鬩ぎ合いが当分続くことを示唆する。
トランプ外交では、3日台湾の蔡英文総統との電話会談が波紋を広げている。ペンス次期副大統領は「儀礼的なもので問題はない」との認識を示したが、1979年以来の慣行を破った意味は大きい。
中国には2日、キッシンジャー氏が訪問、習近平国家主席と会談し、「米中関係の安定的な発展を米新政権も期待していると信じる」、「選挙戦中の発言は気にするな」と語ったとされる。中国側にヌカリがあった印象だ。
台湾には保守系シンクタンク・ヘリテージ財団のスティーブン・イエーツ氏(政権移行チームの助言役)が滞在中で、電話会談を手配したとCNNが伝えている。電話会談はかなり戦略的な意図が感じられる。なお、日本には商務長官に指名されたウィルバー・ロス氏の代理人と麻生財務相の会談が伝えられ、日米関係は商務省ルートが重要になる可能性がある。他にもドゥテルテ比大統領との電話会談で、麻薬犯罪取り締まりを賞賛した。
まだ手探りの領域を出ないが、安全保障面では、国防長官に「狂犬」の異名を取るマティス退役海軍大将(退役7年間は任命しない文民統制ルールをトルーマン大統領のマーシャル氏以来破る)など、中東戦争、親イスラエルの専門家が集まり、アラブ側が圧力を感じてOPEC合意につながったとの見方がある。原油価格はWTIで51ドル台/バレルに上昇しており、最も得をするのは米シェール産業と言われている。
対中戦略がどういう方向になり、それを受けるないしは先取り的に中国がどう出るか、大きな注目点になる。米企業は累計で2280億ドル(25兆円規模)の対中投資を行ってきたとされるだけに、新たに設けられた米主要企業トップを集めた「雇用創出に向けた政策助言の諮問委員会」の動向が注目点となろう。
日本株への海外投資家の買い越し(現物+先物)は、11月第4週で3週連続累計2兆4141億円に達した(先週分は8日に発表)。10月の買い越しは4週連続で一旦止まっており、どういったリズムを刻むか注目されるところだ。今週はメジャーSQを控え、利益確定に動き易いと見られる。TOPIXの半年前比は+10.53%、前年比は-6.10%にある。ただし、1MM通貨先物建玉で、11月29日時点で、円は269枚の売り越し(前週は1万900枚の買い越し)に転じた。小幅ではあるが、久々の売り越し転換に海外投資家の目線継続が感じられる。出遅れ物色を中心に、全体は高値圏揉み合いが想定される。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/12/05号)
《WA》
提供:フィスコ