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【特集】大塚竜太氏【9月相場、「ETF買いと円高」天秤の行方】(1) <相場観特集>

大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)

 週明け22日の東京株式市場は堅調に推移したが、勢いは今ひとつ。薄商いのなか、日経平均株価は1万6000円台で方向を決めあぐねている状況だ。下値では日銀のETF買いに対する期待があるものの、米利上げ時期を巡る思惑が錯綜するなか1ドル=100円近辺にある為替動向が気がかり。カウントダウンとみられた上値1万7000円突破がいまだ実現しないまま、夏枯れ相場といわれた8月も終盤に差しかかっている。秋口に向けた相場の地合いをどうみるか、第一線で活躍する市場関係者に意見を聞いた。

●「日銀と政府の“脱デフレ”両輪に期待」

大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)

 企業の4-6月期決算発表を通過し、全体相場は手掛かり材料に事欠く環境で商い低調を余儀なくされている。しかし株価は底堅く、閑散に売りなしを地で行く展開だ。

 今週のジャクソンホールのイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容を気にする声が多いが、利上げ時期を示唆するような、いわゆる言質をとられるような発言は出てこないとみている。日柄的にも微妙なタイミングであり、ジャクソンホールを境に為替市場でドルが上下どちらかに波乱含みに振れることは可能な限り回避したいというのが本音のはずだ。

 為替は当面の間、100円近辺で方向感が見えにくい状況が続きそうだ。ここから1ドル=99円ラインを大きく割り込んで円高が加速する可能性は低い。米国は次の利上げをいつ行うかの問題で、引き締めの流れは決まっている。対して日本は一段の緩和も辞さずという姿勢で、少し長い目でみれば円安方向に傾くだろう。

 9月20~21日の日銀金融政策決定会合での総括的検証では、マイナス金利政策の打ち止めや、ETF買い入れ枠の拡大についての定義的な見直しに言及するかもしれないが、株式市場にネガティブな話は出てこないと思う。

 日銀と政府の経済活性化への二人三脚体制が意味するところに、デフレ脱却を絵に描いた餅に終わらせないために銀行の国債偏重型のポートフォリオの組み換えを促している部分もある。日銀のETF買いでリスク資産である株式市場を支え、その間に政府は民間の活力を引き出し、企業の収益成長というかたちでリスク資産を抱えることの妥当性を生み出す。そうなれば、銀行も国債を日銀に売却した資金で融資を強化したり、株式のウエートを高めたりすることが自然の流れとなる。

 この試みが日の目を見るのはもう少し先になりそうだが、短期的な視点で見ても9月相場は上値追いに分があるとみている。日経平均株価の下値は深押ししても1万6000円近辺が下限と考えている。上値は1万7000円ラインを前に足踏み状態だが、早晩ここを通過点に1万7500円前後まで水準を切り上げるだろう。

 物色対象は今のリターンリバーサルの流れが継続し、円高デメリット業種に優位性がある。トヨタ自動車 <7203> など自動車や、コマツ <6301> などの中国関連、電機セクターではソニー <6758> が存在感を示しそうだ。このほか新日鉄住金 <5401> など鉄鋼も注目したい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。1988年~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。 2000年から東洋証券に入社し現在に至る。

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