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【特集】窪田朋一郎氏【“アベノミクス高値”急接近、上昇どこまで続く】(1) <相場観特集>

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

―検証・年末高シナリオ、市場を覆う“高揚感”そして―

 米国経済を筆頭とする世界景気拡大の流れを背景に東京株式市場ではリスクを取る動きが顕在化している。3連休明けとなった10日、日経平均株価は目先高値警戒感からの利益確定売りを飲み込むかたちで、引き続き力強く上値を指向する展開となった。アベノミクス高値急接近で盛り上がる高揚感。目先上値の重さも程良いブレーキとして相場の持続性を高める方向に作用している。秋相場も佳境入りとなるなか、年末高のシナリオに向けた展望が開けるのか否か、第一線で活躍する市場関係者に話を聞いた。

●「上値指向継続ながら短期調整も視野」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

 東京市場は非常に強い値動きを続けている。10日は衆院選公示日であるとともに、北朝鮮の朝鮮労働党の創建記念日で何らかの軍事的威嚇行動が懸念されたが、何事もなく通過したことから、ショートポジションを積み上げていた向きの買い戻しが全体相場に浮揚力を与える結果となった。注目された米9月の雇用統計は7年ぶりに非農業部門の雇用者数が減少に転じたが、米南部のハリケーンの影響ということでマーケットは慌てる様子もなく、世界的な経済の強さが市場コンセンサスとなるなか、リスクオンの潮流が株式市場に資金誘導する構図が鮮明となっている。

 リスクオン相場の中軸を担う米国株市場において、マーケットの注目ポイントは次期FRB議長人事といえる。来年2月に任期切れとなるイエレン氏続投の可能性がないわけではないが、現時点で選出の可能性が高いとみられるのはパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事の2人。前者の場合はイエレン氏と同等のハト派路線が予想され株式市場にはポジティブだが、後者の場合はタカ派的なイメージが強く、波乱的な地合いを招くことも考えられるため注意が必要だ。

 また、米国以外ではECBも来年以降はテーパリング(資産購入の調整)に動く公算が大きく、世界的に超金融緩和環境からの出口戦略がいよいよ意識される。日本では日銀の黒田総裁が低金利政策の継続を再三強調しているとはいえ、実際に国債買い入れ額は減少しており、ステルス・テーパリングの動きをみせている。世界の株式市場は業績相場の色彩で当面は強い動きが続くであろうが、来年以降、中長期的な観点からは転機が近づいているということは念頭に置いておきたい。

 年末に向けて日経平均はアベノミクス高値である2万868円をクリアして2万1000円台を捉えそうだが、短期的には調整がいったん入る可能性もありそうだ。その場合、下値は1万9500円近辺がメドとみている。ただし、前述したようにFRB議長の人事がカギを握っており、仮にウォーシュ元FRB理事に決まった場合、米株安に連動して株価の調整はもう少し深くなるケースも考えられる。なお物色対象として有力視されるのは、日米金利差を背景に為替が円安に振れやすい環境であることを考慮して、引き続きトヨタ自動車 <7203> などをはじめとする自動車株をマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券 シニアマーケットアナリスト。松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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