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【特集】桂畑誠治氏 【米利上げ後の市場を読む】 (3) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米連邦公開市場委員会(FOMC)で、約9年半ぶりとなる利上げが決定した。これまでの利上げ時期を巡る不安感が払拭されたことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が声明文で、今後の利上げを慎重に実施すると表明したことをひとまず世界の株式市場は好感した。そこで、米国の利上げスタートを受けて米国株式市場はどう動くのか、今後の見通しを第一生命経済研究所 主任エコノミストの桂畑誠治氏に聞いた。

●「緩やかな経済成長で利上げ継続」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米国株式市場では、最大の懸念要因であったFRBによる金利の正常化開始が決定されたことで、不透明感が薄れたようだ。

 12月15、16日のFOMCで、FRBは政策金利であるFFレート誘導目標レンジを0.00~0.25%から0.25~0.50%に、直前の市場予想通り25bp引き上げることを決定した。利上げは06年6月以来、9年半ぶり。金融危機による打撃を概ね克服したとFRBは判断した。一方で、償還債券の再投資の継続を決定したうえ、バランスシートの水準に影響する再投資は、FF金利の水準の正常化がしっかりと軌道に乗るまで継続すると想定しているとし、早期のバランスシート縮小への懸念を後退させた。

 9年半ぶりの利上げ決定ということもあり、声明文、イエレン議長の記者会見ともに、金融市場に配慮したハト派的な内容だった。25bp引き上げても、金利水準は低く緩和的であり、引き続き経済成長を支援すると強調したほか、今後の利上げは慎重なペース(年4回、合計1%の利上げ)が適切になると想定していると改めて指摘したうえ、FOMCの予想通りにインフレ率が上昇しなかったり、労働市場が引き締まっても目標を下回っている状況が変わらなかったりすれば、確実に利上げを休止することを指摘した。

 ただし、現時点でFF先物は16年に2回程度の利上げしか織り込んでいない。また、FRBは今後の利上げペースに関して基本的にはデータ次第としていることから、金融市場のボラティリティの高まりは避けられないだろう。

 16年のファンダメンタルズでは、金融政策の方向性の違いによるドル高、ドル高や需給バランスの変化に伴う低い原油価格などを背景に米国の輸出や設備投資の伸びが抑制されよう。一方で、雇用・所得環境の改善による個人消費、住宅投資の拡大が見込まれる。家計部門を中心とした内需主導での緩やかな経済成長が予想される。インフレ率は、世界的なマイナスの需給ギャップの残存、ドル高傾向などを背景に、緩やかな上昇にとどまる公算が大きい。

 このような中で、FRBは年に4回程度の利上げを実施すると見込まれる。ただし、FRBはリスクコントロールを重視した非常に慎重な政策スタンスを継続するとみられ、米国株の調整幅が拡大すれば、利上げペースに影響する旨の発言がFRB関係者からだされ、一時的な落ち込みにとどまると予想される。また、16年は利上げ局面だが、トップダウン、ボトムアップでも企業収益は前年比プラス8%程度が見込まれることから、業績相場が期待でき株の緩やかな上昇が予想される。

 16年の米国株見通しでは、NYダウが下値のメド15370.33ドル、上値目標19000ドル。S&P500は1867.01が下値目処、2230を上値目標とする。

<プロフィール>
(かつらはた・せいじ)第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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