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6638 ミマキエンジニアリング

東証P
1,342円
前日比
+37
+2.84%
PTS
1,337.9円
14:15 05/08
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
12.2 1.55 1.86 43.84
時価総額 430億円
比較される銘柄
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リコー, 
OKI
決算発表予定日

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Mimaki Research Memo(4):市場は全世界のSG、IP、TA市場


■事業概要

1. 事業内容
ミマキエンジニアリング<6638>の事業内容は、製品別だけでなく販売市場別にもセグメント区分されている。販売市場別のセグメントは、広告・看板などの製作を支えるSG市場、工業製品や一般消費者向け小物類の加飾をしているIP市場、生地や既製服を捺染するTA市場の3つである。印刷物や看板、スマホケースや電化製品、衣料品など消費者の生活に直結する最終商品も多いため、同社の技術を生かした製品は意外と身近にあふれている。同社は各市場のニーズを迅速に捉え、狙いを絞った新製品を素早く提供している。一方、SG、IP、TA市場の製品買い替えサイクルはおおむね4~5年のため、各市場に毎年順番に新製品を投入することで、毎期売上高を積み上げることができる収益構造になっている。

産業プリントではデジタル化が進んでおり、看板などディスプレイグラフィックスなどデジタル化率の高いジャンルもあるが、市場の大きいテキスタイルや家具・インテリア、パッケージラベルなど、依然として従来のアナログ印刷をメインとするジャンルも多い。このため、産業プリント全体のデジタル化率は平均で5%~10%と低く、産業用インクジェットプリンタの成長ポテンシャルは非常に大きい。また、FA(ファクトリーオートメーション)化の導入やスマート工場への貢献など、拡張余地も大きい。ライバルは、米国メーカーや、プリンタ周辺の国内メーカーなどである。中国メーカーにも産業用インクジェットプリンタを生産している企業はあるようだが、産業データが少ないこと、比較的小ぶりメーカーが多いこと、インクのクオリティが低いことから、シェアを算出する際に省略しているようだ。そうしたなか、同社のIPとTA市場向けの売上高が急拡大している。IPとTAの生産現場では、従来大量生産が主流で付加価値の低いアナログ印刷が主流だったが、産業界の多品種・少量生産ニーズの高まりを受け、付加価値の高いデジタル・オンデマンド印刷が広がってきたためである。IP市場とTA市場は、SG市場に並ぶ第2、第3の柱として成長を続けているといえる。なお、同社はグローバル展開を行っており、海外の売上高構成比は約70%と非常に高くなっている。

(1) SG(サイングラフィックス)市場
SG市場では、塩ビシート、バナーシート、ウィンドウフィルムなどのプリント素材を使用し、広告看板、ウィンドウグラフィックス、カーラッピング、ソフトサインなどのプリントに同社の主力製品群が利用されている。160cmまでの大判インクジェットプリンタでは世界市場2位(2022年はシェア27.2%)となっている。また、比較的デジタル化が進んでいる分野で、同社を含んだ大手3社で8割程度のシェアを占めている。

(2) IP(インダストリアルプロダクツ)市場
IP市場では、プラスチックやアクリル、ガラス、金属、木材など多種多様な素材にプリントできるUV硬化インクの特性を生かし、自動車の計器パネルや家電の操作パネルなど工業製品のほか、スマートフォンケース、おもちゃ、ノベルティといった小物類のプリントに利用されている。製品の相場が1,000万円を超えていた2010年に、同社は330万円という圧倒的に低価格な製品を発売、シェアを拡大するきっかけとなった。この結果、デスクトップUVフラットべッドで世界市場1位(2022年はシェア63.9%)を誇っている。UV硬化インクは素材を選ばずデジタル化の強みを発揮しやすいため他社も手掛けているが、ケミカル分野の知見など製品化から20年にわたって蓄積されたノウハウは、市場のニーズへの対応力において差別化要素となっている。

(3) TA(テキスタイル・アパレル)市場
TA市場では、ファッションアパレルやスポーツアパレル、スニーカー(アッパー材)、インテリア、ファブリックなどを対象に、ポリエステルやレーヨン、綿、絹など縫製前の生地(テキスタイル)や既製服布地のプリントに使われている。同社は2012年に世界最速(当時の同社調べ)の昇華転写インクジェットプリンタを開発し、世界的なファッションブランドで採用されたことをきっかけに成長を加速、現在では省スペースでクリーンな作業環境を低コストで実現できる昇華転写インクジェットプリンタで世界市場2位(2022年はシェア19.4%)を占めている。

(4) その他の事業
同社は産業用インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ以外に、3Dプリンタ事業とFA事業を展開している。3Dプリンタ事業では、1,000万色以上のフルカラーの造形から高さ1.8mまでの超大型造形まで、3Dプリンタによるプロダクトデザインやフィギュア、立体看板向け製品などを製造している。FA事業では、ベクター技術やメカトロニクス技術をもとに事業を展開し、オンデマンド型のデジタルコーティングマシンでロードイン~印刷~コーティング~ロードアウトといった生産工程の自動化に対応している。

(5) IP、TA市場のチャンス
IP、TA市場の生産現場では、これまで大量生産が主流だったが、多品種化や商品サイクルの短期化などにより多品種・少量生産のニーズが高まっている。同社製品によるデジタル・オンデマンド生産は、印刷版を使わず、必要なときに必要な分だけをプリントできるため、短納期かつ低コストで多品種・少量生産を実現できる。さらにデジタル・オンデマンド生産は、個性や独創性、季節性といった付加価値を商品に付加して差別化や高収益化を図ることができる。そのうえ、省スペースな設備でクリーンな作業環境を確保できることから消費地に近い都市周辺で生産が可能で、物流にかかる時間やコストも削減できる。こうしたデジタル印刷の生産性や環境対応に関するメリットは、IPやTAのような特定の市場に限定されるものではなく、産業界全体に広がる可能性が高いと見られている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SO》

 提供:フィスコ

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