【特集】大塚竜太氏【2万円再挑戦の行方、転機となるか日米首脳会談】(1) <相場観特集>
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
―来期実績とトランプ政策期待で浮上する「株高シナリオ」―
米国主導のトランプ相場に乗って水準を切り上げてきた東京株式市場だが、ここにきてやや気迷いが感じられる地合いとなっている。1月の米雇用統計は市場予測を上回り、米経済の強さが改めて確認されたが、トランプ保護主義政策と円高への警戒感が、これまでの楽観的な見方に水を差すムードとなっている。好調な国内企業業績は追い風ながら、今週10日に予定される日米首脳会談を前に、日経平均株価が描くトレンドは不確かな要素も多い。第一線で活躍するマーケット関係者のプロの視点を紹介する。
●「目先ボックス往来も来週以降は上値指向へ」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
東京株式市場は方向感のつかみにくい地合いで、地に足がつかず宙に浮いたような環境にある。第3四半期の堅調な企業決算が確認されているが、円安による収益への浮揚効果は事前に株価に織り込みが進んでいたこともあり、個別はともかく全体観としてそれほどポジティブに反応していないようにみえる。この時期になると既に投資家の興味は来期の企業業績に向かっており、その意味で今回の決算発表は材料として決め手に欠ける。
前週末に発表された1月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数増加が市場コンセンサスを上回ったものの、平均時給の伸びが減速しており、利上げの後ずれ要因になるとの見方も出ている。これは米株市場にとっては景気が強いうえに金融引き締め圧力も緩和され、好材料に相違ないが、為替相場ではドル高・円安思惑の後退につながることで、日本株にとってあまり心地よいものではない。また、トランプ大統領が連発する大統領令には投資家にネガティブなイメージを与えるものが多い。保護主義的な政策姿勢を強気一辺倒で打ち出し、強引な入国制限などの「米国第一主義」が物議を醸している現状は、しばらく封印されていた“トランプ・リスク”の再燃も意識されているようだ。
スケジュール的には10日の日米首脳会談を通過しないことには始まらない、というのは投資する側の本音であり、今週の日経平均株価は1万9000円大台を挟んだボックス圏での推移が予想される。1万8700~1万9300円というゾーンでの値動きを想定している。
しかし、来週以降は次第に視界が開けてくるだろう。日米首脳会談の通過に加え、国内企業の決算も来週前半で大方出揃ってくる。また、トランプ大統領の政策も、3月になればインフラ投資や大幅減税の話が政策の中軸に浮上してくる可能性があり、そうなれば日米ともに相場上昇の原動力となり得る。不評を買うことが多い大統領令署名も、直近では金融規制の抜本的見直しで日米の金融関連株が大きく買われたように、マーケットにフレンドリーな政策はしっかりと株高に反映されているのだ。日経平均は3月期末にかけてジリ高で2万円大台を窺う展開が予想される。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
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