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【特集】桂畑誠治氏【走り出した総選挙相場、日経平均高値更新の意味は】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―10月22日投開票に向けた相場展開を聞く―

 名実ともに下期相場入りとなった2日の東京株式市場では、利益確定の売り圧力を吸収して日経平均株価は反発に転じ、年初来高値を更新した。ただ、アジアの主要株式市場が休場でマーケット参加者が限られたことや、10月22日投開票の日程で走り出した総選挙モードのなか、自民党と希望の党を中心とする選挙情勢を見極めたいとの思惑もあり、上値の重い展開となった。ここからの株式市場と為替市場の動向をどう見るか、第一線で活躍する市場関係者の意見を聞いた。

●「当面は様子見も選挙後は上値指向に」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京株式市場は当面様子見ムードが強くなるのは致し方ないところだが、悲観的には見ていない。民進党は事実上の解党となり、希望の党は受け入れの際にリベラルな議員を避けて安保関連法などを支持する保守派議員に絞っており、その点では希望の党自体が変質するようなことはない。希望の党の票が伸びてくるということ自体は株価的にそれほどマイナス面を及ぼすとは思えないが、マーケットが気にしているのは自民党の議席数が減ることだ。これによって経済政策面で不安定要素を抱えることが東京市場にとってはデメリットとなる。

 世界的に経済ファンダメンタルズは好調で、米国をはじめとする海外株高が進めばそれに追随する形で東京市場も上値を追う。また、為替も北朝鮮を巡る地政学リスクを除けば内外金利差から円安の方向性が確保され、株式市場全体を下支えする役割を担いそうだ。しかし、自民党が大きく議席数を減らすのではないかという不安がつきまとい、10月22日の投開票までは海外投資家も日本株を積極的に買い進むというスタンスは望めそうもない。

 また、北朝鮮は10月10日の朝鮮労働党創建記念日に前後してSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の実験を行う可能性があり、その場合いったんは株価がリスク回避の売りにさらされる可能性もある。したがって、日経平均は一時的に2万円大台を下回って推移する局面もあり得るだろう。しかし、地政学リスクだけで全体が下降トレンドに転じることは考えにくく、下値模索は一時的なものにとどまろう。

 下値に対する警戒は10月22日の投開票までで、選挙が終われば落ち着きを取り戻し全体指数は上値を指向する可能性が高い。政策面で近い希望の党と自民党の政策連携のシナリオも模索されることが考えられ、日経平均はこうした思惑を背に10月下旬以降にアベノミクス高値である2万868円を払拭して2万1000円台へと歩を進めよう。物色対象としては、為替の円安基調を前提に電機機器・精密・自動車といった輸出関連セクターに優位な地合いが想定される。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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