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【特集】中国復活なら、リバーサル期待が高まる日本株はなに?

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第136回
大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「決算発表の月に、なぜか株価が上向く「決算アノマリー」銘柄を探せ」を読む

日米欧の株式市場が一進一退の状況で進行してきた中で、これから最悪期を脱しようとしているのが中国・香港株市場です。

中国は、コロナ禍におけるロックダウンの解除の遅れ、不動産市場の混乱や内需の低迷などで、「世界の工場」「爆買い」といった急成長経済の姿は、すっかり影を潜めてしまいました。

香港株の過去1カ月のパフォーマンスは、世界の主要指数を上回る

しかし、ここにきて、急に多くのメディアや市場関係者から「これから中国株と香港株に注目」といったニュアンスの記事や見解が多く見られるようになりました。

中国株および香港株と日本株の相対パフォーマンスを見ると、ここ数カ月は下げ止まりを見せて拮抗し始め、特に香港株は日本株に対して巻き返しを見せる動きも見られています。

香港ハンセン指数は過去1カ月で世界の主要株価指数の上昇率を上回る7%以上の上昇となり、一時は今年1月の安値から20%も回復したことで、強気相場入りしたとの声も聞かれました。

■中国および香港株と日本株の相対株価の推移
【タイトル】
出所:LSEGデータストリーム

足元の米国株、日本株、中国株、香港株の12カ月先の予想PERを比較すると、中国および香港株は割安で、特に10倍を割り込む香港株は際立つ存在です。

米金利の高止まりが懸念されている中で、割安株に需給面から追い風が吹きやすくなっていることと、ファンダメンタルズ面で明るさが出始めたことが、最近の反転の背景にあると見られています。

■予想PERの比較~S&P500・TOPIX・上海総合指数・ハンセン指数
【タイトル】
出所:LSEGデータストリーム

景気の底入れに現実味、デフレ懸念も薄まる

ファンダメンタルズでは、経済活動のセンチメントを見る購買担当者景気指数(PMI)が、製造業および非製造業とも、景気の拡大と縮小の境界線である50を回復した状態にあります。

特に製造業は、過去数カ月にわたって50を下回った状態が続いていたこともあり、何らかの変化が生じ始めている可能性があります。

■中国の製造業および非製造業PMI(財新)
【タイトル】
出所:LSEGデータストリーム

さらに、デフレ化の懸念も、徐々に緩和されつつあります。

直近の消費者物価指数(CPI)は、明確に上昇トレンド入りしたとまでは言い切れないものの、今年の2月と3月は対前年同月比でプラスの数字へと転換しており、これまでのマイナスの深堀りの流れに変化が見られます。

デフレからインフレに転換すれば名目上の企業収益は上昇し、それに呼応して株価の上昇が見込めます。このあたりも、中国株および香港株が反転するきっかけになったのかもしれません。

■中国消費者物価指数 対前年比の推移
【タイトル】
出所:LSEGデータストリーム

先送りになっていた「三中全会」の開催も、中国復活の期待を高める

こうした景気の底打ち観の醸成、そしてデフレ懸念の払拭の支援材料となっているのが経済政策です。

中国政府は、2024年を「消費促進年」と位置付け、企業の設備投資や、自動車や家電などの耐久消費財の買い替えを促す「以旧換新」を大規模に実施していくことを今年の3月に決定しています。

中国の自家用車の保有台数が23年末時点で3億3600万台、そのうち車齢が15年を超える車両は700万台に達するとされています。

また、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど主要な家電製品の保有数は30億台を超えており、そのうちで毎年約2億7000万台が安全に使える使用年数を過ぎているとのことです。

産業の分野でも、設備更新だけで年間5兆元以上の巨大な市場が今後形成されるとの見方が示されています。現在、特に工業分野では先端設備の需要が高まっており、省エネ化や低炭素化、デジタル化、スマート化の流れが進んでいることも、この促進策の有効性と合致していることを強調しています。

その中国は、今年7月に長期的な経済政策の方針を決める重要な会議である「三中全会」を開催することを決定しています。

この会議は、従来通りであれば共産党大会のおよそ1年後にあたる昨秋に開催されるはずでしたが、不動産市況の混乱の収束に向けた対応などで政策の運営にリソースを割かれていたため、開催が遅れていたようです。

過去の「三中全会」では、大幅な政策の転換や新経済体制の確立を打ち出すなど重大な決定が目立っているため、現在の低迷している雇用や不動産問題に対して大規模な支援を決定する絶好の機会となる可能性があります。

中国復活の追い風を受ける候補は

では、こうした中国のファンダメンタルズおよび株式市場に見られる変化を、日本株投資でどのように生かせばいいのでしょうか。

戦略の1つは、シンプルに「中国と関連性の高い銘柄」を選択していくことです。特に中国の景気後退懸念でこれまでに強く売られていた銘柄は、今後の反転のポテンシャルもその分だけ大きくなると考えられます。

たとえば、4月24日に24年3月期決算を発表したファナック<6954>は、今期(25年3月期)の予想営業利益がコンセンサスを大きく下回ったことで翌25日の株価は急落しました。

今期の会社計画は、現時点の中国市場における不透明感を織り込んだ保守的な数字と捉えるならば、中国経済が今後回復軌道に乗った場合は、大きく上方修正されてくる可能性があるでしょう。

それを踏まえて、ここからさらに中国および香港経済が悪化する確率と、少なからず改善方向へと向かう確率とを天秤にかければ、リスクを取る価値はあるのかもしれません。

ファナックは中国および香港を含むアジアの売上高比率が35%を占めています。こうしたアジア市場でエクスポージャーの高い要素に加えて、上海総合指数との連動性(相関係数)が高い企業が、今後の中国復活でフォローの風が吹く可能性があります。

アジア売上高比率と上海総合指数との連動性に注目

そこで今回は、中国との関連性の高い銘柄を探るために、アジア売上高の売上高構成比と、上海総合指数との連動性(相関係数)が高い企業を抽出しました。

スクリーニングでは、決算関連資料にある地域別売上高の項目に、「中国」や「香港」と明記されずにアジアとひとまとめにされている場合も多いため、「中国を除く」といった注釈がある場合を除き、広めにアジア売上高比率として中国からの影響度を測定しています。

指数との連動性は、過去10年間の週次の騰落率との相関係数を算出して銘柄を選定しています。次ページに、この条件に該当する30銘柄の例を示しました。



 

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