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【特集】普及期に入る自動車ヘッドアップ・ディスプレー <株探トップ特集>

パイオニアのAR HUDユニットを利用したAR情報(イメージ)

― 2020年度に500万台以上で採用へ ―

 自動車のIT化が急速に進むなかで、さまざまな情報をフロントガラスに表示するヘッドアップディスプレー(HUD)システムを採用する車種が増加している。自動車へのHUD採用には高度なシステムはもとより、ガラスなどの素材でもHUDに適した技術導入が不可欠になるが、これらのキーテクノロジーで日本企業が重要な役割を担っている。将来的な自動運転の実用化に向けてもHUDの普及は不可欠なだけに関連企業の動向が注目される。

●専用ガラスの開発が進む

 近年、走行時の安全性向上を図るべく、さまざまなIT技術の導入が進んでおり、速度や車線に関する情報をフロントガラスに表示するHUDシステムもそのひとつ。ちなみに14年度に世界で販売された新車のうち100万台程度でHUDシステム(ダイレクトタイプ=フロントガラスに直接映像を投影するタイプ)が採用されており、これが20年度には500万台以上に拡大(積水化学工業推測)することが見込まれている。

●積水化は全面表示可能な中間膜を開発

 フロントガラスには、運転者の視界を十分に確保したうえで、より多くの情報を表示することが求められるが、これには、HUDに適したガラス加工も必要になる。このようななかで、フロントガラスに文字や図を表示可能な合わせガラス用中間膜の開発で先行するのが積水化 <4204> 。

 同社ではHUDシステムに対応した「楔(くさび)形中間膜」を08年に発売。この楔形中間膜を利用した現行のHUDシステムは、フロントガラスの限られた部分だけに映像を投影できる仕組みで表示できる情報量が限られていたが、フロントガラス全面に表示可能な自発光中間膜を新たに開発。既に基礎技術を確立し18年の上市を目指してさらなる開発を進めている。

●独自の光学設計技術で旭硝子

 HUD用ガラスでは、自動車用の世界的企業である旭硝子 <5201> も先行。合わせガラス用特殊中間膜と独自の光学設計技術により、ガラスの表面、裏面の両面からの反射像を一致させる技術が用いられており、情報をクリアに映し出すことを可能にしている。

●凹面鏡内製化で日本精機

 2輪車用計器で世界トップを誇り、4輪車向けでも豊富な実績を誇る日精機 <7287> [東証2]もHUDへの取り組みを強化している。同社ではHUDのキーパーツである凹面鏡を内製化。凹面鏡は精密さが求められるが、製品設計から金型設計・加工、成型、蒸着までを一貫して行うことで、高精度・高品質の表示画像を実現している。

●パイオニアなどカーナビメーカーも対応を強化

 市販のカーナビゲーションシステムを手掛けるメーカーもHUD搭載システムの品揃えを強化している。「サイバーナビ」ブランドなどを展開するパイオニア <6773> は、カーナビと連動し、フロントウィンドウの先の風景にドライブに必要な情報を重ねて表示する「AR HUDビュー」を、「彩速ナビ」を展開するJVCケンウ <6632> はハイエンドプロジェクターの開発ノウハウを活用して、「彩速ナビ」と連動するHUDを販売。パナソニック <6752> も自社ブランド「ストラーダ」と連動するフロントインフォディスプレイを手掛けている。

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