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【特集】中国新車販売“鈍化”向かい風、半値に沈む「東京ゴム」復活の道筋は <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―自動車販売増でゴム消費増加も供給増加が上回る、大幅安ゴム先物の今後―

 東京商品取引所に上場している東京ゴムは今年1月に先物価格ベースで2011年9月以来の高値366.7円を付けたのち、6月には178.8円まで下落し、半値となった。9月に234.7円まで戻したが、戻りは売られて再び200円を割り込み、軟調に推移している。中国の新車販売増加などを受けてゴム消費は増加傾向にあるが、供給も拡大しており、需給改善のきっかけをつかめない状況が続いている。今回はゴムの特性と需給に与える影響、注目すべき指標を解説する。

●天然ゴムは2011年の高騰が供給拡大のきっかけ

 ゴムには天然ゴムと合成ゴムがあり、天然ゴムはゴムの木から収穫される農産物である。ゴムの木から樹液を採取(タッピング)し、工場に運んで加工する。ゴムの木は樹齢5~7年目から樹液が採取でき、30年を過ぎると木材として売却される。

 東京ゴム先物価格は2011年2月に史上最高値535.7円を付け、東南アジアにおける農園拡大のきっかけとなった。なお、当時の価格高騰は2008年の米国のリーマンショック後に各国中央銀行が量的緩和を開始し、投資資金がゴム市場にも流入したことが背景にある。その後の価格下落で採算割れとなった工場や農園が閉鎖されたが、中国やインドの富裕層は低賃金の諸国で樹齢2~3年の農園にもかかわらず、投資を進めた。今年年初の価格上昇は新たな農園にとって収穫開始の好機になったとみられる。

 タイなど大手生産国ではゴム農家が政府に対して価格引き上げを求めて大規模な抗議活動を行う場面も見られるが、低コスト諸国からの供給が拡大している状況では抗議活動の効果は薄い。逆に洪水などで価格が上昇すると、一時的に閉鎖された農園が再開され、供給が増加するため、ファンダメンタルズが改善するまで戻りは限られるとみられる。

●上海在庫や原油価格を確認

 東京ゴム先物価格は軟調に推移しており、6月安値178.8円を割り込むと、テクニカル面では150円の節目や2016年2月安値144.5円が次の下値目標となる。価格が下げ止まるには消費国での在庫減少や、他の外部要因などが必要になる。

 中国は世界最大のゴム消費国である。上海期貨取引所の週間ゴム在庫は2016年11月25日の23万7,602トンを底にして増加傾向にあり、11月17日時点では51万0,356トンと倍増した。中国の新車販売は増加が続いているが、2017年は前年比5%増と前年の13.7%増から鈍化する見通しである。在庫増加が続けばゴム価格が下げ止まるのは難しくなる。また、当面は米新車販売の行方も焦点である。米新車販売は9~10月にハリケーン被害による車両の買い替え需要を受けて好調となったが、買い替えが一服すると、ゴムの需要が伸び悩む可能性が出てくる。

 一方、原油が石油輸出国機構(OPEC)の協調減産延長に対する期待感などを受けて堅調に推移していることは下支え要因である。原油高を受けて合成ゴムが上昇すると、天然ゴムの価格上昇につながる。目先は月末のOPEC総会の結果も確認したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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