【特集】急騰銘柄の宝庫、低位株「値千金」の戦略 <株探トップ特集>
サカイオーベの日足チャート 「株探」多機能チャートより
―投機資金を引き寄せる需給相場の世界―
12月第1週、師走相場入り早々に東京株式市場は青天の霹靂というべき下げに見舞われた。欧州中央銀行(ECB)理事会では大方の予想通り追加緩和が発表されたが、実施されることについては事前にほぼ100%に近いかたちで相場に織り込まれており、その内容が市場期待に届かなかったことがネガティブに作用した。
ただ、こうしたショック安の局面は絶好の仕込み好機となるケースが多いことを過去の相場は教えている。市場関係者の間でも冷静な見方を示す向きが多く、東証1部の騰落レシオなどテクニカル面からやや過熱感があったマーケットに、買い場を提供した可能性が指摘されている。
●株価変身期待の宝庫
ここで、ずばり狙ってみたいのが材料性に富む低位株の一群だ。
12月は外国人投資家の動きが鈍ることで、市場エネルギーは減少傾向となる。国内勢に目を向けても主力株や高収益の値がさ株は機関投資家のポジション調整の対象になりやすく、持ち合い解消の売りも想定されることから上値が重いケースが多い。対して機関投資家の売り圧力が乏しい低位株は相対的優位にあり、短期急騰型の銘柄が多いことも魅力となる。
また、全般波乱相場の下値に対する底堅さという点でも、株価が低い位置にある銘柄ほど強みを発揮しやすい。今回もECB理事会を受けた「ドラギショック」に対してその強みがいかんなく発揮されている。
例年、年末相場では、個人投資家の土俵である低位株や新興市場銘柄への注目度が高まる傾向にあり、今回もそのセオリーが生きる展開となりそうだ。マザーズなど新興市場銘柄はひと足先に株価を急動意させているものが多く、ここは、まだ出遅れ感のある低位株に照準を絞るのが“値千金の戦略”といえるのではないか。
●市場の熱視線を浴びる
まず、“現在進行形”で市場の熱視線を浴びている銘柄にスポットを当ててみたい。
大日塗 <4611> は業績の増額修正を受けて10月30日にマドを開けて上放れ、その後190円近辺でのもみ合いを経て一気に大勢2段上げの動きをみせている。高採算の付加価値製品が収益に貢献する一方、ナフサ価格下落に伴うコスト低減効果が利益に寄与している。実質的に青空圏を舞う展開だが時価230円近辺は依然として値ごろ感があり、PERも10倍近辺で上値余地は大きい。
サカイオーベ <3408> も強い動きで注目を集めている。航空機向けなどで成長が見込まれる炭素繊維分野での開発力に株高の思惑を内包している。本業の染色加工事業も婦人衣料やスポーツ衣料向けで好調な需要を取り込んでおり、今3月期は最終2ケタ増益予想にある。
大倉工 <4221> は売買高こそまだ盛り上がりを欠いているが、株価は既にエンジンがかかっており、新値圏で頑強な動き。スマートフォン向け光学フィルムなどで高水準の需要を取り込んでいるが、今後は有機EL関連としても見直されそうだ。筆頭株主はM&Aに積極姿勢が伝わる住友化 <4005> であり、PBR0.6倍弱は割負け感が際立つ。住友化が有機EL素材に積極投資を進めた場合、その恩恵は同社にも及ぶ。
●待ち伏せ買いも効果的
一方、低位株投資では、今はまだ雌伏期にあるが、人気化素地を持っている銘柄を探し出すのも必須の戦略だ。
共栄タ <9130> の190円を軸としたもみ合いは狙い目となる。ばら積み船市況の低迷が目立っているが、一方で原油安を背景に石油タンカー市況は好調で運賃は高止まりしている。北半球は冬場の需要期を迎え、今の原油安は石油タンカー市場において、リーマン・ショック以降で、最強の追い風環境となっている。
三井松島 <1518> の戻りにも注目したい。2013年には256円の高値まで買われた経緯があるが、時価はその半値水準。輸入炭を中心とする石炭商社だが、豪州に権益を持つ。今3月期は石炭価格の上昇や豪ドル安効果で営業利益は従来予想1億円から7億円に上方修正している。PBRは0.5倍台と割安感が強い。
日本化 <4092> は現在の株価は中段で音無しの構えをみせているが、昨年11月から今年1月にかけての大相場はまだ記憶に新しい。今3月期40%営業増益予想で指標面でも割安感がある。エコカー普及ではリチウムイオン電池の需要が見込まれ、同社は電池の発熱に対する安全性を確保するうえで不可欠な添加剤ホスファゼンを手掛けている点が注目材料となる。
製パン向けなど食用油を主力とするミヨシ <4404> もジリ高基調。今12月期業績は下振れ観測があり、注意も必要だが、中期的に時価140円近辺の株価は水準訂正余地がある。TPP締結で関税率の高い小麦は実質的な関税である「輸入差益」が9年目までに45%削減される方向にあり、製パンメーカーに吹く追い風は同社にも順風となる。
●電子部材関連に突発高の芽
中外炉 <1964> は220円を下値サポートラインとする底値圏もみ合い。工業炉で首位に位置し、ハイテク分野の熱処理装置で強みを発揮する。有機EL関連株の一角でもあり、昨年も年末に急騰相場をみせた実績があるだけに要マークだ。
このほか、低位株では電子部材を手掛ける企業など“電機系”に突発的な上昇相場を演じる銘柄が少なくない。
可変抵抗器大手の帝通工 <6763> は3%近い配当利回りがあるにもかかわらず、PBRは0.5倍弱と解散価値の半値に放置されている。また、プリント配線基板を手掛けるキョウデン <6881> [東証2]やデバイス製造装置を手掛ける芝浦 <6590> などもマークしたい。
株探ニュース