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6167 冨士ダイス

東証P
672円
前日比
-6
-0.88%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
19.9 0.65 3.27 2.06
時価総額 134億円
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富士精
決算発表予定日

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冨士ダイス Research Memo(5):業務効率化、成長分野の新製品開発、グローバル展開を推進


■中長期の成長戦略

1. 筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築
冨士ダイス<6167>は中期経営計画としてフェーズ1で2024年3月期に売上高17,000百万円、営業利益1,490百万円を目指す。またフェーズ2で2027年3月期に売上高20,000百万円、営業利益2,500百万円を目指す。この実現に向け、新社長の下、フェーズ1ではコロナ禍からの回復、筋肉質な企業体質への転換、次世代新製品・新事業の育成・深耕、海外事業の強化を行い、フェーズ2では売上高の拡大、収益率の向上を実行し、営業利益率12.5%以上を目指す。

今中期経営計画フェーズ1の目標数字は売上高ピークであった2019年3月期の18,356百万円に達しない。会社側では、2018年3月期から2019年3月期にかけて、自動車の環境対策関連で新工場立ち上げに伴う売上計上、鉄鋼用ロールは大口注文とその後中国ローカルの製品に置き換わった影響等で売上の回復が見込めない製品群があるためとしている。このためフェーズ1は基本コンセプトとして筋肉質な企業体質への転換、中長期の成長基盤の構築を行い、2027年3月期の売上高20,000百万円、営業利益2,500百万円達成に向けての足固めの時期としている。基本的に高品質を維持しつつ、より短時間でより多くの製品を生産するための施策を実行、各事業所で具体的なスケジュールによる生産効率の改善を推進する。

2. 次世代自動車への対応・拡販
同社の業容拡大では最大需要先の自動車産業向けの対応が非常に重要で、二次電池、モーター関連、マグネット関連に注力する。二次電池では専用ラインを構築し量産体制を整備、モーターコア用抜き金型では従来品に加え、電磁鋼板の薄板化及び高硬度化に伴い、破壊靭性や耐摩耗性に優れた長寿命化につながる新材種VG48を投入、さらに開発を進める。

3. 新成長エンジンの創出
同社は自動車産業向け以外でも、市場ニーズを先取りした高付加価値製品の開発に注力している。コロナ禍が3年にも及び、新製品開発・新技術開発の進捗が停滞していたが、改めて開発が進み出し、フェーズ2となる2027年3月期には量産化されるものも多いと見られる。

医療・化粧品分野では、分析用デバイス(マイクロ流路)成形金型が評価用サンプル対応から試作品評価まで一歩前進した。超硬合金直彫り加工技術を生かし微細な流路形状を複数配列、流路配列ピッチ精度1μm、輪郭精度5μmを達成している。マイクロチップは金型でのナノインプリント転写ができれば大幅なコストダウンが可能で、血液検査などの予防医学、POCT(診療現場で迅速に行う臨床検査)での利用が見込まれ、大きな市場が生まれる可能性がある。ただし医療・化学分野は研究機関などR&D向けが大半で、量産までには時間を要するとしている。

環境・エネルギー関連では、酸素発生触媒を開発している。本触媒は、従来の貴金属触媒に対し、大幅な効率改善を達成しており、水の電気分解分野等、試作サンプル評価が進んでいる。また、CO2還元触媒の開発も並行して進めている模様。この分野は様々な企業や研究機関も開発を行っており、同社の粉末冶金技術や高圧合成技術がカギとなろう。

また、環境エネルギー分野において株式市場で大きく評価されたのが、希少金属であるタングステン、コバルトの使用量を大幅削減し、鋼より軽量で超硬合金に迫る硬さと靭性を実現した省タングステン・コバルト合金(サステロイST60)の開発である。同材種は2022年11月30日に開催された決算説明会段階では、同月8~13日まで開催されたJIMTOF2022にお披露目した情報に留まっていた。その後、超硬合金では比重が大きいため、適用が困難とされている回転工具分野(粉砕回転場、ハンマー)への展開を目論み、顧客による評価調整が進んでいる。現時点では、スモール立上げを見込んでいるが、岡山事業所の既存設備での製作可能とのこと。一方で、新ラインの構築については、今後の受注状況をにらみながら進めて行く模様。新たな柱となる可能性が出てきた。

光学ガラスにおいて同社は、モールドプレス法初期からレンズ成型金型材料を開発し、一眼レフ用レンズ向けに多くの納入実績、高いシェアを有する。今回、新材料として従来のバインダーレス超硬合金(通常の超硬合金と異なり、コバルトやニッケルなどの金属成分を含まない素材で、非常に硬く、鏡面性が出やすい合金)では適用が困難な領域として、高熱膨張特性を有するサーメット系材料(TRシリーズ)を開発し、販売を開始した。本材料は、熱膨張率の高い硝材に近似する高熱膨張係数を有しており、同材料で製作されたモールドを用いることで、成型したい硝材の熱膨張率に追随するため、硝材の割れを大きく改善することが可能となる。具体的には次世代自動運転、防犯監視カメラ当向け赤外線レンズ用金型用途として見込んでおり、自動運転などで多用されるADAS(先進運転支援システム)向けなど潜在需要を想定していたと見られる。足元では、これらの潜在的需要に加え、ミラーレス一眼レフカメラ向けに撮像用非球面レンズ成型用の金型ニーズが高まっている。現在、デジカメはミラーレスの時代となり、しかもフルサイズミラーレスが急拡大、交換式レンズは解像度向上のために非球面レンズの多様化(多い場合では1本で4枚)が進んでいる。この交換式レンズはコンパクトデジカメに採用されるレンズに対し大径であり、熱膨張による硝材寸法の動きが大きく、成型時における品質には、モールドの熱膨張率が大きく関係する。このため、同新合金への需要が高まっている。このように、次期中期経営計画での収益拡大を支える事業として、既に量産への期待が膨らむ製品群も現われ、今後の新たな柱としてフェーズ2には大きく開花することが期待される。

4. 海外事業の強化
同社は少量多品種生産と受注生産直販システムを軸に国内で確固たる顧客基盤の下で成長してきたが、今後、海外子会社、輸出の両輪で売上拡大を目指す。2022年3月期の海外売上高は3,229百万円(前期比23.8%増)、海外売上比率19.1%となっているが、2024年3月期には構成比で20%以上を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)

《SI》

 提供:フィスコ

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