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【市況】S&P500 月例レポート ― 空前のトランプ政治ショーと続く楽観 (1) ―

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●交渉か、それともつぶやくか

 ウォール街のニュースマニアには十分過ぎるほどの1ヵ月だったのではないでしょうか。トランプ新大統領の動きは電光石火のスピ―ドで、国内外でさまざまな反響を引き起こしています。M&Aは活発化し、企業各社からは決算が発表され、1896年5月26日に40.94ドルの初値を付けてから120年の歴史を持つダウ工業株30種平均(NYダウ)は、史上初めて2万ドルの大台を突破しました。S&P500指数も終値で過去最高を3回更新し、終値では戻りましたが、取引時間中に一時2300に達しました。

 1月を乗り切ったニュースマニアの皆さんに朗報です。1月に見られたイベントは今後も持続するとみられ、一部はさらに上向き(確かにNYダウには、決算スケジュールとかトランプ大統領の発表とか議会採決などの事実よりも、期待感が重要なのです)、2月も「最新ニュース」が満載の1ヵ月になると予想されます。

 しかも、そうした大量のニュースはボラティリティや恐怖とは無関係のものになると思えるでしょう。なぜなら、VIX恐怖指数は11.99という10年来の低水準で1月を終え、過去平均の19.7を大幅に下回るだけでなく、2016年末の14.04から14.6%低下し、大統領選投票日(2016年11月8日)の18.74と比べると36.0%も低下しているからです。

 投資家にとっての結論は、株価指数が過去最高値を更新、S&P500指数(銘柄間のばらつきはあります)が1.79%上昇(大統領選以降では6.51%高)、楽観論の持続、前代未聞の政治ショー(まるで映画のような)でした。

 トランプ大統領は、大半の閣僚候補者がいまだ承認されていないにもかかわらず、大統領令を発令して選挙期間中の公約の実現に乗り出し、米国のイベントはすぐに世界的イベントとなりました。ただし、閣僚承認は野党が反対の意を表明して遅らせていますが(通常の政治プロセスです)、全ての閣僚候補が承認される見通しです。

 最初の大統領令は雇用に関するものでした。これに対して企業はワシントンに出向き、表敬と成功祈願の意を表明するだけでなく、トランプ氏が規制緩和、環境規制の軽減、政府支出拡大で応えてくれることを期待して、雇用と投資の拡大を約束しました。企業だけでなく、労働組合もワシントンを訪れましたが(共和党大統領では異例のことです)、これは一般労働者と労組幹部の格差が拡大していることの表れと思われます(トランプ大統領は労働組合員から多くの支持を得ましたが、組合の方針は左派支持です)。

 支出拡大が話題となっているうちは全てが順調に進んでいましたが、トランプ大統領がメキシコ国境での壁の建設を命じる大統領令を発動すると、事態は複雑になり、さまざまな議論が起こり始め、メキシコ大統領は予定していたトランプ大統領との会談を中止すると発言しました。ところが、トランプ大統領がツイッターで会談中止は相互の合意であると述べ、報道の数日後には両大統領が非公式に会談することで合意したことから、トランプ氏について「偉大な交渉人」との呼び名が浮上しています。

 一方で、移民に関する大統領令は大きく報じられ、大規模な抗議行動が発生し、政府は対応に追われています。1月31日(午前8時)には、トランプ大統領が最高裁判事を指名しましたが、これまでの推移から考えると、この人選に関しても「活発な」議論が巻き起こると思われます。

※「空前のトランプ政治ショーと続く楽観 (2)」に続く。

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