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【特集】空き家が日本を埋め尽くす…国交省、対策本気で関連株に商機 <株探トップ特集>

LIFULL <日足> 「株探」多機能チャートより

―立ち上がる“空き家解消”ビジネス、参入企業の本命は?―

 今後予想される継続的な人口減少に伴って、全国規模で増加が予想されるのが空き家だ。政府も市町村の役割を強化した新たな制度を導入することで、関連情報を積極的に収集し、土地や建物の売買を積極化、有効活用の促進を推進する構えだ。民間でも不動産や建設に関連した企業を中心に、空き家解消に向けたビジネスへの参入が相次いでいる。

●2033年に空き家率は30%に拡大するとの試算も

 総務省の住宅・土地統計調査(2013年)の試算によると、人口が減る一方で、新しい住宅供給は進み、すでに全国の空き家は約820万戸(空き家率は13.5%)に達している。今後、人口減少への対応や空き家の活用、中古住宅流通市場の整備が進まない場合、野村総研のリポートでは33年には全国で空き家が約2150万戸、空き家率は30.2%にまで拡大すると試算している。空き家増加への対策はもはや待ったなしの課題となっている。

●環境、防犯、防災面での懸念など多方面に悪影響

 空き家増加のもたらす悪影響は多方面にわたる。まず問題なのは、建物の老朽化。家屋は入居者がいたほうが傷まないというのは自明の理。2つ目は植栽や雑草などによる景観の悪化。さらに、庭の雑草などの繁茂、樹枝の越境は景観面に加え、蚊やハエなど害虫の発生やネズミ、野良猫などの小動物が棲みつくなど衛生面でも周辺を含めて重大な環境悪化をもたらす。3つ目は防犯上からの懸念で、放火や不法侵入、ゴミなどの不法投棄といった犯罪誘発の温床になる可能性がある。4つ目は防災上の不安で、屋根や瓦、壁などが崩落または破損して、隣接住宅への被害や、道路を塞ぎ災害時のスムーズな避難を妨げるなどの恐れがある。

 国土交通省では、空き家・空き地などの流通活性化に向けた取り組みを積極化しているが、17年度は「全国版空き家・空き地バンクの構築」と「地域の空き家などの流通モデルの構築」を実施している。具体的には、(1)需給のミスマッチの解消や新たな需要の創出などにより、空き家・空き地などの流動性を高め有効活用を推進する。(2)全国の空き家・空き地などの検索が可能な全国版空き家・空き地バンクの構築、空き家・空き地などの流通促進のため、先進的な取り組みを行う団体などへの支援を行う――という方針を掲げている。

●LIFULLは「空き家バンク」で自治体からの参加登録開始

 LIFULL <2120> は、国土交通省「全国版空き地・空き家バンクの構築運営に関するモデル事業」の一環として構築を進めている「LIFULL HOME'S空き家バンク」で、7月19日から自治体による参加登録の受付をしている。あわせて、一般社団法人全国空き家バンク推進機構と、「LIFULL HOME'S空き家バンク」の普及推進を目的として提携した。

 LIFULLのサービスは、自治体が募集する空き家、空き地と、それらの利活用を希望するユーザーをマッチングする情報プラットフォームだ。国土交通省が推進する「全国版空き地・空き家バンクの構築運営に関するモデル事業」の実施事業者としてLIFULLが運営するもので、自治体に向け空き家、空き地の情報を登録、編集、公開する管理システムを無償提供している。

●三井住友トラストは総合的なコンサルティングを強化

 空き家問題についての利活用を促進すべく三井住友トラスト・ホールディングス <8309> 傘下の三井住友トラスト不動産は、自社が窓口となる住宅保有者へのサービス提供している。空き家所有者の想定される各種ニーズへの対応、中古住宅の流通促進やリフォーム受注、セキュリティーや見回りサービスをはじめ、所有者への総合的なコンサルティングなどを強化している。三井住友トラスト不動産では「空き家所有者の相談窓口は、“空き家トータルサポート”として当社が担当し、ニーズに応じて積水ハウス <1928> 、ALSOK <2331> を紹介する形で対応している」(営業推進部)としている。

●インベスCは民泊向けリノベーションサービス相談開設

 さらに、空き家を放置する事態を少しでも防ぐために、リノベーションの動きが加速することになりそうだ。アパート経営プラットフォーム「TATERU」をWeb展開しているインベスターズクラウド <1435> は、民泊向けリノベーションサービスも開始している。一般の住宅を宿泊施設として活用する「民泊 」のルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊法)が今年6月9日に成立したのを受け、民泊促進に向けた動きが活発化するなか、今後の需要拡大が期待されている。同社では「中古マンションのリノベーションサービス“スマリノ”のなかに、空き家対策としての民泊向けリノベーションサービスに関する問い合わせ窓口を開設し、物件探しから施工企画などの相談を受け付けている」(広報課)としている。

●国交省の「賃貸カスタマイズ」推進で東急不動産HDに注目

 一方、国土交通省は、空き家を賃貸物件として流通しやすくするため、借り主のDIYを促す「賃貸カスタマイズ」を推進している。従来、賃貸住宅の場合、借り主は退去時に「原状回復義務」を負うため、壁に釘1本打つのもご法度というのが常識だった。ところが最近は「改造OK」で、原状回復を求めないケースも増えているという。

 そこで注目なのが借り主のDIYだ。東急不動産ホールディングス <3289> 子会社の東急ハンズは、同社の女性スタッフによる「ハンズ女子DIY部」を結成し、専用サイトをオープンするなど、女性向け需要開拓を積極化している。これは、自宅のインテリアなどを自分の手でカスタマイズしたいという女性のニーズが高まっているのに対応したもので、空き家のリフォームにも活用できそうだ。

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