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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆広がるトランプ暗雲が攪乱要因◆


〇トランプ氏巡る議論錯綜、市場の方向感攪乱〇

思ったより早くにクリントン氏の健康問題が表面化した。14日「肺炎」の結果を公表し、15日から大統領選に復帰するようだが、「トランプ大統領」を意識した意見が一段と錯綜する状況だ(ネットでは映像のクリントン氏に影武者説まで出ている。曰く、スリムさが異なる、シワが違う、カバンを掛ける肩が違う、等々)。グリーンスパン元FRB議長が「クレイジーな人たちで米国は弱体化する恐れ」(ただし、誰を指すかは言っていないが)と表明するなど、漠然とした暗雲観が多いようだ。日本国内でも、「年末円高論」などが出ているが、日米金融政策と言うより、「トランプ大統領」を意識した印象が強い。

12日、トランプ氏は米CNBCの電話インタビューで、「イエレンFRB議長が政策金利を低く抑えているのはオバマ政権から圧力を受けているからだ」と述べ、イエレン氏は「恥じるべき」とした。13日、英調査会社オックスフォード・エコノミクスは(トランプ大統領の場合)「2021年の米経済規模は基本シナリオから1兆ドル下振れする可能性がある」との試算結果を発表した。14日、大和香港のチーフエコノミストは「(トランプ氏は米貿易赤字縮小のため中国からの輸入品に45%の関税を掛けるとしているが)実行されれば中国の対米輸出は87%、4200億ドル縮小する」とした。関税率15%でも、「GDPは1.8%縮小する」とした。中国企業と言うより、多国籍企業を直撃すると見ている。

応援する意見も出ている。著名投資家カール・アイカーン氏は「規制緩和が推進され、景気に好影響を及ぼす。今後3年の米経済ははるかに見通しが良くなる」(トランプ氏はアイカーン氏が財務長官に適任と表明している)、資産運用会社ダブルラインのジェフリー・ガンドラック氏は13日の東京での講演で、「トランプ氏勝利」を予測し、「世界的な金利上昇は、市場が財政出動の足音を察知しているため」(内容は異なるが、トランプ氏もクリントン氏も財政出動を公約に掲げる)とした。

一方、NY州がトランプ財団の調査に着手、米メディアのトランプ批判は一段と熾烈さを増している(トランプ氏は私の敵はクリントン氏でなくメディアだと吠えている)。ノーガードの叩き合いの様相になる可能性もあり、混沌さを増している。11日、FBIは今夏の銃販売件数が異例の高水準に達し、年間最高を記録する可能性があると発表した(データの基になる身元照会件数は1998年からの実施)。米国民が最も不安感に包まれているのかも知れない。

トランプ氏の言動はブレていたり、辻褄の合わない面があり、今後軌道修正を繰り返す可能性がある。ただ、それも、現時点で明確なシナリオを描けない不透明感の要因と思われる。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/9/15号)

《TM》

 提供:フィスコ

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