【特集】「家事代行」ビジネスチャンス拡大中 <株探トップ特集>
ニチイ学館の日足チャート 「株探」多機能チャートより
―市場規模6000億円に成長も!―
今年も気が付けば年末まであと少し――となると、気になるのが大掃除だ。とはいえ、日ごろの「見えるとこだけ掃除」で後回しにしていたキッチンの換気扇回りやエアコンの中などを掃除するのには手間と時間がかかるばかりで、ついつい億劫(おっくう)になってしまうという人も多いのではないだろうか。そうした人に向けて近年、人気なのが家事代行サービスだ。年末だけではなく、女性の社会進出に伴い市場も成長しており、関連銘柄のビジネスチャンスも拡大中だ。
●政策面の後押しにも期待
家事代行とは掃除に限らず、買い物や料理などをアウトソーシングできるサービスのこと。近年の女性の社会進出や、共働き家庭の増加などを背景に、家事代行サービスへの支出は増えており、総務省統計局「家計調査」によると、2005年時点で世帯平均年911円の支出だった家事代行料は、14年には1291円と4割以上拡大した。
市場規模については、さまざまな見方があるものの経済産業省が昨年3月にまとめた「家事支援サービスについて」の資料によると、2012年度に980億円だった家事代行サービスの市場が、将来的には約6000億円に拡大すると推計されている。安倍晋三政権が掲げる「1億総活躍社会」の中核として「女性が輝く社会」の実現が求められているが、そのための施策として安価で安心な家事支援サービスを利活用できる環境整備を図ることが挙げられており、政策面での後押しも期待されている。
●低い参入障壁、鉄道各社が相次ぎ参入
家事代行サービスには、特別な免許や設備が不要なことから、参入障壁が低い事業といわれている。また、他の事業との相乗効果も期待できるため、新規参入企業が増えている。
特に近年目立つのは、鉄道会社による参入だ。関東では東急 <9005> が「東急ベル」、京王 <9008> が「京王ほっとネットワーク」のブランドでここ数年相次いで参入した。また、関西では近鉄GHD <9041> が専業大手のベアーズ(東京都中央区)と組んで08年から事業を展開しているほか、九州では西鉄 <9031> が13年からフランチャイズ形式でサービスを開始している。
さらに、鉄道ではないものの、電力会社の中部電 <9502> はサンヨーH <1420> と共同で昨年5月、家事代行会社e‐暮らし(名古屋市千種区)を設立した。いずれも沿線や既存事業の営業エリアを中心に事業を展開しており、相乗効果が生まれている。
●新規参入組を迎え撃つニチイ学館
これを迎え撃つのが、全国で事業を展開する企業だ。その代表格で業界大手のニチイ学館 <9792> では「ニチイライフ」ブランドで家事全般にわたる代行サービスを全国で展開。知名度を背景に売り上げを伸ばしている。
また、ダスキン <4665> ではハウスクリーニングの「サービスマスター」、家事代行の「メリーメイド」などの事業が順調に拡大。パソナG <2168> 子会社のパソナライフケア(東京都千代田区)が手掛ける家事代行サービス「家ゴトConcierge」も利用者を増やしているという。
一方、ユニークな方法で事業を展開しているのが、イオンディラ <9787> 子会社のカジタク(東京都中央区)で、サービスをパッケージ化し、イオン <8267> 各店やビックカメラ <3048> 店舗などで購入できるようにしている。初めて家事代行サービスを利用する際には他人を自宅に上げることや、どこを利用すればよいかわからないといった不安があるが、大手量販店で購入できるようにしたことで利用者の心理的抵抗感を軽くし好評だ。
●船井総研HDにも恩恵
このように、参入する企業が増えていることでメリットを受ける企業もある。船井総研HD <9757> では家事代行事業参入のためのコンサルタントで実績が多く、今後も案件を伸ばしそう。
また、参入企業が相次いでいるということは、競争が激化するということでもある。今後、業界内での合従連衡などの活発化も予想され、その分、話題も増えそうだ。
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