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3Dマトリック Research Memo(6):止血材販売計画は保守的で上振れの可能性も


■今後の見通し

1. 2018年4月期の業績見通し
スリー・ディー・マトリックス<7777>の2018年4月期の連結業績は、事業収益で304~2,354百万円、営業利益で1,675百万円の損失から630百万円の利益とレンジ形式で開示している。欧州での独占販売ライセンス契約を締結できるかどうかで大きく変わってくるためだ。事業収益の内訳を見ると、止血材の売上高で前期比183.8%増の304百万円を見込んでおり、欧州での独占販売ライセンス契約が締結されれば2,000百万円の契約一時金収入、韓国でのCEマーキングが取得できればマイルストーン収益50百万円がそれぞれ計上されることになる。

費用面では、止血材の売上増加に伴って売上原価が前期比32百万円増加するほか、研究開発費で同26~283百万円の増加を見込んでいる。研究開発費に関しては、国内の止血材及び米国の歯槽骨再建材の臨床試験費用を見込んでいるほか、今後の資金調達の状況によって欧州での次世代止血材の臨床試験及び関連費用を積み増す可能性がある。また、米国で開発を進める癒着防止材に関しては臨床試験申請のための費用のみを計画に織込んでいる。臨床試験の費用については、1プロジェクトで2~3億円程度を想定している。一方、販管費については各費用項目を見直すことで前期比191百万円の減少を見込んでいる。

欧州のライセンス契約締結の可能性については流動的なものの、止血材の売上高については第1四半期の実績で計画を上回っており、今後もオーストラリアでの販売好調が続くこと、欧州では計画に織り込んでいないイタリアやスペインの公立病院向けの販売が開始されることなどから、計画を上回る可能性があると弊社では見ている。

2. 止血材の売上見通し
止血材の売上高については、前期比183.8%増の304百万円を見込んでいる。地域別では、欧州が前期比2.3倍増の219百万円、アジア・オセアニアが同10.8倍の65百万円、中南米が同3.2倍の19百万円となる。また、四半期ベースでの会社計画は第1四半期に41.6百万円、第2四半期に70.7百万円、第3四半期に71.9百万円、第4四半期に120百万円としていたが、第1四半期については66.2百万円と計画を上回っている。地域別の売上計画の前提は以下のとおり。

(1) 欧州
欧州の売上計画は、2017年4月期第4四半期の販売実績(月平均12百万円)をベースに販売代理店30社、ターゲット医療施設200件に対して販売を進めていくことを前提としており、2018年4月期に加わる可能性のある新規代理店からの売上貢献は計画に織り込んでいない。また、イタリア、スペインにおける公立病院への販売についても、入札時期が不透明なため計画に織り込んでいない。2017年4月期第4四半期をベースにすれば年間で約140百万円の売上げとなり、これに2018年4月期から営業体制が整い本格稼働する英国のDIAGMED HealthcareやドイツのNicolai Medizintechnik、フランスのPENTAX等の有力代理店を通した売上貢献が加われば、会社計画は十分達成できるものと思われる。用途先としては引き続き内視鏡分野が中心で、ほかの2領域についての売上増加はほとんど見込んでいない。とはいえ、これら外科領域においても有力代理店が稼働すれば売上げの上乗せ要因となるほか、イタリア、スペインの公共入札についても一部の公立病院で8月に実施されており、今後の販売開始が見込まれ、売上げの上乗せ要因となる可能性がある。

主要国別に見ると、英国では2017年4月期末に販売を開始した有力医療施設において、販売量が月を追うごとに拡大しているほか、KOLを活用して十数件の主要医療施設への販売拡大に注力していく方針となっている。また、ドイツではNicolaiの販売が順調に拡大してきたほか、外科領域において複数代理店体制を確立し、自社リソースも投入しながら販売体制を強化していく方針となっている。フランスではPENTAXが第2四半期より稼働を開始し、販売増が見込まれるほか、外科領域においても直販・代理店体制で販売を拡大しつつ、有力代理店との交渉も進めていく予定となっている。

(2) アジア・オセアニア
アジア・オセアニア地域については、引き続きオーストラリアでの販売増を見込んでいる。第2四半期に入ってからもMaquetからの発注が続いているもようで、通期売上高は計画の65百万円を上回り、100百万円を超える可能性が出てきている。また、インドネシアやマレーシア、香港については前期半年間の平均販売本数をそのまま継続する前提となっており、売上高としては軽微となる。韓国については2018年4月期中のCEマーキング取得を見込み、マイルストーン収益50百万円を計画に織り込んでいるが、初期納品分(65百万円)の売上げについては計画に織り込んでいないため、取得時期によっては上乗せ要因となる可能性がある。

(3) 中南米・カナダ
中南米地域については、ブラジルを中心に19百万円の売上高を見込んでいる。ブラジルでは既に約2.5百万円の受注が入っており、うち1.1百万円を第1四半期に計上したが、残りは今後の追加発注分も含めて第3四半期以降の納入する予定となっている。そのほか、チリやメキシコ向けの販売も第3四半期以降、若干程度計上される見込みとなっている。一方、カナダについてはCEマーキング取得と同時に代理店を通じて販売を行う準備はできているものの、取得時期が不透明なこともあり今期の計画には織り込んでいない。

3. その他パイプラインについて
(1) 歯槽骨再建材
歯槽骨再建材の開発状況については、2017年4月までに全12症例に対して投与を完了し、全症例で歯槽骨が再建され、インプラントを埋植している。6ヶ月間の観察期間においてインプラントが安定であることが確認されているほか、対象部位における新生骨の割合も、他家骨を充填した場合と比較して約2倍大きくなっているなど、臨床試験は順調に進んでいるものと考えられる。

ただ、2017年夏頃までとしていた経過観察期間については少なくとも秋まで続ける見通しとなっている。同社では経過観察終了後に症例のデータ分析を行い、FDAと協議した上で製造販売承認申請を行うか追加試験を行うか判断していく方針となっている。製造販売承認申請を行うことになれば、同じタイミングで販売パートナーの契約交渉も行う予定となっており、ライセンス契約が決まれば550百万円程度の契約一時金が見込めることになる。また、同時に欧州でのCEマーキングの取得申請も行う予定だ。

(2) DDS材料
国立がん研究センターとの共同プロジェクト「RPN2※標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」における医師主導型の第1相臨床試験を実施している(2015年7月より開始)。同臨床試験では「がん幹細胞」に特異的に発現するPRN2遺伝子をターゲットとし、その発現を抑制する核酸(PRN2siRNA)と、同社の「A6K」をキャリアとするDDSを組み合わせた製剤の安全性評価を行うもので、症例数は30症例を目標に、経過観察を含めて2018年1月頃までかけて臨床試験を行う予定となっている。

※PRN2…がんの転移・浸潤・薬剤耐性を担うターゲット遺伝子。siRNAは分解性が高いといった特性があり、ターゲットのがん細胞に届くまでに体内で分解されるといった課題があったが、A6Kとの複合体にすることで分解が抑制される効果があり、がん細胞に確実にPRN2siRNAが送り届けられることになる。既に、イヌの自然発症乳腺腫瘍症例において、核酸医薬としての有効性が確認されており、ここ最近は製薬企業からの問い合わせも増加するなど注目度が高まっている。


siRNA単独では安定性が低く腫瘍部に届くまでに分解されてしまうことが課題であったが、「A6K」との複合体にすることで安定性が高まり、分解が抑制されることが動物実験により明らかとなっている。イヌの実験では、乳がん腫瘍の縮小効果も確認されており、業界での注目度も高まっている。第1相臨床試験の結果が良好であれば企業主導型治験への移行及び大手製薬企業へのライセンスアウトの可能性もあり、その結果が注目される。

また、2017年7月には国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(以下、AMED)による2017年度「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」関連シーズ「橋渡し研究戦略的推進プログラム」に、広島大学医歯薬保険学研究科との共同プロジェクト「がん幹細胞及び抗がん剤耐性がん細胞に作用する革新的抗腫瘍核酸医薬の開発」が採択されたことを発表している。同プロジェクトは、悪性胸膜中皮腫※を対象疾患としたマイクロRNAによる新しい核酸医薬の研究開発を行うもので、同社はマイクロRNAをがん細胞に効率的に送達するためのDDS用材料として「A6K」を提供する。今後3年間で前臨床試験を実施し、共同研究開発を行っていくほか共同特許の出願も予定している。なお、今回の採択による助成金は主に広島大学が受領するため、同社の業績への影響は軽微となっている。

※肺を覆う胸膜の表面に発生するがん。アスベストが発症原因の多くを占めている。現在の治療法は手術と抗がん剤の併用だが、再発も多く診断5年後の死亡率は90%を超える。年間死亡者数は2015年で1,500名超、今後2035年をピークに2?3倍の発症が予測されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《NB》

 提供:フィスコ
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