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2017年11月15日19時00分

【市況】中村潤一の相場スクランブル 「買いの好機到来!“全固体電池”関連株浮上へ」

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一

●投資家心理のバイアス超える高速アルゴの影響力

 合理から軌道を外れた株価の上げや下げは、個別単位でみればファンドの設定やクローズなどに伴う機械的な売買要因も絡みますが、多くは人間心理のバイアスがかかったがゆえの産物。しかし、近年は人工知能(AI)による先物の高速アルゴリズム取引、いわゆるCTAのような一方通行の相場を演出する“加速装置”が全体相場の攪乱要因として存在感を大きくしています。青天の霹靂とはよく言ったもので、前週11月9日後場の地合いは一本調子の上昇相場にあって、落雷のようなインパクトで投資家マインドを揺さぶりました。

 相場の振り子は過度な強気から売り優勢の地合いへと振り戻される局面にありますが、その基点となったのがこの日でした。

 9日は前場段階で日経平均株価が454円高と大幅高を演じ「25年10ヵ月ぶりの2万3000円突破」で意気が上がったのも束の間、後場に入ると急降下、今度は400円近い下げとなり、上下800円を超える大立ち回りの後、最後は前日終値近辺まで戻して45円安で小ぢんまりと着地するという、まさに人を食ったようなドラマ仕立ての展開。この日の売買代金はほぼ5兆円に達し、オプションSQ前日にして先物を絡めたアルゴ取引の威力を目の当たりにした感があります。これが大勢トレンド転換の端緒となるとは到底思えませんが、野球に例えればビーンボールを投げられたスラッガーが、しばらくスランプに陥るようなもので、株式市場も立ち直るのにやや時を要しそうです。

●騰落レシオを見れば“青天の霹靂”は必然だった

 前回の当コラムでも申し上げたように、どんなに強くても相場は生き物、人間の呼吸と同じで大きく吸い込めば吐き出すタイミングも必ず訪れます。調整のきっかけとなった理由は何であれ所詮は後講釈の世界であり、この乱高下相場の前日(8日)に日経平均ベースの騰落レシオ(25日移動平均)が170%に達していたという現実が、すべてを物語っているといってもよいでしょう。つまり、いったん下落しなければ次の幕が上がらない状況だったのです。

 もっとも、前回コラムで「このまま一直線にフルスロットル状態で2万2000円台を走り抜けるとは思えません」と言い切ってしまいましたが、日経平均はその見立てをあざ笑うかのように一気に2万3000円を突破しました。「振り子は常に行き過ぎる」と言っておきながら正直そこまでノンストップで行くとは考えておらず、読みの甘さを露呈してしまいましたが、今振り返ればそこはやはりイレギュラーゾーンだったようです。そこから踵(きびす)を返して下げに転じ、足もとは一方通行で下値を切り下げる展開を余儀なくされています。個別銘柄も全体の波に飲まれては太刀打ちできません。毎度繰り返しになりますが、下値リスクに対してはロスカットポイントを決めた機動的な売買が必須となります。

●ファンダメンタルズに回帰した視点で臨む

 しかし、山高ければ谷深しというのはある意味、相場の道理であって、そこにまたチャンスが芽吹くことも忘れてはなりません。先物・オプション特化でAIを活用したトレンドフォローによる高速取引を行うのがCTAの実態。その影響がハイボラティリティなブーメラン相場を演出しているわけですが、見方を変えれば需給オンリーの下り坂であり、待ち望んだ押し目買いのチャンスが提供されていることにもなります。

 前回「今はバックミラーに映る光景を見てアクセルを踏み込んでいる部分も少なからずあります」と上昇相場に警鐘を鳴らしたつもりでしたが、それはベクトルを逆向きにした下落途上でも同じことが言えます。下げの勢いに思わず躊躇するのは当然とはいえ、ファンダメンタルズに回帰した視点を持てばそれほど怖くはありません。何といっても企業の好業績は強みです。今回の4-9月期決算を通過して足もとのEPSは日経平均ベースで1515円まで上昇、妥当といわれるPER14~16倍の水準に換算すると2万1200円~2万4200円のゾーンが算出され、時価はむしろその下限に近づいてきています。テクニカル的にも25日移動平均線の上方カイ離が解消される2万2000円近辺は打診買いを入れていい水準と考えます。

●にわかに光を放ち始めた「全固体電池」

 今回の下落局面では中小型株の下げがきつく、仕切り直しとなっている銘柄が多数ですが、ここは前向きに買い場探しの場面です。こうした波乱相場にあっても、その底流で強力な相場テーマが動き出しています。

 にわかに光を放ち始めたテーマはすばり「全固体電池 」です。これまで株式市場では電気自動車(EV)の加速的な市場拡大シナリオを背景に、動力源として電解液にイオンを流して放電や充電を行うリチウムイオン電池関連が主役の座を占め、その製造を担う企業や装置メーカー部材メーカーなどに物色の矛先が向く形となっていました。しかし、リチウムイオン電池の需給逼迫が背景にあるとはいっても、やや“一本かぶり”で走り続けた感は否めません。人気が盛り上がって一巡すれば終わりということでは決してありませんが、時間とともに違った切り口を求めるのが相場の特性でもあります。250兆円規模といわれる世界の自動車市場がいずれはEVに取って代わられるという壮大なシナリオは、そこから派生する可能性も多種多様であり、かつスケールも大きい。EVの動力源という範疇ではポスト・リチウムイオン電池としてその最右翼に全固体電池が躍り出てきた感があります。今はこの流れを捉えたいところです。

●盟主トヨタの野心が有力テーマに火をつける

 全固体電池は、現行のリチウムイオン電池では液体である電解質(電解液)を固体材料に変え、正極と負極を含めた部材すべてを固体で構成する電池のことです。元来、電解液は可燃性の物質を含有し、液漏れや発熱に伴う発火の危険性を孕んでいますが、固体化することでこの問題を解決できることが第一点。また、EVに搭載した際には、航続距離の大幅な延長やフル充電時間の画期的な短縮、さらに長寿命化なども期待される、まさに動力源として求めたいものが備わっている夢の次世代電池といっても過言ではないでしょう。

 直近ではトヨタ自動車 <7203> が先の東京モーターショーで、2020年代前半の全固体電池実用化を目指す方針を明らかにして業界関係者の耳目を驚かせました。200人を超える技術者が開発に取り組んでいる状況で、既に試作品が完成されている段階にあるといいます。世界的にみても、固体電池の特許ではトヨタが一頭地を抜く状況にあり、自らのテリトリーで来るべきEV時代を主導する同社の思惑がひしひしと伝わってきます。

 これまで量産車での全固体電池の実用化は困難が伴うとの見方が強かったのですが、トヨタが本腰を入れて経営資源を振り向ける以上は、その課題を乗り越える自信ありと宣言しているようなもの。マーケットでもテーマ性を強く帯びることは必至といえそうです。

●特許登録数で京セラ、パナソニック、出光など

 関連銘柄としては、固体電解質層の特許権者として特許登録数の多さでトヨタに次ぐのが京セラ <6971> 。以下日本特殊陶業 <5334> 、日本ガイシ <5333> 、村田製作所 <6981> 、パナソニック <6752> 、出光興産 <5019> と続きます。

 他に全固体電池の開発を進捗させている企業としては、グループ会社の技術を活用して電解質と電極を粉体の原料のまま成型する技術を確立している日立造船 <7004> や、富士通研究所と共同で高電圧・大容量の全固体電池の開発を進めるFDK <6955> [東証2]、酸化物系固体電解質を開発しているオハラ <5218> 、新たな有機ポリマー電解質材料でゲル状の電解質を開発した積水化学工業 <4204> 、電極構造体および集電体、セパレーターのすべてを樹脂で構成する新型電池の商業化を検討している三洋化成工業 <4471> などが挙げられます。

●オハラ、カーリットHDに物色の矛先

 特にオハラはその全固体電池実用化の前段階として、現行の電解液を使うリチウムイオン電池の性能向上に効果が見込めるガラスセラミック素材を利用した添加剤を独自開発しており、引き合いが旺盛。全固体電池でもキーカンパニーとしての位置づけが株価の頑強ぶりに反映されています。

 直近では、カーリットホールディングス <4275> が異彩の値動き。同社は固体電解質分野での研究開発に注力しており、全固体電池への取り組みにも思惑があり、悪地合いのなかで短期資金の攻勢がひと際目立っています。

●“全固体電池関連”穴株の新東工業はPBR0.7倍

 マーケットが現在ノーマークでここから注目の穴株としては、鋳造機械のトップメーカーでメカトロ関連設備分野にも展開する新東工業 <6339> が挙げられます。同社は「全固体電池を構成する層構造体の製造方法、製造装置及びその層構造体を備えた全固体電池」で特許取得済み(特許第5900343号)です。株価は25日移動平均線をサポートラインとする緩やかな上昇トレンドを形成していますが、需給面では売り残・買い残ともに枯れた状態にあり、PBR0.7倍台の時価は株価指標面からも上値の可能性を示唆しています。なお、本題とは外れますが有機EL関連としてのテーマ性もあり、材料株としての切り口は多彩です。

 このほか、土木鉱山用機械を手掛け、製錬や電子部品材料にも展開する古河機械金属 <5715> も全固体電池関連株として意外性を内包しています。同社は「リチウムイオン電池用固体電解質材料、リチウムイオン電池用固体電解質、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法」(特許第6139078号)のほか複数の特許を獲得しており注目されます。

(11月15日記、隔週水曜日掲載)

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