【特集】「人気爆発、『ポテトチップスクリスプ』が売れるわけ」カルビー・新規ポテトチップス課課長に聞く!<直撃Q&A>
御澤健一 マーケティング本部ポテトチップス部新規ポテトチップス課課長
Q1 なぜ今、成型ポテトチップスなのですか?
御澤 ポテトチップスには、生のジャガイモをスライスして揚げるタイプと、ジャガイモを一度粉末にして、丸形に整えたうえで揚げる「成型ポテトチップス」があります。この成型ポテトチップスの市場は、ここ数年、目を見張るようなヒット商品が出ずに市場規模も200億円前後と停滞していました。
当社が事前に行ったアンケートでは、既存の成型ポテトチップスの購入理由で最も多かったのは「携帯に便利だから」というものでした。確かに、筒形の容器に入っているので携帯に便利であることは大きな利点ですが、一方で「味へのこだわり」を理由に購入する人の割合が思ったほど多くはありませんでした。そこで、品質にこだわり抜いた商品を出せば必ずヒットするという確信を得ました。
Q2 後発ならではの大変さがあったのでは?
御澤 後発メーカーであるからには当然、味だけではなく、食感やパッケージ、売り方まで全てにおいて先行品を上回らなければいけません。
まず味ですが、通常、成型ポテトチップスはジャガイモを一度粉末状にした生地に調味料を練り込みます。ただ、それだけだと味の出方が弱いので、食べた時にパンチが出るように、練り込みに加え、揚げた後にも調味料を上がけして味付けをするようにしました。また、当社のポテトチップスの特徴でもある「パリッとした食感」が差別化のポイントになると考え、揚げ方にも独自の工夫を盛り込んでいます。
さらに、容器である筒においても、カルビーらしい色を発色させるために、包装紙の素材にもこだわりました。フタについてもリキャップ機能が高い樹脂製にするなどこだわりを詰め込んでいます。そして売り方に関しては、スーパーなどで売り場を作ってもらえるように筒型専用の什器で展開する工夫も行っています。
Q3 一度、発売時期を延期したのはなぜですか?
御澤 開発に取り組んだのが2011年で、2年後の13年に、当時開発した製品をドイツの会社にOEM製造してもらい試験販売しました。その結果も上々だったので、15年春に新宇都宮工場に専用のラインを導入し、同年8月の発売に向けて生産に乗り出しました。しかし、量産に向けて長時間のテスト製造を行うと、形や味付けにバラつきが出てしまう。そこで、安定生産できるまでさらにテストと試行錯誤を合計500時間以上繰り返し、ようやく16年8月に発売することができました。
Q4 どういった方がよく買っていますか?
御澤 メーンのターゲットとしているのは30歳代から40歳代のお子さんのいる主婦の方です。成型ポテトチップスは形が整っていて、筒状の容器に入っているので、食べこぼしが少なく、食べかけでも保存しやすいという利点があります。そこで、お子さんに買い与える主婦層がメーンの購買層となります。ただ、コンビニエンスストアでは男性のお客様にも買っていただいていますし、職場やアウトドアのおやつとして買われる方も多いようです。
Q5 今後の展開は?
御澤 昨年8月1日の北海道での発売を皮切りに、8月22日に東北・信越地区で、10月10日に関東地区でそれぞれ発売し、今年1月30日には中部地区へと販売エリアを拡大してきました。北海道での発売から半年以上が経ちますが、勢いはまだ衰えていません。さらに、未発売のエリアのお客さまから「早く発売してほしい」という声も多くいただいています。当然、今後は西日本に向けて販売エリアの拡大を図る予定ですが、時期は未定で、生産体制を整えながら展開していく方針です。
当面の目標として、3年後の2020年度に「ポテトチップスクリスプ」の販売目標を100億円としていますが、これを達成するためにも今後は、エリア拡大やブランドのプロモーションなどを行っていく予定です。
(聞き手・浅野尚仁)
<プロフィール>(みさわ・けんいち)
1998年カルビー入社。入社後3年間営業職を経験した後、「ポテトチップス」ブランドのマーケティングに携わる。2011年から「ポテトチップスクリスプ」の商品企画・ブランディングを担当。同商品を発売するまで、時には工場のある栃木県宇都宮市に数カ月泊まり込みで品質の安定を図るなど、開発・生産担当者も驚くほどの“現場主義”。
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)