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【特集】“AI&人材”時代が織りなす大相場、黄金の上昇機運「10銘柄」<株探トップ特集>

貿易摩擦懸念から足踏みが続く全体相場をよそに、投資マネー流入に沸くセクターがある。AI、そしてIT系人材サービスを手がける銘柄群がそれだ―――。

 ―ビッグデータ普及加速、データサイエンティスト全盛時代幕開けが株高を呼ぶ―

 トランプ米大統領の保護主義を前面に押し出した通商政策に対する警戒感が、世界の株式市場にも色濃く反映されている。しかし、局地的には全体の沈滞ムードとは全く違った風景が広がっているのが今の相場の特徴だ。日経平均株価の上値の重さとは裏腹に旺盛な物色人気に沸くセクターがある。

 いま、東京市場では人工知能(AI)関連銘柄への投資マネー流入が勢いを増している。また、それと並行するように、IT系人材の派遣サービスを手掛ける企業にもスポットライトが当たり、株価の再評価が始まっている。

●世界でAI技術の覇権争いが本格化する

  ビッグデータの普及加速、そして IoT時代の本格到来を前に、AI技術の発展が重要なカギを握っている。先端分野である自動運転車ドローンフィンテック生体認証などのほか、バイオ医療、流通、農業など、AIはあらゆる産業において合理化や新サービス創出の礎であるといっても過言ではない。

 世界的にスタートアップ企業やベンチャー企業への投資が加速しているが、その目玉になっているのはやはりAIで、名だたる大企業が同分野での主導権争いに奔走している。特に国際間ではAI大国である米国と、それに対し猛烈にキャッチアップを図ろうとする中国の間で“冷戦”が激しさを増している状況だ。中国では昨年、国家レベルの「次世代AI発展計画」を始動、AI産業の発展に向けた戦略目標や重点任務を定めている。一方、米国では直近5月にホワイトハウスで政府要人のほか、学術機関の専門家などトップレベルの技術者が一堂に会し「AIサミット」を開催、世界の先端を走り続けるために改めて本腰を入れる構えだ。

 いうまでもなく欧州もAI分野の技術促進に躍起である。EUの執行機関である欧州委員会は域内のAI部門への投資を2020年までに200億ユーロ(約2兆6000億円)に増加させる目標を掲げている。EUが競争力を維持すると同時に、域内からの人材流出を防ぐため、欧州委員会主導のAI関連投資を漸次加速させる方針だ。

●アベノミクス生産性革命の要を担うAI

 日本も世界の後塵を拝してはいられない。安倍政権が進める骨太の方針において柱のひとつを担う“ソサエティ5.0”では、生産性革命の中核エンジンとしてAI技術の促進が前提となる。世界で圧倒的に人材が不足している「データサイエンティスト」の確保・育成など越えねばならないハードルは多く、国を挙げてAI全盛時代に向けた布石を打つ必要に迫られている。

 民間では既に動きが活発化している。AI投資の本尊ともいえるソフトバンクグループ <9984> は、同社が率いる「ビジョン・ファンド」を絡め今後の一挙一動が注目されるが、5月末には同社子会社がAI関連のスタートアップに絞った投資ファンドを発足させたと発表している。また同日に、NTTドコモ <9437> 傘下の投資会社も、日米のAI関連スタートアップ2社への出資を明らかにした。

 今後は 自動車業界の盟主トヨタ自動車 <7203> や富士通 <6702> 、日立製作所 <6501> 、パナソニック <6752> といった大手電機、通信メガキャリアの一角であるKDDI <9433> などの動向にも熱い視線が注がれることになる。

●パナソニック、日立など人材育成に注力

 直近では、今月下旬にパナソニックが18年度末に社内のAI人材を500人に増員する計画を明らかにしており、現場のエンジニアにデータ分析をはじめAIに対応した素養を身につけさせる方針を明示。一方、日立は2021年度までにデータサイエンティストを現在の700人から4倍の3000人に大幅増員する野心的な計画を発表している。

 AI関連分野のニュースが相次ぐなか、最近の傾向として目立つのがIT系人材の確保に焦点が絞られているということだ。データサイエンティストの派遣については高度な分析技術の移植を伴う養成期間が必要なため容易ではないが、昨年、ALBERT <3906> [東証M]とテクノプロ・ホールディングス <6028> が提携して同分野での展開力を強化している。

 また、AI分野に関わらず、自動車業界やIT業界において技術者に対する人材ニーズは極めて強い。大手電機各社では、IoTに対応した理工系人材の争奪戦の様相を呈しているといわれる。これを裏づけるように技術者派遣を手掛ける企業の業績は総じて絶好調、構造的な追い風が吹いているといってよい。

 株式市場でもAI関連とIT系人材サービスを展開する銘柄群に再び大相場のムードが漂い始めている。「AI」と「人材」が織りなす上昇トレンドは理想買いの局面を通過して、いよいよ現実買いの第1ステージに入ってきたといえそうだ。ここから上昇機運に乗る要注目の10銘柄を紹介する。

●「AI」と「人材」でこの10銘柄にビッグウエーブ

【サイオス】

 サイオス <3744> [東証2]はリナックスを活用したITコンサルティングやソリューションで優位性を持ち、AI技術の開発に意欲的に取り組んでいる点で将来的な成長余地は大きいとみられる。最近ではエピゲノムの情報解析に踏み込み、東大発ベンチャー企業との提携によりエピゲノムのクラウドプラットフォーム構築を進捗させている点も注目される。足もとの業績も想定を上回る好調ぶり。12月決算企業だが、第1四半期の18年1-3月期は営業利益段階で前年同期比84%増の2億2300万円と急拡大、これは対通期進捗率で7割に達している。<急騰性=3 中期的上値余地=5>

【ホットリンク】

 AI関連の雄として注目度が高かったが、ここにきてにわかに株価を急動意させているのがホットリンク <3680> [東証M]だ。ディープラーニングなどを使ったビッグデータ解析ツールを強みとし、ボット機能を活用したマーケティング支援サービスにも展開する。「クチコミ@係長」シリーズは累計900社以上の企業に活用され、同社の業績拡大を後押ししている。中国人観光客を中心としたインバウンド需要対応の販促支援や越境EC事業にも取り組んでいる。また、ブロックチェーン推進協会の創生時からのメンバーとして参画するなど、ブロックチェーン関連銘柄としてのテーマ性もある。上場直後の14年1月に分割修正後株価で5670円の高値を形成しており、天井も高い。<急騰性=4 中期的上値余地=3>

【メンバーズ】

 メンバーズ <2130> はIT系人材派遣事業で高実績を有していると同時に、AIソリューションにも取り組んでおり切り口が多彩だ。業績は順風満帆の増収増益路線を継続、19年3月期営業利益は前期比20%増の8億200万円見通しと好調、20年3月期も成長は止まらず売上高、利益ともに大幅な伸びが予想される。株価も上場来高値近辺で強調展開をみせており、株式需給面の軽さが生きて青空圏を走る可能性がある。企業のウェブサイトのデザイン制作やクリエーター人材の派遣を手掛けるが、ウェブビジネスの国内市場規模は急拡大途上にあり、東京五輪開催年の20年には自動車産業の規模を上回るとも試算され、同社への追い風は強い。<急騰性=4 中期的上値余地=3>

【PKSHA】

 PKSHA Technology <3993> [東証M]は指標面では割高ながら中期的な成長期待が強く、AIに特化している点で同テーマの象徴銘柄としての素地を持つ。東京大学発のAIベンチャーでディープラーニングを駆使した業務効率化のアルゴリズムモジュールとアルゴリズムソフトウエアを開発。これまでAIでカバーするのが困難な領域とみられていたバックオフィス業務やマーケティング業務において効率化の一翼を担う銘柄として存在感が大きい。金融、医療、流通など多岐にわたる業界の顧客ニーズを取り込んでいる。また、トヨタからの出資を受けている点もポイントで、トヨタは同社の大株主に名を連ねている。<急騰性=4 中期的上値余地=4>

【フライトHD】

 フライトホールディングス <3753> [東証2]はITコンサルティングおよびシステム開発を展開するが、新テクノロジー分野に積極的に踏み込み、AI・IoTなどを活用したサービスを手掛けるジェナ(東京都千代田区)と提携している。ジェナはソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」のアプリ開発も行うなど高い技術力を有しており、AIチャットボット分野での実績も注目されている企業だ。また、フライトHDは子会社を通じて電子決済ソリューションの決済装置やアプリケーションの販売も行っており、キャッシュレス化を推進する国策にも乗る。急騰力は抜群で目先の押し目は狙い目となろう。<急騰性=5 中期的上値余地=3>

【スリープロ】

 スリープログループ <2375> [東証2]も上値余地が大きい銘柄だ。法人および個人向けにIT支援サービスを展開、IT系人材ニーズを正面から享受する形でエンジニア派遣が伸びている。18年10月期営業利益は5億円と前期比3割強の伸びを見込むが、上期(17年11月-18年4月)時点で3億200万円と進捗率は高い。IoTに対応したAI搭載ロボットについて、注文から手元に届いた後の対応までをワンストップでサポートする「AI・IoTロボットフルフィルメントサービス」を提供している点もポイント。富士通のロボットAIプラットフォームを皮切りにサービスを開始している。<急騰性=4 中期的上値余地=4>

【セラク】

 クラウドやIoT分野などに対応する技術者不足が著しいなか、企業の求人需要を捉えているのがセラク <6199> だ。同社はクラウド分野に経営資源を投入し、有力なIT系人材を年間300人以上採用し、社内育成して派遣するビジネスを展開していることが評価される。ここにきて株価は動意含みで、マーケットでも存在感を高めている。生産履歴をクラウドで管理する技術にも強く、農業分野IoTでは先駆して実績を重ねている。18年8月期営業利益は前期比11%増の5億9000万円と2ケタ増益見通し、19年8月期も増収増益が見込める。<急騰性=3 中期的上値余地=4>

【ジェイテック】

 技術者派遣の穴株としては株価が低位に位置するジェイテック <2479> [JQG]に妙味がありそうだ。設計・開発分野を中心とし、同社も自動車メーカーやIT業界向けで人手不足の波を捉えている。同社自ら技術商社と位置付けるように、技術職知財リースサービスを顧客にタイムリーに提供することで優位性を持つ。株価は3月27日に332円の年初来高値をつけた後に大きく調整しているが、200円近辺は下値リスクも限定的。発行株数1000万株以下と小型で足は速く、上ヒゲを出しやすい嫌いはあるものの、その潜在的な人気素地にスポットが当たる。<急騰性=3 中期的上値余地=3>

【エスユーエス】

 エスユーエス <6554> [東証M]は開発系技術者派遣を主力に手掛けているが、ここ数年来、業績は高成長トレンドにあり、18年9月期は営業24.6%増の5億1200万円を見込む。自動車業界向けで高水準の需要を確保、半導体分野向けでも高い実績を持つ。また、特筆される材料として注目したいのが、大手企業の新卒採用試験向けに開発したAIマッチング採用管理ツール「SUZAKU」で、AIで学生の企業への適性を診断するシステムとして需要を確保している。高い利益率を誇り、今後の成長ドライバーとして収益貢献が期待される。<急騰性=4 中期的上値余地=3>

【アルトナー】

 アルトナー <2163> [東証2]は機械設計や電子機器、ソフトウェア開発などの技術者人材の派遣で高い実績を持ち、自動車業界やIT部品メーカー向け中心に好調な需要を取り込むことに成功している。顧客の開発ニーズに適合した技術レベルのエンジニアを迅速に派遣できるのが強みで、今後は自動運転分野という成長市場が待っているだけに評価余地は大きい。19年1月期は営業利益段階で前期比12.8%増の7億6800万円を見込む。今年4月に上場来高値1367円(分割修正後株価)の高値をつけているが、再チャレンジが有望。成長期待が強いうえにPER面でも割高感はない。7月3日付で東証1部指定となるが、ファンド組み入れ需要などが上値追いを後押しする。<急騰性=3 中期的上値余地=4>


◇「AI」と「人材」が織りなす大相場 黄金の上昇機運10銘柄◇

銘柄 <コード>      急騰性    中期的上値余地
メンバーズ <2130>    ☆☆☆☆   ◆◆◆
アルトナー <2163>    ☆☆☆    ◆◆◆◆
スリープロ <2375>    ☆☆☆☆   ◆◆◆◆
ジェイテック <2479>   ☆☆☆    ◆◆◆
ホットリンク <3680>   ☆☆☆☆   ◆◆◆
フライト <3753>     ☆☆☆☆☆  ◆◆◆
セラク <6199>      ☆☆☆    ◆◆◆◆
PKSHA <3993>    ☆☆☆☆   ◆◆◆◆
サイオス <3744>     ☆☆☆    ◆◆◆◆◆
エスユーエス <6554>   ☆☆☆☆   ◆◆◆

※急騰性は☆が多いほど強く、中期的上値余地は◆が多いほど大きい。

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