市場ニュース

戻る
 

【特集】桂畑誠治氏【米雇用統計ショック! 乗り切れるか波乱相場】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 注目された米5月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数の伸びが3万8000人増と、15万5000人前後の増加を見込んでいた大方の予測を大幅に下回った。これを受け米6月の利上げは見送られる可能性が高まり、ドル円相場は急速に円高に振れたことで東京株式市場は再びリスクオフの波にさらされる格好となった。米国経済の実態と金融政策の見通し、さらに為替相場の動向を絡め、日本株市場の今後を市場関係者はどう見ているのか。識者の見解をまとめた。

●「米利上げは7月“言及”も9月を想定」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米5月の雇用統計について、非農業部門の雇用者数の伸びは、見た目には事前の市場コンセンサスの4分の1程度でマーケットにサプライズを与えたようにも見えるが、実際は米通信大手ベライゾンのストの影響が大きかったことに加え、建設業などでは3月の暖冬で伸びた反動が大きく顕在化したことも雇用者数の押し下げ要因となっており、額面通りに受け取る必要はないだろう。

 とはいえ、6月の利上げの可能性はほぼ消えたといってよい。そもそも1-3月期のGDP減速を受けて6月利上げは難しいというのが本来の見方だが、4月単月の統計が良かったことを受け、先走って利上げ観測をハヤしていた感がある。それが今回の雇用統計発表を受けて剥落したということだ。

 6月利上げが見送られることは米株式市場にとってポジティブ材料だが、注意しなければいけないのは、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が7月利上げの可能性について言及する公算が大きいことだ。これは米国株にとって向かい風となる。なお個人的には、利上げは9月にずれ込むとみているが、利上げ後の金融市場が安定していれば12月の利上げの可能性もあり、年内あと2回のシナリオは残されているとみている。

 一方、日米欧の株式市場にネガティブなインパクトを与える材料としては英国のEU離脱懸念もくすぶっており、国民投票が6月23日に行われる予定であることから、市場ではこの結果を見極めたいとのニーズが強い。万が一欧州連合(EU)離脱となれば、金融市場全般への影響が懸念され、株式相場の波乱要因となることは覚悟しなければならない。

 日経平均株価の当面の見通しについては、市場のセンチメントを大きく左右する為替の動向がカギを握る。年末にかけては米利上げの動きを織り込みながら実勢よりは円安に振れ、1ドル=110~115円のゾーンで推移するとみているが、足もとについてはややリスクオフモードで円高含みの動きとなるケースも考えられる。米国株市場は上値が重いものの4半期ベースで尻上がりに企業業績が良くなる傾向にあることを考えれば、大崩れすることも考えにくい。その場合、英国のEU離脱がないことを前提に、日経平均は6月末にかけ1万7000円台に乗せ、さらに水準を切り上げる展開を想定している。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。


株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均