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7856 萩原工業

東証P
1,531円
前日比
-24
-1.54%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.1 0.76 3.27 8.33
時価総額 228億円
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萩原工業 Research Memo(6):足元は、安定した業績の推移


■業績動向

(1) 2016年10月期業績

a)損益計算書
萩原工業<7856>の2016年10月期の業績は、売上高が前期比0.2%減の22,485百万円、営業利益が同7.9%増の2,548百万円、経常利益が同5.5%増の2,523百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同27.6%増の1,856百万円となった。期初予想と比較して、売上高は6.3%未達だったが、営業利益と経常利益がほぼ予想並み、親会社株主に帰属する当期純利益は3.1%上回った。県道の建設に関連して土地収用補償金322百万円が特別利益に計上されたが、事務所の移転・建替費用に補償金相当額が充当されている。

2016年4月に熊本地震、10月に鳥取中部地震が発生した。同社は、災害関連銘柄として大きな特需を享受したと思われがちだが、その金額は売上高で約1億円と推定されるにとどまる。鳥取の震災直後は、安価な輸入品のブルーシートが使用されたが、降雨などに対する防水性能に問題があり、同社製品に切り替えられた。同社は、用途に応じて最適なものを選ぶことができる「耐用年数シート」(1年、3年、5年シート)を製品化している。鳥取県庁は、備蓄用に同社製品を採用した。他の都道府県にも、備蓄用に売り込んでいる。

事業別売上高は、合成樹脂加工製品事業が前期比1.1%減の17,366百万円、機械製品事業が同2.9%増の5,119百万円となった。営業利益では、合成樹脂加工製品事業が前期比13.7%増の2,041百万円、機械製品事業が同10.3%減の506百万円であった。売上高営業利益率は、合成樹脂加工製品事業が11.8%、機械製品事業が9.9%となった。

合成樹脂加工製品事業の増減収要因は、製品単価ダウンが428百万円のマイナス、販売数量増が337百万円のプラス、大幅な円高による為替変動の影響が97百万円のマイナスであった。原油・ナフサ市況の軟化による原材料価格の低下と競争激化が、単価ダウンを引き起こした。特にボリュームの大きい海外市場におけるバルチップの値下がりの影響が大きかった。一方、バルチップは、内需が強く、販売数量を伸ばした。工事用シート、メッシュ、土のうを含むシート・建材資材関連(売上高構成比:25.0%)が2.4%増加した。バルチップやフレコン袋などの産業資材関連(同34.3%)は5.7%減少した。粘着クロス及び人工芝用原糸の生活資材関連(同14.3%)は4.8%増加、仕入れ商品などのその他合成樹脂は0.6%減少であった。

営業利益の段階では、売上高の減少が53百万円のマイナス、粗利益率の改善が397百万円のプラス、販売費増加が99百万円の減益要因となった。2016年9月に東京で開催された国際物流総合展に、全事業部合同で出展した。機械製品事業は継続的に見本市に出展してきたが、合成樹脂加工製品事業にとって21年ぶりの展示会への参加であった。

機械製品事業の営業利益は、売上高増加が36百万円の増益要因となったものの、粗利益率の低下が53百万円のマイナス、販管費の増加が41百万円の減益要因となった。販売は、フィルムスリッターが好調であったものの、初めて手掛けた絶縁紙及びハク離紙用スリッターの利益率が低かった。ただし、同製品は開発投資的な要素が強く、リピートオーダーを受注していることから2017年10月期の利益率改善に寄与するだろう。販管費の増加は、見本市への出展回数を増やしたことによる。

地域別売上高は、日本が前期比1.1%減、海外が同2.4%増となり、海外売上高比率は前期比0.7ポイント増の26.6%になった。インドネシアと中国の子会社は、日本向け輸出が減少するなか、低収益製品からの撤退や固定費低減により、収益の改善に努めた。機械製品事業は、主力のスリッター関連機器が順調であった。リチウムイオン電池のセパレータ用スリッターは、日本のメーカーを含め生産拠点が中国にシフトしていることから、仕向地先はアジアになる。

b) ROE
2016年10月期は、ROA(総資産経常利益率)が10.2%、ROE(自己資本当期純利益率)が10.6%と両方とも10%超となる好成績を上げた。ROEを構成する指標の1つである財務レバレッジは、継続的な有利子負債の減少により5期前の1.67倍から1.41倍に低下した。同期間の売上高当期純利益率は、5.8%から8.3%に上昇した。ただし、2016年10月期は、特別利益に助けられた面があった。現在課題としているのは、総資産回転率の低下である。同指数は、5期前の1.17回から0.91回に低下した。5期における売上高の増加はわずか5.8%にとどまり、総資産の35.2%増を大きく下回った。同社は、経営安定のため事業を分散しており、事業や用途に応じて好不調が混在する結果となった。また、売上高営業利益率を10%超とする高い利益率を確保するため、コモディティ化した製品の価格競争を回避する事業戦略を採ってきた。そのため、売上高利益率は高水準を保っているものの、トップラインの売上高の伸びが抑制された。

c)貸借対照表
2016年10月期末の総資産は24,874百万円と前期末比143百万円増加した。流動資産では、現金及び預金が1,855百万円増加した。受取手形及び売掛金が回収の早期化により1,038百万円減少し、たな卸資産は数量管理を厳格化し325百万円減少させた。一方、負債・総資産の部では、借入金の返済により有利子負債が534百万円減少し、純資産が増加した。流動比率が289.6%へ、自己資本比率が72.2%へと、前期より財務面での安全性が更に高まった。

d)キャッシュ・フローの状況
2016年10月期末の現金及び現金同等物の残高は4,923百万円となり、前期比1,788百万円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローのプラスは、前期比2,141百万円増の3,904百万円となった。増益に加え、売上債権とたな卸資産の圧縮が貢献した。投資活動よるキャッシュ・フローは1,320百万円のマイナスであったことから、フリーキャッシュ・フローは2,584百万円のプラスとなった。有形固定資産の取得による支出は、前期比59.3%増の1,184百万円となり、同期の減価償却888百万円を25.0%上回った。財務活動によるキャッシュ・フローは739百万円のマイナスとなった。主な要因は、長期借入金の返済による支出341百万円と配当金の支払額397百万円であった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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