【特集】脱炭素で「原発関連」に熱視線再び、勇躍の銘柄群を総力リサーチ <株探トップ特集>
脱炭素社会の推進が世界規模で進むなか、原発が改めて存在感を増している。豊富な経験と技術力を有する関連企業には、折に触れて注目が集まりそうだ。
―運転禁止解除、原発3倍化宣言、小型原子炉推進でスポットライト―
ここ「原子力発電」を巡るニュースが、株式市場でも注目を集めている。直近では、柏崎刈羽原子力発電所の運転禁止解除について「年内にも」と伝わったのをはじめ、米国の「原発3倍化」宣言、昨年からは次世代型の「小型原子炉」に熱い視線が向かっている。原発については多様な意見が交錯するが、株式市場ではその動向に関心が高く、折に触れ“思惑先行”ともいえる動きが株価に反映される。「原発関連株」のいまを点検した。
●運転禁止解除、いよいよ大詰めか
原子力規制委員会が6日、事実上の運転禁止命令を出している東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の、運転禁止命令解除について「年内にもあり得る」との見解を示したことが伝わり、これを受け東京電力ホールディングス <9501> [東証P]の株価が急上昇した。柏崎刈羽原発については、テロ対策など警備上の問題から改善が求められていた。ここ数日、同社株は大きく売られ調整局面にあるが、今回の株価上昇は柏崎刈羽原発の再稼働に向けた動きが大きく進展しているとの見方が強まったことで、短期マネーを誘導した格好だ。東電HD以外でも、日本ギア工業 <6356> [東証S]など原発関連株の一角が動意するなど、投資家の関心の高さをうかがわせるものとなった。11日には、原子力規制委員会が現地調査を行い「かなりの改善が見られる」と述べたことが伝わっている。早ければ、年内にも最終判断を行う見通しだ。
市場関係者に意見を求めると、「仮に柏崎刈羽原発が再稼働したとしても、東日本大震災時の原発事故に関する賠償負担などを考えると、東電HDのファンダメンタルズが急改善するとは考えにくく、今回急動意した株価の妥当性を示唆するとは限らない」(ネット証券アナリスト)と指摘する。ただ、 脱炭素が課題になるなかで、原発回帰は世界的な潮流であり、「日本の原発再稼働の動きは、海外投資家にも理解されやすい」(同)ともいう。こうしたことを踏まえれば、関西電力 <9503> [東証P]、九州電力 <9508> [東証P]、東北電力 <9506> [東証P]、北海道電力 <9509> [東証P]といった銘柄に目を向けるのは理にかなっているといえそうだ。これらは有配企業であり、端的に言えば株主に対する義務を果たしているともいえる。
また、今月はじめの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)での米国による「原発3倍化」宣言も、原発関連株に目を向けさせることになった。気温上昇の抑制のため2050年までに世界の原発の発電容量を3倍に拡大するというもので、同宣言には日本をはじめ、英国、フランスなど20カ国以上が賛同している。安全性や経済性に優れた、次世代原発の小型モジュール炉(SMR)などの推進も取り沙汰されており、折に触れて新技術への関心も高まりそうだ。
原発プラントでは、日立製作所 <6501> [東証P]や三菱重工業 <7011> [東証P]が代表格といえるが、その取り組みは多岐にわたる。三菱重は先月29日に、日本原子力研究開発機構(JAEA)が推進する、試験研究用原子炉(新試験研究炉)の設計、製作及び据え付けを実施する主契約企業に選定されたと発表するなど、その技術力で原子力分野をリードしている。
●日ギア“90%以上”のシェア誇る
ここ投資家の熱い視線を浴びているのが日ギアだ。10月の終盤から株価が急上昇し、350円近辺だったものが今月12日には589円まで買われ年初来高値を更新している。ここにきては売られる展開だが、注目は怠れない。同社は、電気や油圧などのエネルギーを動力に変換してバルブの開閉・制御を行うバルブアクチュエーターに強みを持つ歯車・減速機の専業大手。国内原発のバルブアクチュエーターでは、90%以上のシェアを占めている。24年3月期の営業利益は、前期比51.4%増の14億6000万円を計画しており業績も好調だ。
●高田工は原発プラントで豊富な実績
高田工業所 <1966> [東証S]の株価が騰勢を強めている。11月上旬から上げ足を加速し、今月1日には上ヒゲで1578円まで買われ年初来高値を更新。その後は上昇一服も、1300円台半ばまで売られたところで切り返しに転じており、1500円大台回復からの年初来高値奪回を視野に入れてきている。同社は、原発プラントで、ステンレスライニング、大型貯槽、配管など豊富な施工実績を持つ。11月6日には24年3月期の利益見通しを上方修正し、営業利益を16億円から21億8000万円(前期比18.7%減)に引き上げた。11月20日には、日揮ホールディングス <1963> [東証P]子会社の日揮と、国内のプラントEPC(設計・調達・建設)分野における協業を行うことで基本合意書を締結したと発表するなど活躍の場を広げている。
●東京エネシス、遠隔ロボの開発加速
東京エネシス <1945> [東証P]は火力、水力発電所などで関連設備のエンジニアリングに携わり、原発や使用済核燃料再処理工場の建設から保守点検まで行う。再生可能エネルギー事業など新事業領域にも戦略的に進出している。近年では、原発施設における新規制基準対応の関連工事や耐震評価、また廃炉作業に導入する作業支援のための遠隔操作ロボットの開発などにも力を注いでいる。同社は、福島第一原発の廃炉作業に取り組むとともに、これまでも「現場確認用の偵察ロボ」「高所点検ロボ」「ヘビ型ロボ」など作業支援のための遠隔操作ロボの開発を進めてきた。10月には、原子力本部に「ロボット開発推進グループ」を設置し、遠隔操作ロボの開発・改良を更に加速させることを発表。廃炉作業を今後進めるうえで、なくてはならない存在となりそうだ。株価は、今月11日に1071円まで上値を伸ばし年初来高値を更新。現在は上昇一服も、1000円割れでは押し目買いに頑強展開をみせている。
●木村化は脱炭素で出番到来
木村化工機 <6378> [東証S]は、化学プラントが主力で脱炭素事業に取り組むが、原発関連では容器、濃縮機器に強みを持っている。エネルギー・環境事業では、安全審査が終了した原発の再稼働に向けた業務、福島第一原発関連の廃炉・廃止措置に向けた各種装置・除染対応業務などの営業展開を強めている。11月10日、同社は24年3月期の業績予想修正を発表。営業利益段階では12億4000万円から15億7000万円(前期比9.6%減)に上方修正している。売上高の増加に加え、コスト管理の徹底を行ったことで工事原価の低減及び経費縮減に努めたことが奏功した。株価は、10月下旬につけた直近安値677円を底に切り返し、上値を指向する展開にある。現在は、740円近辺でもみ合うが、年初来高値784円更新からの活躍期待も。
●頭角現す西華産
ここ原発関連株の一角として、急速に頭角を現しているのが西華産業 <8061> [東証P]だ。同社は、重化学工業・発電プラント関連が主力の機械商社だが、3月には三菱重と西日本地区における原発設備関連の販売代理店業務に関する代理店契約書を締結したと発表。同社では、成長の柱となる原発関連ビジネスを獲得するなど、エネルギー事業では安定・成長路線が確かになったとしている。11月10日取引時間中に、24年3月期利益予想の上方修正を発表しており、営業利益を37億円から45億円(前期比3.0%減)へ見直した。株価はこれを受けて同日急伸。その後も上値指向を続け、今月12日には2889円まで買われ年初来高値を更新している。
●助川電気、帝国電、JESCOにも活躍期待
温度測定・加熱製品メーカーの助川電気工業 <7711> [東証S]は、熱制御技術に強く原子力関連機器などで高い商品競争力を有しており、原発関連の一角として株価の“感応度”が高い銘柄の一つだ。米国の「原発3倍化」宣言を受けて思惑買いが加速、今月5日には長い上ヒゲを形成し、一時前日比225円高の1378円まで買われる場面があった。24年9月期は、営業利益で前期比12.9%減を予想するが、急騰習性もあるだけに目を配っておく必要がありそうだ。
帝国電機製作所 <6333> [東証P]は「ポンプ事業」を主力事業とするが、完全無漏洩(ろうえい)の「キャンドモータポンプ」を主な製品としており、原発分野でも活躍している。株価は、3000円手前に位置しており、11月29日につけた年初来高値3110円更新をにらむ展開。24年3月期は、営業利益で前期比10.0%減の45億2000万円を予想するが、上期(4~9月)は前年同期比13.6%増の25億9900万円と通期計画に対する進捗率が57.5%に達している。
また、電気設備の設計・施工を手掛けるJESCOホールディングス <1434> [東証S]は、3月に原発をはじめとするプラント向け監視設備などを手掛けるマグナ通信工業(東京都杉並区)の子会社化を発表した。今後、再稼働や建て替えが検討される原発分野や情報通信分野において、シナジーを発揮することで事業の成長を加速する構えだ。世界的な脱炭素への取り組みを背景に、太陽光発電関連の工事需要が旺盛で業績も好調。24年8月期の業績予想は、営業利益が前期比2.6倍の11億2000万円と高変化を見込んでいる。
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