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2016年01月01日12時10分

【特集】井上哲男のストラテージ・アイ・スペシャル(2) <新春特集>

井上哲男(スプリングキャピタル 代表兼チーフ・アナリスト)

「アルゴができないことを」(後編)

スプリングキャピタル 代表兼チーフ・アナリスト 井上哲男

●20倍で頭打ちとなる全米PER

 日本市場においては、裁定残高や信用残高といった需給に不安要素のない状態が2014年2月より続いている。このような時に結果的に説明力を増すのが、「テクニカル」と「市場PER」である。

 テクニカルは、何も凝ったものでなくても良い。25日移動平均乖離とRSI14日だけでも十分に中・短期の方向性を示唆する材料を与えてくれる。そして、より長期的な方向性を教えてくれるのが市場PERである。

 米国にFACTSET社という調査機関がある。この機関が算出している全米PERと欧州PER(私は単純にドイツとフランスの同社PERの平均を取っている)の間に、TOPIXと日経平均株価のPERがあるという状態が続いている。これは、グローバルマクロと呼ばれる手法のヘッジファンド等が、「割安・割高」、「行き過ぎ・出遅れ」といった観点から、アロケーションを大きく移すこととも符号する。

 3市場のPERの関係を大まかに書くと、全米PERマイナス2~3年=日本PER、日本PERマイナス1~2年=欧州PERである。つまり、全米PERが上昇しないと日本のPERも上昇(結果的に株価上昇を意味する)しないのである。

 2015年、ダウは7年ぶりにマイナス、S&P500も4年ぶりにマイナスとなるかもしれない状態である(12月28日段階)。しかし、全米PERを見れば合点がいく。全米PERはリーマン・ショック後、18倍まで上昇すると落ちることを繰り返してきた。これは市場がそれ以上のPER水準を許容しなかったということである。それが20倍水準にまで上昇したのが今年5月のこと。それ以降、市場は全米PERが20倍まで上昇すると、「それはまだ許容できない」と売りを浴びせ、18倍水準からは上昇するということを繰り返してきた。7-9月期に企業収益が落ち込んだ米国の現在の全米PERは19.7倍。決して割安感はない。

●16年予想レンジは1万7500~2万1000円

 「非高・製低」という言葉がある。製造業が不冴えながらも非製造業が好調という意味であり、消費が堅調なことも特徴として挙げることができる。米国、中国、日本、そして資源国である豪州やカナダにおいてもこの「非高・製低」という状況が続いているなか、米国は9年半ぶりに利上げを行った。

 しかし、忘れてはいけないのが、米国株式市場は製造業の市場であるということである。そのため、日米ともに7-9月の在庫の数字が本当に底入れを示唆したものであり、2016年1-3月期に再度、製造にバトンを渡せるのかを見極めなくてはいけない。そうでなくては、市場は全米PER20倍を許容しない態度を変えることはないであろう。

 日本の3月決算企業の来年度見込みは、45日ルールにより、5月15日までに出揃う。逆に言えばそれまでのPERは仮のPERである。証券会社の見込みが出揃い、2016年度の企業収益は8%~12%上昇し、日経平均の高値予想でも2万4000円という強気な意見も聞かれるが、弊社は消費増税前の駆け込み需要を加味しても5%程度の増益と予想している。

 これと、前述のPERスプレッドを考慮した2016年の日経平均レンジ予想は、1万7500円から2万1000円と証券会社やシンクタンクの見込みよりも低いものとなっている。昨年末に発表した今年の高値予想は2万0800円。ほぼ同じ数字である。

2015年12月29日 記

※「井上哲男のストラテージ・アイ・スペシャル(1)」から続く


井上哲男
上智大学卒業後、国内保険会社での運用部門を経て、UAMジャパン・インク チーフ・ストラテジスト兼株式運用部長に転身。その後、プラウド投資顧問、QUICK、MCP証券などでストラテジストを勤め、2014年3月よりスプリングキャピタル株式会社代表。

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