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【特集】あの株が「1億総活躍社会」の恩恵を受けるワケ <株探トップ特集>

ツクイの日足チャート 「株探」多機能チャートより

―「介護離職ゼロ」予算1400億円が向かう先―

●「介護離職ゼロ」に向け施設の整備を促進

 近日中にも閣議決定される予定の2015年度補正予算案の概要が徐々に明らかになりつつある。

 3.5兆円ともいわれる予算規模のうち、安倍晋三政権が目玉としている「1億総活躍社会」の実現に向けた対策には1兆円以上が計上される見通し。低所得の年金受給者に対する臨時給付金の支給や、「希望出生率1.8」実現のための保育所の整備前倒しと保育士の確保、一人親家庭への支援なども盛り込まれるが、特に注目されているのが、「介護離職ゼロ」に向けた介護施設の整備や人材確保に向けた予算で、その規模は1400億円(推計)に上るといわれている。

 介護施設の整備に関しては、11月26日にまとめた政府の緊急対策で、特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設を2020年代初頭までに新たに50万人分整備する方針を打ち出している。当初、厚生労働省は40万人分とする案を示していたが、安倍首相が上積みを指示した経緯がある。これを受けて特養のほか、見守りや生活相談などのサービスを提供する「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の整備が今後急ピッチで進むことが予想されている。

●サ高住などにも注力するツクイ

 有料老人ホームは全国に9941(届出済、10月31日時点、厚生労働省調査)あり、ベネッセHD <9783> 傘下のベネッセスタイルケア、メッセージ <2400> [JQ]、ワタミ <7522> 、ニチイ学館 <9792> などが施設数・売上規模で上位を占めているが、政府による介護施設整備の促進策で恩恵を受けるのはこうした企業ばかりではない。

 在宅介護を主力としながらも介護施設展開にも力を入れているツクイ <2398> は、デイサービスの事業所数で日本一を誇るが、11月時点で有料老人ホーム27ヵ所、サ高住8ヵ所を展開するなどデイサービス以外の施設展開にも注力している。今年3月には調剤薬局を開業し、医療機関との連携が強化されており、「終の棲家」としての展開強化が注目されている。

 また、今年6月に発表した中期経営計画でサ高住事業で18年3月期まで15年3月期比2ケタの伸びを見込むケアサービス <2425> [JQG]なども伸びしろは大きいだろう。

●異業種からの参入組で注目されるシノケンG

 一方、異業種からの参入として注目されるのがシノケンG <8909> [JQ]だ。13年に既存の若年層向け賃貸マンション・アパートの空き室を利用した「楽らくプラン」を開発し、高齢者ビジネスをスタート。その後サ高住の直接運営やデイサービス併設による事業領域の拡大、認知症などの高齢者を受け入れるためのグループホーム運営に参入し、ほぼすべての領域でサービス提供を可能にしており、今後の事業展開にも期待が持てる。

●介護関連の人材ビジネスで優位に立つSMS

 「1億総活躍社会」で、介護施設の整備が盛り込まれたが、「事はそう簡単ではない」(特養関係者)のが現状だ。特に深刻なのが人手不足で、高齢者の虐待事件が起きるなど暗い話題が先行し、人材難が深刻とされている。

 厚労省の推計によると2013年度で全国に171万人いた介護職員は、25年度には253万人必要になるという。将来の話だけでなく、現時点でも人材難は問題で、介護施設が予定通りオープンできないといった例も珍しくはない。

 人手不足を解消するため、前述のツクイをはじめ介護に特化した人材紹介や人材派遣などの市場が活性化しつつあるが、同分野で先行しているのがエスエムエス <2175> だろう。ケアマネージャー向け人材紹介の「CJBケア人材バンク」事業に加え、介護職向け求人情報サイトの「カイゴジョブ」などを展開し、多くの介護事業者や従事者を囲い込んでおり、介護業界における求人難の深刻化でメリットを受けそうだ。同様に介護業界向け人材派遣・紹介を手掛けるヒューマン <2415> [JQ]にも注目したい。

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