貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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6301 コマツ

東証P
4,577円
前日比
-61
-1.32%
PTS
4,560円
23:03 05/02
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
12.5 1.43 3.65 12.10
時価総額 44,571億円
比較される銘柄
日立建機, 
クボタ, 
三菱重

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トプコン Research Memo(3):日本でも「土木革命」がスタート


■注目すべき点1:ICT自動化施工

1. ICT自動化施工とは
トプコン<7732>のICT自動化施工は、高精度GNSS受信機、コントロールボックス及び各種センサー類から成るポジショニング技術と油圧制御技術により、3D設計データに基づいて整地や掘削作業を行うシステムを指す。従来の作業工程は、測量、設計(CAD)、測設、施工、検査と5工程あった。ICT自動化施工の導入により測量、設計は従来通りだが、測設・施工・検査が建機のマシンコントロール(CAM化)に統合されて全体を3工程に短縮できる。工事期間の観点からは、従来比で30~50%短縮することが可能だ。これまでは、3次元CADデータが施工現場に展開する段階で紙の図面としてアナログデータとなり、さらに紙の図面に基づいて現場に目印となる杭を設置して、建機の運転手はその杭を目視しながら土を掘削するというやり方が当たり前であった。同社のICT自動化施工システムを用いれば大幅な効率化が可能となる。また、施工をICT自動化施工にすることで、オペレーターの熟練度に関わらず、土木施工を高い精度で行えるのも特徴である。ICT自動化施工によって生産性の向上と人手不足の解消・費用削減を同時に実現できるというメリットがある。

技術としては、高精度GNSS技術と油圧制御技術が肝となっている。GNSSと言うと、一般的にはカーナビやスマートフォンなどで位置座標が数十メートル単位でずれるなど精度の問題があるが、同社の高精度GNSSはミリメートル単位、センチメートル単位で位置を測定・制御することが可能となっている。

2. 主な製品
この分野の新製品は、「マストレスMCシステム 3D-MCMax」。従来のブルドーザーシステムは、排土板にマストを後付けし、GNSSアンテナからケーブルを繋ぐ必要がある。建機の激しい振動によってポールが折れたりGNSSアンテナのケーブルが断線するというトラブルが多発していたが、新製品ではマストが不要になったためポールの溶接が不要でかつケーブルレスにすることができた。

3.「i-Construction」と日本市場の見通し
国内では、国土交通省が「i-Construction」によりICTの全面的な活用(ICT自動化施工)の全面義務化を打ち出したことで、普及が急速に進むと考えられる。国土交通省の直轄工事において、ICT自動施工は2016年に20%程度でスタートし、2020年には100%となる見通しで、現状の5倍の2兆5,000億円~3兆円程度の規模になると言われている。さらに2016年9月に行われた官民合同の「未来投資会議(議長=安倍晋三首相)」において、建設現場の生産性を2025年までに20%向上する目標を掲げた。この会議を経て、国の直轄工事に地方公共団体発注工事が上乗せされることとなり、公共工事でのICT自動化施工の利用は欧米に遅れること16年で、やっと普及拡大フェーズに入ったと言える。実際、「i-Construction」の発注現場数は、2016年4月には400現場の計画だったが、2017年3月時点では1,700現場に拡大している。建設現場の生産性の向上と労働力不足への対策として、同社製品は大きく貢献するものと思われる。

欧米では、コストパフォーマンスの観点からICT自動化施工は積極的に取り入れられている。一方、日本ではこれまで熟練した技能者の腕によって支えられてきた面があったが、労働人口の減少により技能者だけでなく、土木作業員の確保も難しくなっていくだろう。一人前の建機のオペレーターや技能者になるまでに数年から10年程度の経験が必要とされていたが、同社のICT自動化施工システムの使用により、初心者でも扱いやすく、また精度が高い作業が可能となる。労働力不足に悩む建設会社にとって救世主になるのではないだろうか。同社は普及に当たってトレーニングセンターを国内では福島、神戸、北九州の3ヶ所に設置しており、実際に製品を使用して体験ができる。また、国内では建機のレンタル会社も多く、製品をレンタルで使用でき初期投資や費用を抑制できる形になっており、導入拡大に向けて土台は整っていると言える。また、同社は建機メーカー大手であるコマツ<6301>とICT自動化施工システムを共同開発しており、コマツの「Smart Construction」戦略の一翼を担っていることも、導入拡大を後押しするものになるだろう。

4. 潜在市場
自動車工場ではFactory Automationが進み高い生産効率を実現しているが、かたや建設現場では、設計段階ではCADが用いられるものの、施工段階では紙の図面と目印の杭などとなり、いまだ非効率な手法が取行われていることが多い。世界のインフラ投資額は800兆円超(日本50兆円、米国120兆円)の規模で先に比較した自動車産業100兆円超に比べて約8倍もの規模で世界最大の産業であるにも関わらず、自動化・ITが遅れていたという背景がある。

同社はICT自動化施工の耐用年数を8年としてグローバルな浸透率を推定している。1990年には搭載率が数%に過ぎなかったが、2014年には10%程度、現在は15%程度まで増加しており、10~20年後には50%超程度まで拡大すると予想している。なお、同社はICT自動化施工の市場規模は1,100億円程度と推定している。

5. 市場シェアと競合会社
同社のICT自動化施工のグローバル市場シェアは約40%程度でトップと推定される。競合会社は、米国のTrimble(トリンブル)<TRMB>、スウェーデンのHexagon AB(ヘキサゴン)<HEXA-B>であり、前者のシェアは同社と同程度、後者は同社より低いと推定される。

6. 成長戦略
欧米における建設投資は堅調に推移しており、かつ日本ではi-Constructionが導入され始めたことにより、先進国を中心とした安定成長が期待される。現在の建機メーカーのパートナー企業はコマツに代表されるが、John Deereの建機部門及びVolvo等とも提携関係にある。同社ではOEMビジネスは拡大フェーズに入っていると考えており、今後は新たなビジネスパートナーの獲得と既存のビジネスパートナーにおける搭載車種の拡大によって大きな成長が期待される。

(執筆:フィスコアナリスト 清水 さくら)

《HN》

 提供:フィスコ

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