【特集】自動運転20兆円市場の「穴株」 <株探トップ特集>
自動運転車をアピールするゴーン社長(10月28日、東京モーターショー)
―周辺株に一大商機、ターゲットは「レベル3」―
自動車のIT化が進展するなか、大手完成車メーカーをはじめ「自動運転車」の開発に向けて各社しのぎを削る現状が浮き彫りとなってきた。時流を映して、株式市場でも「自動運転車」が有力テーマとして不動のポジションを固めつつある。安倍晋三首相が2020年の東京五輪までに自動運転車の実用化と普及促進に前向きな姿勢を示しており、“国を挙げての本気”が同分野の成長期待を増幅させている。中期的にも先高ムード漂う関連株は是が非でも押さえておきたいところだ。
●ZMPのIPOも睨み、一大テーマに
自動運転車とは車載カメラやレーダー、赤外線センサーなどを使って周囲の状況を認識し、行き先を指定するだけで、ハンドルやアクセル・ブレーキを自動操作して目的地まで運ぶクルマのことを指す。渋滞や事故の減少にもつながり、高齢化社会が加速するなか時代のニーズとも合致する。その市場規模は巨大であり、完成車メーカーにとどまらず、カーエレクトロニクス分野に展開する電子デバイスや素材など関連企業の裾野も極めて広い。
ひと昔前は夢物語だった自動運転車が巷を走り回る時代がすぐそこまで来ている。現在、自動運転関連市場は5000億円規模にとどまっているが、オリンピック開催後10年を経た30年には20兆円規模の巨大市場が創出されるとの試算もあり、株式市場でも中長期かつ継続的に話題を提供する一大テーマに浮上する可能性が高い。
ロボットや自動運転技術を開発するZMPが来年のIPO予備軍の目玉でもあるだけに、目先的にも同テーマの物色人気は一段と盛り上がりをみせることになりそうだ。
自動運転は自動ブレーキなどの安全運転支援システムが起点となっており、これを「レベル1」として位置づけ、自動駐車システムなどの「レベル2」、さらに高速道路で自動運転を行い、ケースに応じドライバーが対応する「レベル3」、そしてドライバーの操作を全く必要としない完全自動化された段階が「レベル4」として分類されている。
●「レベル3」実用化に向け疾走する国内メーカー
既に安全運転支援システムは自動ブレーキシステム搭載のクルマが市場投入されており、メーカー各社は「レベル2」の自動駐車システムと「レベル3」の領域である高速道路などでの自動運転の実用化に向け技術開発を進捗させる状況にある。
完成車メーカーの取り組みも本格化しているが、当面の着地点として目指すのは「レベル3」である。
ITS専用周波数による運転支援システム「ITSコネクト」で先駆する業界最大手のトヨタ <7203> は、安倍首相が言及した20年の実用化を目標に、高速道路での車線変更を可能とする自動運転車を投入する構えにある。
また、日産自 <7201> は16年末までに混雑した高速道路など一定した車線に限定した自動運転車を発売する計画にあり、20年には交差点のある市街地など一般道路でも対応できるように“進化”させたクルマの実現を目指す。
ホンダ <7267> も同分野の取り組みに余念がない。20年までに、高速道路の入口から出口まで、合流、車線変更、衝突回避などに対応して自動走行する技術を確立させる計画にある。
さらに海外ではGMやフォード、BMWなどの大手メーカーに加え“異業種の巨人”も参入に虎視眈々だ。米グーグルは「レベル3」を飛び越え一気に「レベル4」の完全自動運転の実現に照準を合わせ、無人配送などの新たな価値創出に向けた青写真を描いている。
今後、技術立国日本を担う車載関連機器メーカーや電子部品・自動車部品メーカー、さらに大手電機メーカーなどに壮大なるビジネスチャンスが巡ることは必至だ。
●高精度3次元ナビで注目のアイサンテク
ここ株価の急動意で脚光を浴びるのがアイサンテク <4667> [JQ]だ。10月に内閣府の自動運転関連の調査業務を受託したことが株価急騰劇の皮切りとなった。自動運転車の実用化では高精度なデジタルマップが必要不可欠となる。そのなか、同社は名古屋大などと共同で高精度の3次元ナビゲーションシステム「3Dツインナビ」を開発し注目を集めている。
クラリオン <6796> は自動車の四隅にカメラを設置し上空から俯瞰するように画像を合成するアラウンドビューモニターで高実績を有する。次世代デジタル方式を駆使して自動駐車システム普及の一翼を担う。
パイオニア <6773> は早くから自動運転分野の技術開発に取り組み、海外企業とも協業を図るなど展開力で一日の長がある。直近では周囲を3次元で把握できる計測装置「3Dライダー」の開発で耳目を驚かせた。
●OKIに穴株妙味
赤外線センサーで圧倒的シェアを有するのが日セラ <6929> 。物体の存在判別や距離測定を行う車載用超音波センサーを手掛けており、自動運転分野で商機をものにする可能性が高い。
M&A効果で車載分野の需要取り込みが加速する日電産 <6594> も改めて見直されよう。自動運転支援関連の受注拡大で中期成長力に富む。
OKI <6703> はETCを活用して車両や歩行者の位置を検出する通信技術を開発、位置情報の精度を高める製品として18年度の投入を目指しており、穴株妙味がある。
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