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【特集】電線地中化は加速する、関連株“電撃上昇”継続のワケ <うわさの株チャンネル>

ゼニス羽田 <日足> 「株探」多機能チャートより

―膨らむ政策期待、「古くて新しいテーマ」に長続きの芽―

 東京株式市場では、日経平均株価1万7000円大台回復を目前にあと一歩がなかなかに遠い。1万6900円台まで買われると、踵(きびす)を返すように反落して仕切り直す展開が続いている。下値では月平均5000億円という巨額の受け皿、すなわち日銀のETF買いが待ち構えており、大きく値を崩す気配もないが、一方で上値追いを先導する買い主体の不在が、全体相場の沈滞ムードを募らせている。

●電線と共同溝、地味でも派手に急動意

 そうしたなか、夏枯れ相場に一陣の風を送り込んでいるのが、局地的とはいえ個人投資家資金を中心としたテーマ買いの動きだ。19日の東京市場では「電線地中化関連」が電撃的な上昇パフォーマンスをみせた。

 同テーマの常連銘柄で、道路下に設置されるスロープホール(電線共同溝)で実績を持つゼニス羽田ホールディングス <5289> [東証2]が一時47円高の249円と急騰したほか、共同溝用鉄蓋などの製品を扱う虹技 <5603> も26円高の225円と13%の大幅高を演じた。さらに、電線ケーブルを収納する水路付小型コンクリートボックスを手掛けるイトーヨーギョー <5287> [東証2]は売り物薄で場中に売買が成立せず、ストップ高の150円高は886円で張り付く人気をみせた。

 このほか、地中化で必要となる電線も従来品から高付加価値品への代替が見込まれることから、沖電線 <5815> 、昭和電線ホールディングス <5805> 、東京特殊電線 <5807> 、タツタ電線 <5809> 、フジクラ <5803> など電線株も軒並み高に買われた。

●コイケノミクス!? 経済対策の意外な本命テーマ

 政府が打ち出した事業規模28兆円におよぶ経済対策については、今後その効果が徐々に発現することが予想され、株式市場でも「現実買い」の段階に移行する。そのなか、財政支出で賄われる分野としてインフラでは無電柱化(電線地中化)の推進は大きなテーマとなっている。先進国のなかで、日本の電柱の多さは諸外国と比較しても際立っており、ロンドンやパリなどの主要都市では既に100%電線地中化が完了しているのに比べ、東京23区での無電柱化率はわずか7%にとどまっているとされ、全国ベースでは1%にすぎないという現実がある。

 そうしたなか、国土交通省では今年度補正予算で数十億円の事業費を確保し電線の地下埋設工事などに充当するほか、財務省は財政投融資の仕組みを活用して、日本政策投資銀行を通じて民間(電力や通信会社など)向けに5000億円規模の融資を行う計画も伝えられている。国策主導での無電柱化投資の推進に、関連企業のビジネスチャンス拡大の可能性が改めて意識される状況にある。

 安倍晋三首相は全国的に電線を埋設していくことに意欲を示しているが、小池百合子新都知事も国会議員の時代から無電柱化の推進に積極的な姿勢を示しており、2020年の東京五輪開催というビッグイベントをひとつの目標地点に電線地中化投資が加速する可能性が指摘されている。「景観改善の問題だけではなく、警戒されている直下型地震などへの備えとして重い電柱を撤去するのは、防災の観点でも重要性は高い」(国内中堅証券)という声が強い。

 具体的には国と地方が道路下に共同溝を作り、民間がそこに電線を通す作業となる。そのため、電線メーカー各社に加えて、マンホール関連で電線共同溝を手掛けるゼニス羽田や虹技、イトーヨーギョーなどが同テーマの中軸銘柄として物色人気を集めているというのが、現在の東京市場の“構図”だ。

●マネーゲームのようで実は軒並み割安

 多分にマネーゲーム的な側面があることも否めない。ただ、動意している株をよくみると、ここ割安株が好まれる地合いにあって、有配企業でありながらPBRが1倍を大きく下回る銘柄が多いことに気づかされる。出来高流動性の薄さが解消されれば、必然的にPBRの水準訂正に向けた買いが集まりやすくなる。

 市場関係者は「買い主体は個人の短期資金。全体相場が手掛かり材料難の相場環境にあることで、値動きの軽い中小型株に物色の矛先が向かいやすいという側面もあった。しかし、電線地中化はここまで掛け声の割には進捗しておらず、株式市場にとって古くて新しいテーマとして長続きする可能性もある」(準大手証券ストラテジスト)と指摘する。また、「2020年の東京五輪開催がひとつのメルクマールとなって政策サイドを突き動かしていることは確かだろう。とすれば、(電線地中化工事が)今後加速するとともに、政策的なアナウンスもメディアを通じて断続的に出てくることが予想される」(同)という見解を示す。

 個別に業績面の吟味は必要だが、電線地中化関連は株式市場でも単発的な人気で霧消するようなテーマではないことだけは確かのようだ。

 関連銘柄としては他に、コンクリート二次製品を手掛ける日本コンクリート工業 <5269> や日本ヒューム <5262> 、電気工事会社の中電工 <1941> 、関電工 <1942> 、きんでん <1944> 、鉄塔だけでなく地中線・電線共同溝関連製品も手掛ける那須電機鉄工 <5922> [東証2]なども要注目となる。

(中村潤一)


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