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【特集】日本人「出入国審査」無人化へ、“顔認証”進む普及 <株探トップ特集>

NEC <日足> 「株探」多機能チャートより

―電子商取引への応用も始まり、市場の広がりに期待―

 最近、顔認証システムが急速に広がりつつある。「顔認証」とは、人間の体の特徴を利用する生体認証の一つで、顔の画像データから特徴を抽出し、あらかじめ保存されたデータと照合することで個人を特定するというもの。既に、パソコンやスマートフォンの生体認証として使われているほか、オフィスなどの入退室管理、コンサートでのチケットの本人確認などにも利用されている。また、空港などのセキュリティーや電子商取引への応用も始まりつつあり、今後の市場の広がりが期待されている。

●ハンズフリーで照合でき利便性でメリット

 今やスマートフォンの操作ロックなどにも指紋が利用され、身近になった生体認証だが、なかでも顔認証が注目されているのには、指紋認証などと比べて3次元で立体的に識別されるため、偽造しにくいことが理由として挙げられている。また、ハンズフリーで照合できることから、障がい者などにも利用しやすい点などもメリットとされている。

 このメリットを生かしたのが空港などにおけるセキュリティーで、政府では2020年までに、全国の主要空港に顔認証による本人確認のシステムを導入する方針。これにより、日本人の出入国審査を原則として無人化する一方、訪日外国人向けの入国審査官を増やし、審査の待ち時間短縮やテロ対策の強化につなげるとしている。

●世界1位の制度を誇るNECの顔認証技術

 このような空港などにおけるセキュリティー用の顔認証システムの導入は、英国やオーストラリアなどの一部の空港で導入が始まっているが、本格的な普及はむしろこれから。日本でも12年度以降、成田空港や羽田空港で実証事件を繰り返し行っており、サクサホールディングス <6675> 傘下のサクサやグローリー <6457> 、NEC <6701> などが参加している。

 なかでも顔認証システムのリーディングカンパニーといえるのがNECだ。同社の顔認証技術は、NIST(米国立標準技術研究所)が行う精度や処理速度の比較テストで、過去3回連続で仏モルフォや米3Mなどの競合を抑えて1位を獲得。これを手掛かりに既に40ヵ国以上に納入している。

 直近では、今年6月にも米のジョン・F・ケネディ国際空港に、入国審査用として顔認証システムを納入したが、さらに「現在、力を入れているのがウオークスルー顔認証システム。入国審査のように立ち止まった状態で認証するのではなく、歩いている人を認証するシステムで、現在開催中のリオ五輪でも、『Tokyo 2020 JAPAN HOUSE』内の記者会見場に導入され、メダリストの記者会見に参加するメディア関係者の入場管理に利用されている」(NEC広報)という。同社では、顔認証システムをはじめとする警備や保安関連の事業領域で、18年度に海外売上高を15年度比3.4倍の1420億円に引き上げる方針だ。

●「変なホテル」に採用されたグローリー

 サクサホールディングスも、NECと並ぶ関連銘柄の代表格といわれている。同社は14年に行われた羽田、成田両空港で行われた実証実験に参加。これを材料に株価が急騰した経緯もある。「現在のところ、製品化はしていないが、注力分野と位置付けている」(総務部)としている。

 また、同社同様に実証実験に参加したことのあるグローリーでは、顔認証システムが、長崎県のハウステンボスにある宿泊施設「変なホテル」全室に採用されている。部屋の前の顔認証機にルームカードをかざし、顔の登録を行うだけで、その後の入室をキーレスで行うことができ、宿泊者の利便性やコストの削減に寄与しているという。

●世界最小の顔認証モジュールを手掛けるテラプロ

 一方、顔認証システムのパーツで注目されているのが、テラプローブ <6627> [東証M]だ。同社では14年にNECから技術提供を受けて顔認証ソフトウエア・ライブラリ「TeraFaces」を開発。15年2月には世界最小の顔認証モジュール「TeraFacesモジュール」を発売した。小型の機器にも高性能の顔認証モジュールを容易に搭載できることから入退場管理などのセキュリティー分野だけでなく、福祉や介護分野、ロボットなどでの利用が見込まれている。

 さらに、モルフォ <3653> [東証M]は、デジタルカメラの顔検出オートフォーカスや自動肌色補正などに用いられる顔検出や顔パーツ検出機能を持つ組み込みソフトウエア「FaceSolid」を販売していることから、関連銘柄として挙げられることが多く、注目が必要だろう。


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