市場ニュース

戻る
 

【特集】徹底検証・小池新党は何をもたらすか、政策と関連株を追う <株探トップ特集>

JPHD <日足> 「株探」多機能チャートより

―「希望の党」一定勢力確保でマーケットはどう動く、日経平均“上値追い”は続くのか―

 総選挙は22日の投開票日に向けて大波乱の様相となっている。安倍晋三首相のタイミングを計っての解散に、小池百合子東京都知事が自ら代表となって「希望の党」を旗揚げして対抗。これに民進党が合流するかに見えたが、公認問題を巡る軋轢(あつれき)からリベラル系議員が袂を分かって新党「立憲民主党」結成に動くなど風雲急を告げている。ただ、これまで存在しなかった希望の党が一定の勢力を確保することが想定されるなか、株式市場からの関心が高まっている。

●野党再編流動化で有権者の投票行動に不透明感

 9月下旬の3連休中に安倍首相が電撃的ともいえる衆院解散・総選挙に打って出る方針を固めたと報じられたことで、週明け19日の東京株式市場では、日経平均株価が前週末比389円88銭高と急騰をみせ、一気に2万円の大台を回復した。この時点では、市場関係者のあいだに「“安倍1強”と言われたころに比べて支持率はやや低下しているものの、野党の準備不足もあり自民党が大きく負けることは考えにくく、アベノミクスは継続されそうだ」との見方が多く、株価についても先高ムードが支配的だった。

 ところが、25日になって小池氏が新党「希望の党」を立ち上げて、自らその代表に就くと突如表明、民進党も新党への合流を決めたことで、野党再編の動きが一気に流動化し、自民党対希望の党の対立構造が鮮明となった。その後も、希望の党と日本維新の会が東京と大阪の小選挙区での候補者調整で一致する一方で、小池氏が民進党からの合流組を選別する方針に対して、民進党のリベラル系前議員が新党立憲民主党の結成に動くなど事態は混沌としており、有権者の投票行動に不透明感が増している。そこで、希望の党の参戦によって、大波乱が予想される総選挙の動向と株式相場への影響について第一線の専門家3人に聞いた。

●SMBC日興証券投資情報部部長 太田千尋氏

「希望の党が票伸ばしても中期的にはプラスの可能性も」

 希望の党はまだ海の物とも山の物ともつかない状態で、例えば民進党のどういった議員と合流するのかなど全貌が見えない段階で判断するのは正直困難といえる。ただ、これまでの小池東京都知事の主張や政治スタンスをもって判断するのであれば、株式市場や金融市場にとってフレンドリーというイメージを持っている。もし、希望の党が思った以上に票を伸ばした場合、小池氏自体は海外投資家にとって馴染みがないだけに、いったんは安倍政権の弱体化を嫌気され売り圧力に反映されるかもしれない。しかし株価の下げは限定的で中長期的にはプラスに作用する可能性がある。

●アルゴナビス フィナンシャルコンシェルジュ 清水洋介氏

「いったん利益確定で10月中旬に買い戻しも」

 当面の相場は10月22日の総選挙を視野に、上値が重い展開となる可能性はあると思う。「選挙は買い」の経験則は、今回は通用しないかもしれない。個人的には、与党の過半数割れはないとみている。ただ、一部には、希望の党が躍進し自民党が万が一負けた場合、経済政策が変わることを懸念する見方が出てもおかしくない。1993年と2009年に自民党が下野した時、新たに就任した与党は何もできず、株価が下落した。この時の連想もあり、今回もいったん、利益確定売りを出す動きも予想される。日経平均株価の2万円割れの可能性もあると思う。ただ、10月中旬頃に自民党の負けがないと分かれば相場も反転するだろう。

●証券ジャパン 調査情報部長 大谷正之氏

「具体的政策や実行力を考慮すると与党有利揺るがず」

 希望の党の旗揚げや、民進党の合流など野党内で派手な動きはあるものの、具体的な政策や過去5年間の経済面での実績を考え合わせると、与党有利の構図は揺るがないのではないか。野党は現状でもまとまりを欠いているうえに、実際に政権を任せられるようなしっかりとした政策や実行力の裏付けが見えてこない。投開票日までは、マスコミ各社の世論調査の結果などを織り込みながら横ばい強含みの推移となりそうだ。総選挙終了後には、4-9月期の決算発表が本格化してくることもあり、上方修正などの好業績銘柄中心の物色となりそうだ。

●比例投票先で希望の党14.8%=共同通信

 共同通信が9月30日、10月1日両日に実施した全国電話世論調査によると、衆院選の比例代表の投票先政党は自民党が24.1%、希望の党が14.8%となった。また、安倍内閣を「支持しない」との回答は46.2%で、「支持する」の40.6%を上回った。さらに、安倍首相と希望の党代表の小池東京都知事のどちらが次の首相に望ましいかを尋ねたところ、安倍氏が45.9%、小池氏33.0%という結果となった。

●消費税引き上げ凍結と原発ゼロを打ち出す

 希望の党の基本方針は、(1)しがらみのない政治、(2)議員定数・議員報酬の縮減、(3)行政改革:徹底した情報公開、(4)真の地方分権の確立の4項目。具体的な政策としては、社会政策として(1)女性政策など、ダイバーシティ(多様性)社会の確立(2)多様な教育(奨学金、高度研究、生涯教育)。経済政策として、(3)消費税対応 実感できる景気回復の実現、(4)ポストアベノミクスにかわる成長戦略 不動産の有効活用やAI、金融システムの推進。環境・エネルギー政策として、(5)原発ゼロとゼロエミッション社会への工程作成(6)フードロス対策――を挙げている。

 このなかでは、「消費増税凍結」、「脱原発」が自民党と異なる政策として株式市場の関心を集めている。今後の選挙戦のなかで、原発の存続・廃止を巡る論議が活発になることも予想され、脱原発の世論の高まりによって、再稼働に不透明感が増すのではとの懸念から電力株が軟調な推移となる可能性がある。一方、ゼロエミッション社会を目指すことから、太陽光、風力、地熱の発電など再生可能エネルギーの推進加速が予想され、この関連銘柄に注目が集まりそうだ。

 また、小池氏は既に都知事として「都民ファーストの会」が掲げる「東京大改革」のなかで具体的な重点政策として「都民の食の安全と安心を守る」、「格差と段差をなくす」、「受動喫煙対策を実施」、「女性とシニアの力をもっと活かす」、「待機児童という言葉をなくす」の5項目を挙げている。これらの政策は、国政の課題との共通点も多い。

●国策として無電柱化が加速する可能性も

 昨年夏の都知事選以来、小池氏は減災などの観点から無電柱化(電線地中化)を提唱し、都民ファーストの会の政策のなかでも「無電柱化推進に向け、区市町村道への財政支援、技術革新によるコスト縮減で総合的な取り組みを推進」としており、今後は東京以外でも実施が加速する可能性もある。無電柱化関連銘柄としては、通信工事大手のコムシスホールディングス <1721> をはじめ、関電工 <1942> 、協和エクシオ <1951> 、きんでん <1944> 、共同溝などコンクリート2次製品のイトーヨーギョー <5287> [東証2]、ゼニス羽田ホールディングス <5289> [東証2]、電線類共同溝用鉄蓋など鋳物大手の虹技 <5603> などが挙げられる。

●女性活躍促進で子育て支援関連に注目

 待ったなしの課題となっているのが「待機児童解消」への施策だ。都民ファーストの会基本政策では「保育士の更なる待遇改善、保育サービスの拡充、規制緩和などにより待機児童ゼロをめざす」としている。関連銘柄としては、全国の幼稚園、保育園での体育指導を手掛ける幼児活動研究会 <2152> [JQ]、保育園運営などの子育て支援最大手のJPホールディングス <2749> 、事業所内保育所受託と公的保育施設運営のライクキッズネクスト <6065> 、通信教育最大手で保育施設も手掛けるベネッセホールディングス <9783> などがある。また、多様な教育の推進では、「資格の学校」のTAC <4319> も貢献場面がありそうだ。このほか、女性の活躍推進で注目される銘柄としては、ピジョン <7956> 、ニチイ学館 <9792> 、再就職支援関連でパソナグループ <2168> 、パーソルホールディングス <2181> 、家事代行サービスのダスキン <4665> などがある。

●ロボット介護機器導入やAIの活用を促進

 さらに基本政策で「ロボット介護機器導入による介護職員の負担軽減策を実施」するとしており、介護支援ロボットを手掛ける菊池製作所 <3444> [JQ]、CYBERDYNE <7779> [東証M]などにも関心が向きそうだ。そのうち菊池製は、家電や自動車向け精密部品や金型を手掛けるほか、作業補助ロボットの「マッスルスーツ」を開発販売しており、業績は回復トレンドにある。また、人工知能(AI)を活用したロボットを手掛けているFRONTEO <2158> [東証M]にも注目したい。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均