【特集】脚光再び!「電子カルテ」関連 <株探トップ特集>
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―20年度に9割普及目指す!日本医師会が新会社―
日本医師会は11月4日付で、政府系ファンドの地域経済活性化支援機構との共同出資で新会社「日本医師会ORCA管理機構」を設立した。主な目的は医療ICT(情報通信技術)の高度化を進めることとあって、株式市場では電子カルテ関連銘柄が再びスポットライトを浴びそうだ。
●日本医師会が普及に向けて新会社
日本医師会は、事務作業の効率化とコスト軽減を目指し医療現場のIT化プロジェクト「ORCA(オルカ)プロジェクト」を推進。新会社はこのプロジェクトを引き継ぎ、日本医師会のシンクタンクである日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が手掛けてきた電子レセプト(診療報酬明細書)ソフトウエア「ORCA」を、電子カルテの普及に向けた基盤として利活用することを目標に掲げている。
電子カルテとは医師が患者ごとに作成する診療録を紙から電子媒体に置き換えて記録・保存したもので、導入によるメリットはさまざまある。例えば、毎月のレセプト提出作業の時間短縮が可能になるなど効率化が図れるほか、画像診断支援システムや検査システムなどと連携し患者に関するデータを一元管理することが可能。また、マイナンバーを活用したかたちで医療情報の番号制度が導入された場合、番号をより有効に活用するためには電子カルテなどの電子化が必要不可欠となる。
●中小病院での普及に遅れ
厚生労働省によると、電子カルテの2011年度時点での普及率は400床以上の大病院で57%となっており、同省ではこれを17年度に80%、20年度に90%まで引き上げる計画。一方、一般病院全体では22%(11年度)にとどまっており、中小規模の遅れが課題となっている。こうしたなか「日本医師会ORCA管理機構」が推進役となることが期待されており、電子カルテを手掛ける企業の追い風となりそうだ。
●富士通、新システムを発売
富士通 <6702> は7月、300床以上の病院向けに新電子カルテ「ホープ ライフマーク エイチエックス」の販売を開始。これまで提供してきた機能を承継しつつ、クラウドサービスへの移行が容易なWebアプリケーションに刷新した。
NEC <6701> は「メガオークエイチアール」シリーズを、パナソニック <6752> は「メディコム」シリーズを提供。セコム <9735> は01年から中小規模向けのクラウド型「ユビキタス電子カルテ」を展開しており実績を伸ばしている。
●ソフトウェア、ファインデックスなど注目
こうした大手以外でも注目企業は多い。ソフトウェア <3733> [JQ]によれば、14年度の同社のシェアは富士通に次ぐ第2位。11月19日に発表した10月の月次売上高(速報値)は、ソフトウエアやハードウエア、保守サービスをあわせ18億300万円(前年同月比2.6倍)と高い伸びを示した。
ファインデ <3649> は、日医総研が提供するレセプトソフトORCAに完全準拠した電子カルテ「REMORA(リモラ)」や、画像・文書のファイリングシステム「Claio BOX for ORCA」を手掛ける。日本医師会主導によるIT化推進は、同社へのメリットが期待される。
CEHD <4320> は子会社のシーエスアイで「ミライズ」シリーズを展開。CEHDの売上高のほとんどを電子カルテシステム事業が占めており、普及拡大による恩恵は大きい。
また、ソフトMAX <3671> [東証M]やMDV <3902> [東証M]、ファルコHD <4671> 、BML <4694> 、EMシステム <4820> なども関連銘柄としてマークが必要だ。
●周辺銘柄にもビジネスチャンス
電子カルテの普及が進むと、当然のことながら周辺機器を手掛ける企業にもビジネスチャンスが広がる。
サイバーリン <3683> の「クラウドORCA2」はORCAをクラウドで提供するレセプトシステム。データやシステムは安全なデータセンターで管理・保持し、万一の災害発生時もデータを守ることができる。
このほかでは医療用モニターに強みを持つEIZO <6737> 、電子カルテ用ペンタブレットソリューションを手掛けるワコム <6727> 、ORCAシステム対応プリンターを展開するOKI <6703> などにも注目したい。
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