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【特集】“100倍高”の夢乗せる人材関連株、黄金トレンド入り前夜の銘柄は <株探トップ特集>

アルバイトT <日足> 「株探」多機能チャートより

―衝撃の“テンバガーのちテンバガー”再来はあるか、時給2000円時代が意味するもの―

 日経平均株価は11月に入り先物を絡めた機械的な売買が影響して乱高下、上下いずれにも動き出したら一気に加速する高速エレベーター相場を演出、ハイ・ボラティリティな展開が投資家を翻弄している。しかし、株価形成の基本となる企業のファンダメンタルズは強靭だ。好調な業績を背景として、押し目は基本的に買い場提供場面と強気に構えることが今の相場に勝つ秘訣といえる。17年4-9月期決算を通過して日経平均ベースの予想EPSは1500円を超えており、2万2000円台はどこをとってもバリュエーション面から買いに分がある。

●有効求人倍率43年ぶり高水準、時給2千円の衝撃

 企業業績の好調ぶりは旺盛な求人需要にも反映されている。9月の有効求人倍率は1.52倍と8月と横並びの高原状態で水準的には約43年ぶりの高さだ。また、9月は完全失業率が2.8%とほぼ「完全雇用」の状況にある。中長期的にみても少子高齢化社会など構造的な面で人手不足の問題はさらに深化する方向にあり、これをどう解決していくかは日本にとって大きな課題である。そして、その課題クリアにむけ商機を捉えているのが人材サービスを手掛ける企業群だ。株式市場でも人材関連企業の好調な業績を横目に株価見直しの動きが改めて強まりつつある。

 人手不足はさまざまな業界で波紋を広げている。飲食業界の人手不足は既に知られるところだが、同業界をはじめ年末は繁忙期となるところが多く、その深刻の度合いは一段と高まっている。直近、宅配トップのヤマトホールディングス <9064> が、12月に向けて一部地域で時給2000円のアルバイト募集を始めたことが伝わり、マーケットでも話題となった。建設業界も超繁忙状態が続いている。大手ゼネコンを主要顧客に人材を派遣する夢真ホールディングス <2362> [JQ]では、10月度の建築技術者派遣事業の売上高が前年同月比34%増の22億6000万円と大幅な伸びを示し、稼働人数の増加だけではなく単価上昇も寄与して、営業利益は単月として創業以来の過去最高を記録した。

●「働き方改革」が民間でも次々と動き出す

 安倍政権では東京五輪開催年の2020年に117万人の労働者増加を見込んでいるが、その根拠となっているのが女性や高齢者の活躍を促す「働き方改革」だ。民間企業でも育児などで退職した女性の復職を後押しする動きが顕在化してきた。直近では、日本マイクロソフトが復帰への準備期間となるように約半年の有給インターシップを新設することや、損害保険ジャパン日本興亜が退職時に近い役職で復職できるように制度改変したこと、大手ゼネコンが再雇用の条件を緩和したことなどを日本経済新聞が伝えている。

 一方、業容拡大を図るため、そのノウハウを国内だけでなく海外で活用する人材関連企業も増えてきた。外資系企業向け人材紹介ビジネスを主力に手掛けるジェイエイシーリクルートメント <2124> は日系企業の海外人材需要をターゲットに置いて、現地での経験値の高い人材の紹介を進めている。また、中国を中心にベトナム、タイなどアジア地域で製造派遣や製造受託を手掛けるのがnms ホールディングス <2162> [JQ]で、売上高の6割を海外が占めている。

●テンバガーでは終わらない爆発的な上値余地

 株価的に人材関連企業の変貌ぶりは凄まじいものがある。投資家にすればテンバガー(10倍株)の可能性のある銘柄に出会えるのは一般的には稀だが、人材サービス関連銘柄はテンバガーでは終わらない“東京市場最大の大化け株の宝庫”であることは意外と知られていない。

 2008年秋口のリーマン・ショックの後、人材需要は急激なシュリンクをみせ、当時、人材サービス関連銘柄の株価も軒並み安値圏に沈んだが、特筆に値するのはその底値圏を形成した08年秋口~09年春先を基点とする株価の上昇率だ。

 例えば、自動車やIT業界向けを中心に人材事業を手掛けるワールドホールディングス <2429> は09年3月に修正後株価で50円だったが、今年10月末に3670円の高値をつけている、8年半で株価は73倍強になった。また、求人広告の企画制作および専門職向け人材紹介を手掛けるクイック <4318> は09年1月に40円(修正後株価)だったが、今年10月18日には1969円の高値をつけている。こちらは約49倍である。今や時価総額6400億円を超える大企業であるパーソルホールディングス <2181> も09年3月に141.7円(同)だったが、今月9日に2885円の高値をつけ綺麗に20倍化、“テンバガー・ダブル”となっている。

 もっと短期間で大化けを果たした銘柄もある。製造ラインへの人材派遣や請負、研究開発の受託業務などを手掛けるアウトソーシング <2427> は12年5月に55.2円(同)から今月16日には1805円まで上昇、5年半で33倍弱に変貌した。さらに、「バイトル」で知られるディップ <2379> は昨年7月に上場来高値3350円(同)をつけているが、11年3月の段階では32.2円であったから、たった5年半で何と104倍になっている。テンバガーになった後、そこからまたテンバガーという究極の大変身銘柄である。このように人材サービス関連株は爆発的な上値の可能性を秘めているのだ。

●技術系人材関連でヒップに上値余地

 人材サービス関連の上場企業は非常に数が多いが、こうしたパターンで株価の居どころを大きく変えている銘柄のオンパレードといってよいだろう。収益成長力という観点では、半導体・液晶分野などで製造業請負を手掛けるUTグループ <2146> [JQ]をはじめ、自動車や電機業界に開発技術者を派遣するトラスト・テック <2154> やアルプス技研 <4641> など技術系の人的資源を有する会社に優位性がある。なかで、株価指標面で割安なヒップ <2136> [JQ]はここからの上値余地が大きそうだ。同社は自動車、機械、電子、ソフトウエアなどの技術開発人員を提供する。時価総額は50億円以下で変身余地が意識される。

 このほか、家電量販店など販売現場への人材支援を行うウィルグループ <6089> など付加価値の高い業務をテリトリーとする派遣会社は相対的に変化率が高い。変わり種では、前述のディップやエン・ジャパン <4849> [JQ]のように求人情報サイトを手掛ける企業も注目。派遣人材を直接確保する必要がなく、競争によるコストがかからずに高収益体質を堅持しやすい強みがある。

●アルバイトタイムスなど低位の人材関連株に照準

 投資の観点でここから狙い目となるのは、人材関連で株価が低位に位置する銘柄だ。値がさ株は業績実態に見合った株価を形成しているものがほとんどとはいえ、どうしても“変身後”のイメージを持たれやすい。収益成長と合わせて株式分割が想定されるのはプラス材料だが、成長の宝庫にあって投資戦略的に有利なのは短期資金が攻勢をかけやすい低位株であろう。

 株価200円台のアルバイトタイムス <2341> [JQ]は静岡県を地盤に無料求人情報誌を手掛けるが、求人情報サイトも運営している。アルバイト情報誌の内容はスマートフォンやパソコン向けにも配信し訴求力を高めている。また、同社は外国人採用支援サービスを展開している点もポイントとなる。国内の中小企業の人手不足は大企業以上に深刻度を増している。そうしたなか、日本商工会議所の会頭が今月16日の定例記者会見で、外国人材の受け入れのための出入国管理制度の見直しについて議論する場を政府に設けることを要望したことが伝わっている。

 首都圏を中心に資格取得学校を展開するTAC <4319> も200円台だ。会計や法律をはじめ幅広い分野の資格を取得するための「資格の学校」は安倍政権が掲げる「人づくり革命」が収益環境に追い風となる可能性がある。

 また、アクモス <6888> [JQ]はeコマース支援やセキュリティー関連などITサービスを主力とし、業績は17年6月期の32%営業増益に続き、18年6月期も6%増益予想と好調が続く。子会社ACMOSソーシングサービスでシステムエンジニアを常駐させている。株価は6月28日の393円、10月12日の391円で2点天井をつけているが、時価は調整十分で再動意の可能性をはらんでいる。

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