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【特集】千原靖弘氏 【大波乱!中国経済・株式の実態に迫る】 <相場観特集>

千原靖弘氏(内藤証券 中国部 情報統括課長)

 年明け以降、中国株式市場の波乱が続いている。今年から導入されたサーキットブレーカー(取引一時停止制度)の相次ぐ発動が、市場参加者の不信を増幅させ、世界同時株安を誘発させる事態となっている。そこで、中国経済や株式市場の実態や今後について、第一線の専門家に聞いた。

●「中国サービス産業の堅調さに注目」

千原靖弘氏(内藤証券 中国部 情報統括課長)

◆介入観測あるが、元安は続く可能性も

 人民元の低下が不安視されている。現状の中国経済の成長を支えているのは、輸出よりもむしろインフラ投資や消費であり、人民元安が景気を直ちに向上させるとは言い難い。中国から米国などへの資金流出を恐れてオフショア市場で人民元安が続いている。昨年末から、人民元が米ドル、ユーロ、円、英ポンドからなる国際通貨基金のSDR(特別引き出し権)の構成通貨に組み込まれたことが災いしている面もあるようだ。中国人民銀行によるオフショア市場への介入観測はあるものの、今後も一定程度の元安が続く可能性はある。

 財新などが発表した昨年12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化が、今回の波乱相場のきっかけとされている。ただ、現状の中国国内総生産(GDP)に占める割合では、サービス産業の比率が製造業を追い抜いている。中国政府が公表しているサービス産業のPMIは16ヵ月連続で50%を上回っている。欧米や日本のアナリストや報道は、中国の成長エンジンとなってきたサービス産業への正当な評価が不足しているようだ。

◆サーキットブレーカーの失敗が投資家を慌てさせる

 中国の証券監督当局が7日夜に制度の一時停止を発表したものの、中国株式市場での混乱を招いた最大の要因は、「サーキットブレーカー」実施の失敗にある。本来、この制度は「投資家を落ち着かせる」ための制度だが、逆に「投資家を慌てさせる」結果となってしまった。

 昨年夏の株価急落への対応策として9月ごろから検討され、今年から導入された。上海・深セン両市場の主要300銘柄で構成する株価指数「CSI300」が、まず前日比で上限5%変動すると15分間の一時停止となる。その後再開して騰落率が7%に達すると、その日の売買が終了する。ところが、下落率が3%を超えてくると思惑から下げが加速し、5%でいったん止めても、市場心理の悪化から再開後も売りの勢いが増して取引終了に追い込まれてしまうという悪循環に陥っている。

 中国の株式市場では個別銘柄ごとに5%と10%の制限値幅が決まっており、例え全銘柄がストップ安となっても、株価指数の下落幅は8~9%程度とみられており、流動性を限定して不安感を招く制度では、株価の下落を助長させることになる。

(聞き手・冨田康夫)

<プロフィール>(ちはら・やすひろ)
中国株情報の発信に10年余り携わる。大学院修了後、上海市の復旦大学に2年間留学。ニュース配信会社の駐在員として広東省広州市に1年間赴任。中国の現地事情や社会・文化にも詳しい。

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