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2017年03月08日20時00分

【特集】ピンポイント“がん細胞”破壊BNCT、次世代治療「最前線」銘柄 <株探トップ特集>

住友重 <日足> 「株探」多機能チャートより

―「先駆け審査」指定で早期実用化に道筋、注目企業の取り組みを追う―

 がん細胞を選択的に破壊できる次世代の放射線治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の早期実用化への期待感が高まっている。その理由は厚生労働省が2月28日に、世界に先駆けて国内患者に提供することを目指す「先駆け審査指定制度」に指定し、優先審査などの優遇措置が受けられるようになったからだ。これにより薬事申請・承認が早まる可能性が出てきており、関連企業から目が離せなくなってきた。

●BNCTは身体への負担が少ない治療法

 BNCTとは、体内に注入したホウ素薬剤をがん細胞に取り込ませて、体外から中性子線を患部に照射し、その際に生じるホウ素と熱中性子との核分裂反応を利用してがん細胞を選択的に破壊する放射線治療法の一種だ。従来の放射線治療では、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため副作用の恐れがあるが、BNCTはがん細胞のみをピンポイントで破壊することができるため、身体への負担が少ない治療法として注目されている。

 BNCTはこれまで、京都大学原子炉実験所、大阪大学、大阪府立大学を中心とした共同研究により推進され、日本が世界を牽引している。2012年秋には世界初の治験が脳腫瘍および頭頸部がんを対象に開始され、14年春からは放射線治療歴を持つ切除不能な局所再発頭頸部がん(扁平上皮がん)や局所進行頭頸部がん(非扁平上皮がん)の治験も始まっている。

●ステラケミファと住友重は京大と臨床試験

 BNCTの普及にはいくつかの課題があり、そのひとつは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素化合物をつくる技術。核分裂反応を起こしやすいのはホウ素の中でもボロン10と呼ばれるもので、これを自然界のホウ素から高濃度で濃縮することが必要となる。このボロン10の濃縮プラントを保有しているのがステラ ケミファ <4109> で、同社はこの濃縮技術を基にBNCT用ホウ素薬剤の研究開発を進め、07年にはステラファーマを設立。ステラファーマは「現在、BNCT用ホウ素薬剤『SPM-011』の薬事承認を目指し準備を進めている」(管理部)としている。

 もうひとつの課題は、中性子を発生させる装置の問題だ。従来は中性子を利用するためには原子炉を使用しなければならず、非常に大掛かりな設備が必要とされていた。これを解決したのが住友重機械工業 <6302> で、同社は陽子がん線治療システムなどのノウハウを活用して小型のBNCT用加速器を開発済み。12年秋から京都大学原子炉実験所やステラファーマと共同で加速器を用いた臨床試験を開始し、16年夏には第2相臨床試験に移行している。

●リゾートトラの関連会社は国立がん研究センターとタッグ

 病院での効率的なBNCT運用を可能にするためには中性子のエネルギーを低下させる技術が重要で、これを可能にするのがリゾートトラスト <4681> の関連会社であるCICSが持つリチウムターゲットシステムとモデレーター(減速材)システムだ。CICSは11年から国立がん研究センターなどと小型BNCTシステムの共同開発を進めているが、この取り組みには昭和真空 <6384> [JQ]が真空装置メーカーとして培った各種技術が生かされているほか、中性子減速材として日本軽金属ホールディングス <5703> が作成したフッ化マグネシウム焼結体が使用されている。

●助川電気やロームにも注目

 このほかでは、助川電気工業 <7711> [JQ]に注目したい。同社は12年2月に、東京工業大学原子炉工学研究所と共同で、陽子加速器によるBNCTに利用可能な液体リチウム型中性子発生ターゲットの開発に成功したと発表。液体リチウム型ターゲットには、固体型ターゲットの場合に問題とされる、照射損傷による時間的劣化がないため、長寿命と安定した冷却性能が得られる利点がある。

 また、ローム <6963> は16年11月、京都府と京都府立医科大学、福島SiC応用技研(福島県・楢葉町)とBNCTに必要な治療機器を共同で研究開発することで合意したと発表。機器の開発にロームが最新のSiC(シリコンカーバイド)半導体技術を提供するとともに、技術支援を行うとしている。

株探ニュース

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