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【特集】素材業界に吹く再編風、次のターゲットは? <株探トップ特集>

素材各社は過剰設備という構造問題を抱える

―経産省、過剰設備の解消求めイエローカード―

 素材業界に再編風が吹いている。出光興産 <5019> と昭和シェル <5002> に続き、JXホールディングス <5020> と東燃ゼネラル石油 <5012> が3日に経営統合することで大筋合意。石油精製業界が2強体制に収れんする見通しとなったことで、株式市場では早くも次の業界再編に動く業種を模索する動きが出始めている。

●「産業競争力強化法第50条」を相次ぎ適用  

 石油精製業界を突き動かしたのは、人口減やエコカー普及などにより燃料需要が減少していることへの危機感だ。同業界は以前から慢性的な供給過剰状態が続いており、経済産業省は2014年6月に事業統合やM&A(合併・買収)を促す「産業競争力強化法第50条」による調査報告を公表し再編を後押ししてきた。

 こうした構造問題は他の素材でもみられ、14年11月には石油化学業界に50条を適用。15年6月には板ガラス業界に適用したほか、電炉業界に対しては「金属素材競争力強化プラン」のなかで50条の活用を検討することに言及した。これら業界の動きは鈍く、同省が「イエローカード」を突き付けたかたち。株式市場では「企業体力があるうちに、生産設備の集約など具体策を打ち出すべき」(中堅証券アナリスト)との見方があり、これら業界を含め素材各社の動きが注目されている。

●石化部門の売上高経常利益率は0.4%

 石油化学で供給力がだぶついているのは各社の主力製品で、プラスチックや化学繊維の原料となるエチレン。14年度のエチレンセンター10社の石油化学部門の売上高は4兆9143億円(前の期比7.4%減)、経常利益は213億円(同86.2%減)、売上高経常利益率は0.4%(同2.5ポイント減)にとどまっている。

 メーカー各社は既に能力削減に着手しており、14年5月に三菱ケミカルホールディングス <4188> 傘下の三菱化学が鹿島事業所にある製造設備2基のうち1基を停止したのに続き、15年5月には住友化学 <4005> の千葉工場が停止。16年4月には旭化成 <3407> と三菱化学が水島地区の製造設備を1基に集約する予定だ。

 この結果、国内のエチレン生産能力は12年の年産720万トンから640万トンに縮小するが、経産省が試算する20年の生産量470万トンを依然として大きく上回っており、今後は石油精製会社なども巻き込みながら事業統合が進む可能性がある。

●板ガラスの需給ギャップはさらに拡大へ

 経産省は今年6月、板ガラスを生産する旭硝子 <5201> と板硝子 <5202> 、セントラル硝子 <4044> に対して過剰な設備の削減を求める報告書を公表した。

 同省によれば、20年度の生産量はベースシナリオで年産93万トン(14年度比14%減)、リスクシナリオで85万トン(同21%減)まで減少する見通し。生産量と生産能力のギャップは20年度に41~49万トン(14年度は26万トン)に拡大すると予想している。

●大阪製鉄と東京鋼鉄は9年遅れで統合へ

 電炉業界では再編に向けた具体的な動きが出始めている。大阪製鉄 <5449> は9月、16年2月をメドに東京鋼鉄 <5448> [JQ]に対して1株630円でTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表。両社は経営統合に合意しながら白紙になった経緯があり、約9年遅れで実現する見通しだ。

 09年には共英製鋼 <5440> と東京鐵鋼 <5445> との経営統合が公正取引委員会の認可を得られないまま白紙となった過去がある。足もとでの需要減少や電気料金の高騰などから一段の再編が進むとみられ、大阪製鉄と同じ新日鉄住金 <5401> が大株主の合同製鐵 <5410> や中山製鋼所 <5408> 、トピー工業 <7231> などに注目したい。また、大和工業 <5444> や東京製鉄 <5423> 、朝日工業 <5456> [JQ]、北越メタル <5446> [東証2]へのマークも必要だ。

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